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記憶の覚醒

数時間後、天道は麻酔から覚めて意識を取り戻していた。


病室は静かで、夕日が窓から差し込んでいる。天道は天井を見つめながら、先ほど起こった不思議な出来事を思い返していた。


意識を取り戻す時、温かい光に包まれているような感覚があった。そして、その光に触れた瞬間、懐かしい感覚に襲われたのだ。


(やはり、あの子たちは...)


天道は確信していた。陽斗と美月、そして彼らの仲間たちは、ただの高校生ではない。


「お父さん」


ドアが開いて、陽斗が顔を覗かせた。


「陽斗...」天道は息子を見て微笑んだ。「心配をかけたな」


「大丈夫ですか?」陽斗が近づいてくる。


「ああ。おかげで、色々なことがはっきりした」天道は上体を起こした。「陽斗、君の友達も一緒に来ているのだろう?」


「はい。みんな心配して...」


「呼んでくれ。話したいことがある」


陽斗は戸惑った。「でも、お体が...」


「大丈夫だ。むしろ、今話さなければならないことがある」天道は真剣な表情になった。「君たちには、知る権利がある」


陽斗は廊下に戻って、四人を呼んできた。


「失礼します」美月が丁寧にお辞儀をして病室に入った。


「照井さんのお父様、お加減はいかがですか?」


「おかげさまで、すっかり良くなりました」天道は優しく微笑んだ。「君たちのおかげです」


颯太、豊、明も順番に挨拶をした。


「皆さん、座ってください」天道がベッドサイドの椅子を指した。「大切なお話があります」


五人は緊張しながら座った。


天道は少し考えてから口を開いた。


「まず、先ほどは本当にありがとうございました。君たちが来てくれたおかげで、命を救われました」


「そんな...僕たちは何も...」陽斗が謙遜した。


「いえ、君たちは確かに何かをしてくれた」天道は首を振った。「私は意識を失う直前、温かい光を感じました。それは...とても懐かしい光でした」


美月は心臓がドキドキした。やはり、あの光は本物だったのだ。


「実は、君たちに話さなければならないことがあります」天道は続けた。「我が照井家の秘密について」


「秘密?」陽斗が首をかしげた。


「照井家は代々、天照大神の血筋を守る役目を担ってきました」


一同は息を呑んだ。


「天照大神の...」美月が呟く。


「そうです。そして月野さん」天道は美月を見た。「月野家は月読命の血筋です」


美月は震えた。塩椎先生の話が現実だったとは。


「嵐山君は須佐之男命、稲荷井君は稲荷神、春日君は春日神」天道は続けた。「皆さんは、それぞれ神々の魂を受け継いでいるのです」


颯太が困惑して言った。「でも、俺たちは普通の人間です」


「表面上はそうです」天道が説明した。「しかし、特別な時代には、神々の魂が人として生まれ変わることがある。今がまさに、その時なのです」


「どうして今なんですか?」明が尋ねた。


天道は窓の外を見た。「世界が大きく変わろうとしている時代だからです。人々が道を見失いそうになっている時、神々が再び現れて導くのです」


豊が分析的に言った。「投資的観点から言うと...いえ、確かに現代は混沌とした時代ですね」


「その通りです」天道は頷いた。「だからこそ、君たちが集められたのです」


「集められた?」美月が尋ねる。


「偶然ではありません。君たちが同じ学校に来たのも、友達になったのも、全て運命に導かれてのことです」


陽斗は父親の話に圧倒されていた。「でも、僕はただの高校生です。神様なんて...」


その時、病室に温かい光が差し込んだ。窓の外を見ると、雲が晴れて美しい夕日が見えている。


「陽斗」天道が息子を見つめた。「君は太陽のように明るいと、よく言われるでしょう?」


「それは...」


「それが君の本質です。天照大神の魂を持つ者として、人々を照らし、導く力があるのです」


陽斗は胸の奥で何かが動くのを感じた。幼い頃から感じていた、人を明るくしたいという気持ち。それが自分の使命だったのかもしれない。


美月も同じような感覚を覚えていた。月読神社で感じた「お帰りなさい」という声が、再び心に響いている。


(私は...月読命...)


すると、美月の脳裏に映像が浮かんだ。美しい月夜の下で、人々の心を癒している自分の姿。それは確かに自分の記憶だった。


「美月さん」天道が優しく言った。「思い出しましたか?」


「はい...少しずつ」美月は涙ぐんだ。「とても懐かしい感じがします」


颯太も変化を感じていた。胸の奥で嵐のような感情が渦巻いている。でも、それは破壊的な嵐ではなく、浄化の嵐だった。


「俺は...須佐之男命...」颯太が呟く。


すると、颯太の記憶に様々な場面が蘇った。荒れ狂う嵐を鎮めている自分、悪を退治している自分、そして...


「陽斗」颯太が振り返った。「俺たち、昔も兄弟だったんだな」


陽斗も同じ記憶を思い出していた。天照大神と須佐之男命は姉弟神だった。現世でも、幼馴染として再び出会った。


「そうだね、颯太」陽斗は微笑んだ。「今度こそ、仲良くやろう」


豊も記憶が戻り始めていた。商売の神、五穀豊穣の神として、人々の暮らしを支えていた自分。


「僕は...人々の繁栄を願う神だったんですね」豊が眼鏡をクイッと上げた。「だから商売や投資に興味があったのか」


明も覚醒していた。弓を持って邪悪なものから人々を守っていた記憶、春の訪れとともに新しい希望をもたらしていた記憶。


「僕の役割は...みんなを守ることだったんです」明が決意を込めて言った。


天道は五人の変化を見守っていた。


「皆さんは思い出されましたね」天道が満足そうに言った。「これで、本当の意味での出会いが始まります」


「本当の意味での?」美月が尋ねる。


「前世でも、君たちは深い絆で結ばれていました」天道は説明した。「天照大神と月読命は、太陽と月として世界を照らし、須佐之男命は嵐を司って世界を清める。稲荷神は豊穣を、春日神は平和をもたらしていた」


陽斗は美月を見つめた。前世でも、彼女は特別な存在だったのだ。


「美月」陽斗が小さく呟いた。


「照井君...」美月も陽斗を見つめ返した。


二人の間に、言葉では表せない深い絆を感じていた。それは現世での恋愛感情を超えた、魂の結びつきだった。


「しかし」天道が表情を改めた。「君たちが覚醒したということは、同時に新たな試練が始まることを意味します」


「試練?」颯太が尋ねた。


「神々の力が戻れば、それに反応して古い脅威も目覚める可能性があります」天道は続けた。「君たちには、それに立ち向かう覚悟が必要です」


五人は顔を見合わせた。神々の転生という現実を受け入れたばかりなのに、もう次の試練が待っているとは。


「でも大丈夫です」明が言った。「僕たちには絆があります」


「そうだ」颯太も頷いた。「一人じゃできないことも、みんなでなら」


「投資的観点から言うと、チームワークは最大の資産ですからね」豊も微笑んだ。


陽斗は美月の手を握った。「僕たちなら、どんな困難も乗り越えられる」


美月も陽斗の手を握り返した。「はい。みんなで力を合わせれば」


天道は五人の結束を見て、安堵した。


「君たちなら大丈夫でしょう」天道が言った。「ただし、これからは普通の高校生活とは違います。神としての責任も背負わなければなりません」


「分かりました」美月が代表して答えた。「私たち、頑張ります」


その時、病室の窓から美しい満月が見えた。月の光が五人を優しく照らしている。


美月は月を見上げながら思った。これまでの人生は、この瞬間のための準備だったのかもしれない。陽斗との出会い、颯太との三角関係、豊の支え、明の友情。全てが自分を成長させ、本当の使命に向けて導いてくれた。


「みんな」美月が振り返った。「よろしくお願いします」


「こちらこそ」陽斗が答えた。


「よろしく」颯太も笑った。


「はい」豊と明も頷いた。


五人は手を重ね合わせた。その瞬間、再び温かい光が五人を包んだ。今度の光は、前世の記憶とともに、未来への希望も運んでくれるようだった。


天道はその光景を見守りながら、心の中で祈った。


(どうか、この子たちが幸せな未来を築けますように)


神々として覚醒した五人。彼らの本当の物語が、今始まろうとしていた。


外では夜が更けていたが、病室は希望の光に満ちていた。新たな使命を背負った五人は、困難な道のりが待っているかもしれないが、お互いがいる限り、きっと乗り越えていけるだろう。


記憶を取り戻した神々は、現代という舞台で、再び人々を導く使命を果たそうとしていた。

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