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借金まみれの錬金術師、趣味で作ったポーションがダンジョンで飛ぶように売れる~探索者の間で【伝説のエリクサー】として話題に~  作者: わんた


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ユミはレアな精霊だった?

 放置されていた埼玉のダンジョンが再稼働してから一ヶ月ほど経過した。

 

 ダンジョンが作る偽物の青空と草原の中、俺は魔動バイクを走らせている。後ろには人工精霊のユミが乗っていて、背負っているマジックバッグ型のリュックには「各種ポーション販売中」という幟で宣伝中だ。黒死蜘蛛のクロちゃんは併走していて、ミスリル銀スライムのミスラムは車体にまとわりついている。その影響で、魔動バイクの色は銀だ。


 行商は順調と言っていいだろう。


 生活費や俺の趣味にお金を使っても、ギリギリ赤字にならない程度の利益は出ている……らしい。断言しないのはお金の管理をユミに丸っとお願いしているからだ。いくら売上があって、残るお金がどのくらいか。正確には把握していない。


 ユミが赤字じゃないと言っているんだから、黒字なのだ。


 下位回復ポーションは市場よりも安めにして固定客をつけ、店舗販売されなくなった上位のポーションもこっそり売っている。しかも、市場価格よりも安めだ。


 錬金術ギルドにバレたら大変なことになるらしいけど、ダンジョン行商なら証拠は残らない。ユミが差別化するのに必要だと言っているので、隠れて俺は続けている。


 競合がいないので差別化なんて必要か? なんて疑問を持ったらいけないのだ。


「おーい! 回復ポーションを売ってくれ~!」


 顔見知りの探索者に声をかけられたので、近くまで魔動バイクを走らせると止まった。


 五人組の男性パーティだ。名前は覚えていない。


 若返り効果を持つラルクノアが自生しているダンジョンに入る許可を出されているほど、探索者ギルドからの信頼が高い人たちだ。無防備に近づいても襲われる心配はないため、魔動バイクにまたがったまま声をかけることにした。


「強い魔物でも出たの?」

 

 ベテランの探索者であれば予備の回復ポーションぐらい持っているけど、ダンジョンではたまに通常とは違う動きをすることがあり、使い切ってしまうことがある。今回呼び止められたのは、そういったケースが発生したんじゃないかと思ったんだ。


「ギルドで買い忘れちゃってね。数が心許ないから補給しようと思ったんだ」

 

 返事してくれたのは、前髪で目が隠れている男性だ。


 猫背でナイフを持っていて、街で見かけたら通報されること間違いなし。怪しい風貌であるうえに、髪の隙間から見える瞳は俺じゃなくユミだけを見ている。


「ユミちゃん~。下位の回復ポーションを10本売ってくれないかな」

「電子マネーと現金どっちにします?」

「うーん。電子で!」


 魔動バイクからぴょんと飛び降りたユミは、リュックを地面におろして下位の回復ポーションを並べた。


 試験管のような瓶に入っていて10個ある。注文された通りだ。


「藤井さん、電子決済はスマホでいいですか?」

「うん。それでお願い」


 前髪で目を隠した男性は藤井と呼ぶらしい。常連だからユミは覚えていたのか。


 名前を呼ばれた時に口角が上がって少しだけ嬉しそうにしていた。好印象を与えたみたい。グッジョブだよ、ユミ。


 お互いにスマホを取り出すと決済用のアプリを立ち上げて重ね合う。


 チャージしていた金額をローカルの通信で渡したのだ。ダンジョン内だとインターネットは通じないけど、こういった方法で現金以外も使えるらしい。すごい技術だよね。


 高度な機械技術は専門外だから感心してしまう。


「決済が完了しました。今回もありがとうございます」

「いつも丁寧で偉いね」


 ユミがペコッと頭を下げたら、藤井が感心した様子で言った。


 見た目10歳の少女だから、家のお手伝いをしていると思っているんだろう。


「でもさ。学校は行かなくていいの?」


 精霊だって紹介してないし、もしかしたら人間と勘違いしているかもしれない。


 責めるような視線を俺に送ってきた。


 それをユミは気に入らなかったようで、俺にしか分からないぐらい僅かに表情を険しくさせる。


「私は特別に免除されてますのでご心配はいりません」

「義務教育って受けなくてもいいんだっけ?」


 藤井は仲間に聞いてみたが、誰もが首を横に振っている。


 そりゃそうだよ。絶対に行かなければならないから、義務ってついているんだからね。納税と一緒だよ。


 話が終わりそうにないので俺が間に入ろう。


「精霊だから学校に行く必要がないんだよ」

「ユミちゃんが精霊!?」

「そうだけど、驚くことかな」

「人間と変わらない姿で言葉まで話すんですよ! ガチでレアですよ! どうやって契約したんですか!」


 興奮した藤井が俺に掴みかかろうとしたので、近くにいたクロちゃんが飛びついた。


 流石、探索者と言うべきか、それとも本気を出してなかっただけなのかは分からないけど、結果として藤井は横に飛んで回避する。


「マスターに近づくと危険ですよ」

「き、気をつけるよ」


 にっこりと微笑んでいるユミが怖い。


 もしかしてじゃないけど、けしかけたんじゃないよね……。


 この場にいると騒動が大きくなりそうなので、そろそろ移動しよう。代金の回収は終わっているし、ナイスアイデアだ。

 

「それじゃ俺たちは、他のお客を探しに行ってくるね。死にかけてもいいけど、死なないようにね~」


 命がなくなれば、二度とお客さんになってもらえない。


 商売のためにも長生きしてもらわなければ困るんだよね。


 探索者五人は何とも表現しにくい顔をしていたけど、何も言っては来なかった。


 ユミはリュックを背負って魔動バイクの後部シートに乗る。


「マスター、早く行きましょう」

「うん」


 出発前に藤井を見る。


 前髪に隠れた視線はユミを向いている。気まずい雰囲気で終わってしまったし、最後ぐらいは愛想良くしておこう。


「ユミも最後に挨拶した方が良いんじゃないか?」

「マスター、わかりました」


 一呼吸置いてユミが口を開く。


「遠くからお客様の安全をお祈りしております」


 優しい言葉だ。思いやりのある子に育ってくれて嬉しいよ。


「それじゃ、またね~」


 俺も挨拶をしてから、スロットルを回して魔動バイクを走らせる。


 目指すは北側だ。発見したばかりのミスリル銀鉱脈の採掘が進んでいるらしいので、おこぼれをもらいに行くのだ。

電子書籍版の予約が開始しています!

特典SSにはユミとの出会い編(前編)も収録されています。


更新を続けるモチベーションともなるため、是非アマゾンで予約してもらえないでしょうかm(_ _)m


詳細については近況報告を見てもらえるとうれしいです!

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