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借金まみれの錬金術師、趣味で作ったポーションがダンジョンで飛ぶように売れる~探索者の間で【伝説のエリクサー】として話題に~  作者: わんた


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人気者のユミ

「おー。こんな所にガキがいるぞ……目でもおかしくなったか?」


 ツルハシを肩にかけた筋肉隆々の男が近づいてきた。年齢は30ちょっとぐらいのおじさんだ。全身から湯気が出ているように見える。鉱山の温泉上がりかな。少なくとも臭そうではないんだけど、上半身裸なのはいただけない。ユミの教育上、悪いよね。


「ユミは俺の精霊だから来ているんだ。それよりも服を着てくれないかな」

「精霊でもレディーだもんな。失礼した」


 わははっと豪快に笑いながら、鉱員のおっさんはタンクトップを着た。ピタリと肌に張り付いていて胸の中心にある突起物までハッキリと見える。


 見た目あんまり変わってない。


 むしろ隠したことで悪化している感じもする。


 がさつな男に配慮を求めたのは失敗だっただろうか。


「ユミは大丈夫?」

「マスターが何を心配しているか不明です。どうされました?」


 逆に質問をされてしまった。実質半裸の筋肉ムキムキ男が近くにいても不快ではないらしい。ユミが気にしないのであればいいか。視線を鉱員のおっさんにもどす。


「…………」


 5人に増えていた。みんなスキンヘッドだ。兄弟か何かか?


 さらにわらわらと追加で10人の鉱員が近寄ってきた。みんな見た目が似ていて区別がつきにくい。


「誰だよ少女を連れてきたのは!」

「ああ見えて精霊らしい。戦闘力は高そうだ」

「精霊といえば火の玉やフェアリーみたいなのが多いと聞いたが、人間タイプもいるのか」

「賢そうだな」

「とりあえず飴でもあげるか」


 鉱員の一人がユミに近づいて個別包装された飴を一つ渡した。


 動物を餌付けするような光景だ。


「マスター……」

「食べていいよ」


 戸惑っているユミに俺が許可を出すと、包みの中から飴を取りだして口に入れる。好みの味だったようで幸せそうな笑顔を作った。


「この精霊めちゃくちゃ可愛いぞ」

「俺も飴をあげたい」

「癒やされるわ。もう一回、鉱山に入って仕事できるぐらいには回復した」

「もう帰ってしまうのかな。夜までいてくれれば歓迎会ができるんだが……」


 十数人の鉱員の視線が俺に集まった。


 みんな筋肉ムキムキなので圧が強い。しかも取り囲んできた。逃げ場はないようだ。


 ユミは飴の味を楽しんでいるらしく俺のピンチに気づいていない。


「テントを張ったんだ。一晩は過ごす予定だよ」

「坊主、よくやった!」


 代わる代わる背中を思いっきり叩かれてしまった。


「ゴフォ、ゴフッ……もう少し加減をして」

「男ならこのぐらい耐えろ!」


 なんて酷いことを言うんだ。鉱員みたいに鍛えているわけじゃないんだぞ。


 耐えられるわけないじゃないか!


 ユミ! 助けて!


「この飴も、もらってよろしいのですか」

「たくさんあるからな。何味を選ぶ?」

「そうですね……ぶどうも良さそうですが、少しさっぱりした味が……」


 なんと餌付けされていた!


 俺のピンチに気づいておらず、クロちゃんも見ているだけだ。


「で、何泊する予定なんだ? 一泊とは言わないよな?」


 ガシッと肩を組まれて脅されている。


 男臭いのは苦手なんだよね。


「必要なミスリル銀を取れたら帰る予定だよ」

「どのぐらいだ?」

「5キロぐらいかな」

「それなら、数日は必要だ!」

 

 また肩を叩かれてしまった。装備を貫通して皮膚が赤くなってそうだ。


 鉱員の力、恐るべし。


「マスター! 果物もくれるみたいなんですが、食べてもいいですか?」

「好きにしていいよ」


 仮に毒が入っていても弱いものなら、ユミ自らの力で解毒できる。食中毒になる心配は不要だろう。


 それに断ったら、鉱員のおっさんたちが暴れ出してしまうかもしれない。


 ユミが人気になれば過ごしやすくなるだろうし、ここはご機嫌を取っておくべきだ。


「それじゃ俺は鉱山の下見に行ってくるよ」

「案内してやる」


 さっそくユミの恩恵が出た。俺の肩を叩いていた鉱員のおっさんが、道を教えてくれるみたいだ。坑内は迷路のように入り組んでいる場合が多いので、現役の人に教えてもらえるのは助かる。


「仕事終わったばっかりだけどいいの?」

「ユミちゃんを連れてきてくれた礼だ! 気にすんな!」


 背中をバシバシと叩かれて咳き込んでしまった。


 悪意がないのはわかるんだけど、もう少し手加減をしてくれないかな。


「少しぐらい鉱石を持ち帰りたいから、今一番ホットな場所に連れて行ってよ」

「よしきた! 任せな!」


 鉱員のおっさんに案内されて横穴に入る。天井には魔石を原動力としたライトがぶら下がっていて、壁が濡れていて水分が多いと分かる。


 床にはトロッコの線路があって、鉱石が運ばれていた。


「錬金術師は雇わないの?」

「人気職だから大金を積んでもこない。それに盗まれる危険もある」


 少量を懐に入れて残しておくってぐらいなら、マジックバッグ持ちなら簡単にできちゃう。鉱員のおっさんの懸念は当然だ。


 盗まれるぐらいなら、不便だと分かっていてもトロッコを使用する方法を選んだんだね。


 さらに数分歩くと大きな水たまりが見えてきた。


「あれは?」

「地下水だ。しかも温水だぞ」


 ミスリル銀を掘り当てる前に見つけたのかな。近くに看板があって、「体を清めてから中に入りましょう」と書かれている。仕事が終わったあとに汗を流す場所として使っているんだろう。


「温泉ねぇ。ユミも喜びそうだ」

「精霊も風呂に入るのか?」

「物質化しているからね。食事もするし、トイレやお風呂、睡眠もするよ」

「日常生活は人間と変わらないのか」

「そうだね。体の構造以外は同じだよ。普通の少女だと思って扱って欲しいな」

「仲間にも伝えておく」


 見た目はおおっかないけどいい人だよね。見た目で損をするタイプなのかもしれない……いや、こういった仕事は威圧感も重要だから得をしているのかも。


 鉱員の事情なんてわからないので答えは出なかったけど、俺やユミに好意的であれば問題はない。


 短期間の滞在にはなると思うけど、快適な生活が過ごせそうだ。

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