1.
適当に、痒い背中のように、小説を書いていっちゃう。現代ファンタジーって感じで。
昼下がりの八丁目はいかんせん高校生の私にとっては眠たく、暑すぎた。見ての通りの真っ青な空が山積みの宿題を思い起こさせる。帰ったらいいかげんにしないと、またあいつに怒られるのか。めんどくさ。
こうして今日も欠伸という仮病を喧しい空へ吠えた私でした。
平和。平和な昼。公園で三人の小学生が一人の子を殴っている。
退屈。退屈な商店街。魚屋のいきのいい五十代がちょうど女子高生と暗い方へ消えていった。
くだらない。くだらない都市。人の足音、信号のサイレン、車のガスはどれほどの悲鳴を放ち隠してきたんだろう。
行き交う人は歩きスマホ当たり前でどいつもこいつも苦笑いしてる。つまらないなら見なきゃいいのに――鞄が小刻みに響いた――私もそうだったろうけどさ。
「いやぁ、大変だよ。水崎ちゃん。また出ちゃった!」
「うぜぇ、どこだよ」
「ああ、えっと、そこ曲がったらすぐ」
「はぁ?」
妖精は今日もウザったい。私は深青のアプリにタッチして、そこ? 曲がりながら――ああ、言いたくない――
「我が手に宿りし幽玄の力よ、悠久の時を超える秘術をこの身に宿せ。深淵の闇を照らす光となり、未知の世界への扉を開かん。輝ける星よ、我が願いを叶えよ!無限輝光の閃き!!」
私のスマホが銀色に光って~日本刀に姿を変えました。鞘はありません。
光が弾けて消えた、そこは蟲が飛び交う、紅魔境の裏路地。犬を食らっている、緑色の肌のサラリーマン――情態報纏幻魔だ。
「なんだ、お嬢ちゃん。お前も犬を食うか? ここ最近流行っている病気? 犯人は犬らしいぜ」
「違うでしょ。あんただよ、それ」
「そうか?」
サラリーマンは歪に笑ったままネクタイをほどき、醜悪な裸体を晒す。すると、緑色が深く深く濁って、みるみる痩せぼそった二足歩行の蛙になった。あとぼやぼやっと翼が生えている。似合わねえ。
「お嬢ちゃん。犬を食わないってことは、あんたもあっち側だな」
「あっち? あ~あっち、あっちかもね」
「じゃあ、お嬢ちゃんもペロペロしちゃうからねぇ~」
キモイ、蛙野郎がぴょんと表現するには可愛くなさすぎる、獰猛に俊敏に私のほうへ飛び掛かってきた。その口、人のサイズだった口が膨らんで大きくなって、私を一気飲みしようとする。縦長い目だけでなく、喉チンコがブルブル笑って、マジでキモイ。
だから私はいつものように、この、ルミ~刀? で一刀両断。俊敏なほど、相対的に、刃は尖るのだから私はその口から真っ二つに引き裂いていった。
「うぶおおおお! 鮮血じゃああ!」蛙の情態報纏幻魔の血飛沫が制服についた。
「うわ、汚れた」あと殺し損ねた。
「なんだよ、この嬢ちゃんは! その刀、くそ! 覚えてろよ!」
「あっ……」逃げやがった。見た目がキモ過ぎて追いかける気力なくなっちゃった~。
情態報纏幻魔はバタバタと飛び去っていった。ルミ刀から「ちょっと! 追わないと!」って妖精がうるさい。でももうアレは遠くに行ってしまった。
裏路地から出れば都市は都市に戻る。私のスマホもスマホに戻る。まだ妖精ハゲの声は戻んないけど。
「水崎! もっとこうしゅばっ――と! やんないからぁ~!」
「はいはい」
「はいはいじゃなくて! もっと、殺戮魔報少女の自覚持ってよ~! 明日の平和が~」ポチ。強引に切った。
私のせっかくの放課後を害されたくない。今日サボれないならそんな日本は滅んでしまえ。
なので私はいつものようにステバでカプエラを飲んで家でぐーたらするのでした。
特撮とかでよくある一回、敵を逃がしちゃうやつ。やってめた。でもこれだとルミナスが強いのかわかりにくいので、強いってここで言っときます。