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借金まみれの錬金術師、趣味で作ったポーションがダンジョンで飛ぶように売れる~探索者の間で【伝説のエリクサー】として話題に~  作者: わんた


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ミスリル銀鉱石

「今一番、ミスリル銀が出てくる場所はどこなの?」

「一番奥だ。徒歩で1時間ぐらいかかるからオススメはしないぞ」


 埋蔵量が多そうな場所を狙って掘っていき、また危険な場所は避けるので、坑内は曲がりくねった道になっている。行き止まりも多数あるだろう。さらには上下に移動することも考えれば、このぐらいの時間は妥当だろうと思った。


 往復で2時間か。採掘する作業も考えるとユミが心配だ。


 ファイヤーバードが襲ってきたら、おっさんと仲良く消し炭になってしまう。長時間離れるのは得策じゃないだろう。でもミスリル銀鉱石は欲しいから諦めきれない。


「一番近い所だと?」

「すぐそこだ。案内してやる」


 鉱員のおっさんが歩き出したので、ユミが背負っていたリュックを持って後をつける。


 通路を歩いていると天井が低くなってきた。俺は頭がギリギリ当たらないけど、おっさんは違うみたいで背を丸めている。


 最小の労力で奥へ進みたいから、移動する場所は低くしているのかな。


 興味深く見ていると、カンカンカンと鐘の音が坑内に響く。ずっと静かだったから心臓が飛び跳ねたよ。


「トロッコが来る。線路から離れろ」


 おお! 動くのは初めて見るぞ!


 線路から離れてワクワクしながら待っていると、地響きのような音が近づいてきてトロッコがやってきた。


 サイズは両手を広げたぐらいの大きさで、5つぐらい連結している。中には石が沢山乗っていた。あれがミスリル銀鉱石なんだろう。パッと見た感じは、道に転がっている石と変わりがない。


 渋谷ダンジョンだとゴーレムがドロップしてくれるから、未加工の鉱石を見たのは初めてだ。あれがミスリル銀になるなんて不思議だよね。


「よしいくぞ」


 鐘の音が止まると移動を再開する。鉱員のおっさんが言ったとおり、目的地にはすぐ着いた。


「誰もいないね」

「ほとんど発掘し終わったから、皆は奥に行っている」


 効率重視で考えれば取り尽くす必要なんてないからね。多少残っていても別の方でたくさん採れるなら、そっちへ向かうか。


「道具は持ってないようだが、どうするつもりだ?」


 ユミが持っていたリュック型のマジックバッグから、魔石で動くドリルを取り出して自慢げに見せつけた。


 片手サイズで、先端部分はアダマンタイトと鋼の合金でできている。岩に当たっても刃が欠けることはない。燃費は悪くてすぐに止まってしまうけど、ダンジョン行商するついでに倒した魔物の魔石があるから大丈夫だ。


 掘って掘って掘りまくるぞ!


 電源を入れてエンジンを動かすとドリルがブルブルと震えた。


「そんじゃ、行きますか~」


 壁にドリルの先端をつけると激しい音とともに横穴が掘られていく。激しい衝撃が手に伝わってきて、少しでも力を抜けば落としてしまいそうだ。足元には砕けた石が転がっている。


 横穴が大きくなったところでドリルを止め、足元にある石を拾ってみた。


 うん、よく分からない。プロに聞いてみよう。


「これ、ミスリル銀が含まれているかな?」

「見せてみろ」


 炭夫のおっさんへ手に持っていた石を渡すと、数秒見てぽいっと捨てられてしまった。


「紺色の線がある石を探してみろ」


 薄暗いのでマジックバッグからペンライトを取り出してから、しゃがんで転がっている石を調べてみる。灰色でラインなんてものはない。調べた石を左側に投げて、次々と調べていく。


 4つめで小さいながらも紺色の線を見つけた。


「あったよ」


 渡すと鉱員のおっさんは軽く確認して、ニカッと笑った。


「運がいいな。ミスリル銀が含まれているぞ」


 おっし! さっそく見つかってヤル気が出てきたぞ!


 ミスリル銀が含まれた石を返してもらいマジックバッグに入れてから、ドリルを動かして横穴をドンドン掘っていく。


 疲れたら落ちている石を拾って確認をして、また掘る。そんな作業を数回繰り返したけど、紺色の線がある石は最初の一つだけだった。


「埋蔵量が減っていると言っただろ? こんなもんさ」


 肩を落としてがっかりしていると慰めてくれた。見た目は怖いけど、いい人だな。


 じっと見ていたクロちゃんも、前足を何度か軽く叩いて励ましてくれているけど、俺の心は折れて作業を再開する気力は沸かない。


 奥に行けばもっと手軽に見つかるんだろうけど、浅い場所じゃこの程度か。俺が掘り進めた横穴をペンライトで調べてみても、紺色の線は見つからない。もしかしたら掘り尽くしちゃったのかな。


 時間もけっこう経過してしまったし、ユミが心配なのでそろそろ帰ろう。


 ドリルをリュック型のマジックバッグにしまって、鉱員のおっさんと一緒に坑道を出た。


 湿気のない新鮮な空気が肺を満たしてくれる。息苦しさから解放されて最高だ。


 ほんのちょっとしか作業をしていないのに、想像していた以上にストレスが溜まっていたみたい。俺よりももっと長く働いているおっさんたちはすごいな。


 集落で働いている人たちに尊敬の念を送りながら、テントを設営した場所に戻る。


 人だかりができていた。全員集まっているんじゃないかって数だ。


 責任者であるフォックスの姿は見えないので問題は起こってないんだろうけどユミが心配になってきたぞ。


「どいて!」

 

 おっさんをかき分けて中心部に着くと、ユミは出かけたときと変わらない場所にいた。組み立て用の椅子に座っている。異変はない。膝の上にある大量のお菓子以外はね。


「マスター、お帰りなさい」


 お菓子が邪魔をして立てないみたいだ。笑顔で出迎えてくれただけである。


 数歩歩くと、トゲ状態になったミスラムが視界に入った。警戒態勢のまま動いてないみたいだ。危険はないらしい。


「お菓子はどうしたの?」

「みんながプレゼントしてくれました」


 周囲にいる、おっさん達を見る。


 だらしない顔をしてユミを見ていた。犯罪臭はしない。なんというか、ばーちゃんが俺を見るような目と似ているんだよね。


 それがどんな感情なのかわからないけど、悪い気はしなかった。

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