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借金まみれの錬金術師、趣味で作ったポーションがダンジョンで飛ぶように売れる~探索者の間で【伝説のエリクサー】として話題に~  作者: わんた


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(知晴視点)変わらずの苦労人

「どうして、天宮裕真だけ優遇するんですか! 俺にもミスリル鉱脈の採掘許可を出してください!」


 俺の部屋に入ってくると、デスクに手を置いて失礼なことを言いだした。


 この男は錬金術師であるが能力が2流止まりで、どこにでもいる人材だ。ただ真面目な性格をしていたので、山小屋の二階で錬金術ギルド直営の店を任せていたんだが、裕真が自由に振る舞っている姿を見て我慢できなくなったようだ。


 己の能力を上回るような要求をしている。


 ここまで性格が変わると、ギルドが真面目だと認定したことにも疑問が出てくるな。窮地に陥れば不正をするようなタイプだと見た。


「お前の仕事は店の運営だ。ダンジョンに入ることじゃない」

「平日は手を抜きません! ギルドに迷惑をかけないよう、お休みの時にダンジョンへ入って採掘します」


 わかってます、みたいな雰囲気を出しているが、こいつはなにもわかっていない。


「ダンジョンに一人で入っても死ぬだけだぞ?」

「でも天宮は帰ってきています!」

「あれには護衛の精霊と魔物、さらには防御も兼ねたミスリル銀ゴーレムや移動用のバイクまであるんだ。お前とは違う」

「それらを貸してもらえれば俺にだってチャンスは!」

「ない」


 錬金術師に私物を他人に渡すなんてありえない。マジックバッグに入れられたら持ち逃げされてしまうからな。


 裕真は危機感が足りないとしても、ユミちゃんはその辺をちゃんと抑えているから依頼されても止めるはずだ。


 また精霊や魔物は個人間の信頼関係で成り立っている。


 仮に貸してもらったところで言うことを聞くかは別だ。


 そんなことぐらいわからないから、こいつは2流止まりなんだよ。大人しく店番でもしていろ。


「でしたらレシピを教えてください! ミスリル水銀ゴーレムを大量に作って一人でもダンジョン攻略できるようにします!」


 興奮しているからか、明らかに一線を越える発言をした。


 非公開レシピを教えろなんてマナー違反である。この場で殴られても文句は言えないほどだ。


「自分は何を言ったのかわかっているのか?」

「レシピの秘匿なんて時代遅れなんですよ!」


 すべてのレシピは公開して世の中に役立てるべきだ。そういった勢力があるのは知っているが、まさかこの男もその思想に汚れたとは思わなかった。


 個人が何年もかけて作り上げたレシピを「人類のため」という綺麗なオブラートに包んで、利益だけを享受しようとしている存在だ。そんなもん、盗人となんら変わりない。この俺は許せない。


 世界の進歩が遅れようが、個人の利益を最優先にするべきだ。


「だったら先ずは自分からレシピを公開してみろよ」


 できるなら、な。


 こいつは独自のレシピなんて一つも作ったことがない。俺が盗人と言った理由でもある。


 能力がないからって才能溢れる裕真の足を引っ張るなよ。


「いつか俺だって独自レシピを作ってやってやる!」

「では、その結果次第で検討してやろう」

「それじゃ遅いんです!」

「理由は?」

「…………俺はこんなところで終わりたくないんです」


 どうして成果を焦っているのかようやくわかった。


 埼玉の山奥に住んで店を経営しているのが嫌なんだ。左遷されたとでも思っているのだろう。


 結構多めに手当を出したんだが、それだけじゃ男のプライドは満たせなかったらしい。

 

「なら、どうなりたいんだ?」

「本部でレシピ研究をしたいです。知晴さん、どうか推薦してもらえないでしょうか!」

「新規レシピの作成実績がなければ不可能だ」

「でしたら、ミスリル銀鉱脈の採掘許可を出してください! もう少しで新しいレシピができると思うんです!」


 こいつの言っていることが本当かは怪しい。レシピが完成しない可能性のほうが高いだろうと睨んでいる。


 ただ逆に言うと可能性はゼロではないのだ。万が一ということもあり得る。俺や裕真の邪魔にならないという前提であれば、好きにやらせてもいいかと思い直してきた。


「仮に許可を出してダンジョンでの移動はどうする?」

「天宮から借りられないのでしたら、探索者を雇います」

「ここは最重要施設だ。新しく連れてくるのは難しいぞ」

「誠パーティならどうでしょうか」


 悪くない人選だ。初期に声をかけて断られているので、来てくれるのであればギルドとしても歓迎である。


「いいだろう。誠たちを呼べるなら許可を出す」

「うっし!」


 交渉が成功した直後に感情を表に出すなんて若いな。


 か細い道ができただけで成功するとは限らないぞ。


 誠パーティは優秀だから様々な依頼を任せられていて、個人のお願いを受け入れる余裕なんてないだろう。


「話はそれだけか? 俺は忙しいんだ。終わったなら帰ってくれ」

「あと一つだけ……」

「なんだ?」

「俺と天宮どちらが優秀だと思いますか?」


 馬鹿らしい質問だ。天才と比べても惨めになるだけだぞ。まともに答えるのも面倒だな。


「結果を出したヤツが優秀だ」

「…………わかりました」


 本人も実力の差は分かっていたようで、簡単に引き下がってくれた。


「それでは、誠パーティの説得が終わったらまたきます」


 男は出て行ってしまった。


 ようやく解放されて深いため息を吐く。


 部下の管理は大変だな。

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