食レポする奴
体育含め、午前中の授業を終えた俺達。待っているのは昼食だ。俺は隣の席のタブレットを持って静奈へ話しかける。
「よし。手を洗いに行こうぜ。」
タブレット越しに静奈の声がした。
「………私も行くの…?」
「おう。飯食う前は、手洗いだろ?」
「で、でも、私は家にいるから…一緒にタブレット持っていっても意味ないんじゃ…。」
「細かいことはいいんだよ!ほら、お前も画面越しでいいから手洗おうぜ!」
「………分かった。」
根負けした静奈は黙って俺に抱えられる。手洗い場に着くと、俺はハンドソープが置いてある台にタブレットを並べる。そして、泡立てて丁寧に指先を洗う。どうやら静奈も手を洗っているらしく、タブレットのマイクからノイズ混じりに水の音がした。
水の滴る手をハンカチで拭き、タブレットを持つ。教室に戻ると、お弁当を広げて手を合わせる。
「いただきます!」
「い、いただきます。」
今日のおかずは肉じゃがにポテトサラダ、それとスイートポテト等々。中々美味しそうである。
「………………芋、多くない……?」
「奇遇だな。俺もそう思った。けどまぁ、野菜だからな!いくら食っても健康だろ!」
「うーん。まぁ、そっか…。」
「そういうお前は昼飯に何食べてんだ?」
「私は………チキンラーメン…。」
「おー、いいな。」
「でしょ。……しかも、卵つき…。」
「卵つき!?まじかよ!………俺もチキンラーメン食いたくなってきた…。よし!これ食い終わったら買いに行く!」
「えぇ!?お弁当食べたら、お腹いっぱいにならない…?」
「ならねぇ!間食として食う!」
「……………貴方がいいなら、いいけど…。」
チキンラーメンのため、お弁当をかき込む。無論、味わいつつ、だ。いくらチキンラーメンを食べたくとも作ってもらった弁当を無碍にはできない。そうこうして、弁当を食べている間も、タブレットからは麺を啜る音が聞こえた。
「くそっ…。俺もチキンラーメン食いてぇ…。」
「わ、私も、貴方のお弁当美味しそうだと思うけどね…。」
「だろ!美味そうってか、美味いぜ!食うか?」
「画面越しじゃ、食べれないよ…。」
「そ、そうだな…。じゃあ食レポしてやる!待ってろ!」
お弁当の美味しさを伝えるため、まずはお気に入りのポテトサラダを箸ですくう。市販のものと同じように見えるかもしれない。しかし、我が家のポテトサラダはひと味違うのだ。なんと言っても、芋が潰しきっていないのだ。ゴロゴロ芋が入っているため、食べ応えは抜群ということになる。
「うん。美味い!なんか、こう、めちゃくちゃ美味ぇぞ!」
「………………柳くん…食レポの意味知ってる…?」
「食をレポートすんだろ?もちろん知ってるぞ!」
「レポートできてないよ全然!」
「手厳しいな…。ん?てか、俺の名前知ってたんだな。」
「ま、まぁ。……その、自己紹介、してたし……。………ごめん。馴れ馴れしかった……。その、柳さんって呼ぶ…。」
「いやいや!馴れ馴れしくなんかねぇよ!むしろ固いぐらいだ!なんならやなぴょんって呼んでも良いぞ!」
「気色悪いから遠慮しとく…。」
「そんなこと言うなよせいなぴょん!」
「本当にやめて!?」
そんなくだらないことを言っている間に、お昼の時間は着々と進んでいた。もしかすると、チキンラーメンを食べる余裕はないのかもしれない。仕方がないので、今日は諦めよう。




