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借金まみれの錬金術師、趣味で作ったポーションがダンジョンで飛ぶように売れる~探索者の間で【伝説のエリクサー】として話題に~  作者: わんた


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ミスリル鉱脈のその後

 小休憩を終えて俺たちは森の中に入った。


 魔動バイクの速度はかなり落としているけど、自動バランスモードのおかげで転倒はしない。


 魔物が近くに来てもクロちゃんの姿を見ると逃げ去ってしまう。毒が強力な割に肉なんてほとんどないから、戦うメリットがないのかな。原因はよく分からないけど、安全に進められるから楽でいいよね。


 気持ちよく森林浴をしていられる。


 過ごしやすい気候だし、平和だからダンジョンの中だと忘れそうだ。


「マスター、クロちゃんは普通の木とトレントの見分けが付くみたいです」


 のんびりしていたらユミが衝撃的なことを言った。

 

 そういえばオークや狼は見かけたけど、この森で一番多いといっても過言じゃないトレントとは出会っていない。あいつらは集団で自生していることもあるし、いきなり襲ってくるから面倒なんだよね。


 回避できるのであれば森の中の移動は格段と安全になる。


「どうして分かるんだろうね~」

「木の間に巣を作るタイプなので、人間では知覚できない差に気づいているのかもしれません」


 魔物が持っている第六感じゃないけど、そういったことを言っているのかな。


 離れていてもわかるのであればすごいよね。案内人としては最適だ。


 特別なスキルを持っているからこそ、自慢をしたくて先頭を歩くって言い張ってたのかな。


 ラルクノアの群生から大きく離れるコースを取って、ダンジョンとは思えないほど平和な時間を過ごしていると川が見えてきた。


 魚系の魔物がいるので近づきはしない。


 川に沿って進んで行くと人の声が聞こえてきた。


「マスター、もうすぐでミスリル鉱脈に作られた集落へ着きます。クロちゃんは後ろに控えさせた方が良いかもしれません」


 もうそんな場所か。


 強力な毒を持っている黒死蜘蛛をみたら、護衛の探索者が攻撃してくるかもしれない。ユミの懸念は正しいので、頑張っているところ申し訳ないけど出番は終わりになる。


「クロちゃん! 俺たちの横に来てくれ!」


 くるっと振り返り、前の腕を振ってくれた。


 俺の言葉は伝わったようで、魔動バイクの横に来る。歩きながらもじっとユミのことを見ていた。


 何かを訴えかけているようだけど、何も伝わってこない。相手が人間だって難しいのに、蜘蛛の表情なんて読めるわけないよね。


「すごく頑張った? マスターよりも役に立った? バカなことを言ってないで周囲の警戒をしてね」


 活躍していたことを褒めて欲しかったんだろうけど、失敗してしまったみたいだね。ユミがお説教をしている。


 元気がなくなったように見える。ここは俺がフォローしておくべきだろう。


「クロちゃんはよくやったよ。頼りになる」


 褒めたのに嬉しそうじゃない。


 ぷいっと顔を背けられてしまった。


「ク~ロ~ちゃ~ん」


 普段よりも低めな声でユミが名前を呼ぶと、ビクンと跳ねて俺に頭を下げてきた。


 別に気分は悪くなってないから謝らなくてもいいのにね。まあ飼い主に怒られたら、そうもいかないか。


「俺は気にしてないから怒らなくていいよ。みんなよく頑張ってる。それでいいじゃないか」

「マスターがそうおっしゃるなら……」


 納得してないような顔をしているユミだけど、魔物と人間、そして人工精霊で仲良くしていこうじゃないか。


 種族はバラバラだけどきっと上手くいくさ。


「それじゃ併走よろしく」


 魔動バイクのスロットルを回してスピードを出す。


 風が気持ちいい! 対向車や信号は存在しないので、好き勝手走れるのがいいよね。


 小さな石が転がっている道を走り十分ほど経過すると、集落が見えてきた。腰ぐらいの高さである金属製の壁がある。中には大きめなテントがいくつもある。


 門らしき所には探索者と思わしき護衛が二人立っていた。


「止まってくれー!」


 指示に従って魔動バイクを停めた。ユミとクロちゃんを残し、車体に張り付いていたミスラムを引き連れて門番へ近づく。


 もし敵対するようであれば、ミスラムを大盾(ラージシールド)にして逃げるつもりだ。


「お前は錬金術ギルドの裕真だったな?」

「うん。初めまして」

「こりゃご丁寧にどうも」


 俺のことを知っているみたいで話が早い。門番の一人と握手を交わす。


 危ない人でなさそうで良かった。


「今日はどんな用事で来たんだ?」


 もう一人の門番が聞いてきたので、埼玉ダンジョンの責任者である知晴さんが発行した許可書を出す。


「自由採掘許可書か。本物だろうな?」

「押印もあるし、気になるなら本人に聞いてもいいよ」

「ルール上は問題ないから、そこまではしなくていいだろ」


 握手をしてくれた門番は余計な仕事をしたくないらしい。


 丁寧に調べる必要はないと言っている。


「そりゃそうだな。沼地を抜けるのも大変だし……通ってよしっ!」


 セリフに危険や不安を覚えたけど、悪いことではないので無視しよう。


「バイクごと入っていい?」

「かまわんが盗難されても自己責任だぞ」

「わかってるって」


 探索者の肩を軽く叩いて、ユミの所まで戻ると魔動バイクにまたがり集落へ入った。


 見た目を一言で表すならキャンプ場だ。テントが張ってあって焚き火をしている姿も見える。臭い匂いはしない。どこかでお風呂には入れているっぽいな。


 徐行で進んで空いている場所で魔動バイクを停める。


「ここでテントを張ろう。俺は責任者に挨拶してくるから、ユミお願いできる?」

「マスター、護衛としてクロちゃんを連れて行ってください」

「ユミはどうするの?」

「私はミスラムがあれば大抵の敵は倒せます」


 情けないことだけど、直接的な戦闘力はユミのほうが上だ。また頭さえ守っていれば魔力補充によって体は修復できるので、耐久性という意味でも高い。大人しく誘拐されるようなこともないだろう。飴を出されても着いていかないはずだ。


「わかった。それじゃ行ってくる。クロちゃん護衛よろしくね」


 前足を上げて返事してくれたのを見ると、俺は責任者がいると聞いているテントへ向かうことにした。


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