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幽霊屋敷に人形は歌う

 ぼくは伊沢裕也(いざわゆうや)だ。
 平凡な小学六年生の男にすぎない。
 同級生の海江田亜紀(かいえだあき)はぼくが殺した。
 ぼくはお葬式でアキのママに頬をはたかれた。
「伊沢くん! あなたがアキをつれ回したからアキは死んだのよ!」
 アキのママは涙を流した。
 ぼくも泣いた。
 たたかれた頬よりアキとの別れが痛くて。
 アキは病院で逝った。
 ぼくはアキの死の瞬間ごく普通の小学六年生の時間割りをこなしていた。
 遅咲きの桜が散る校庭でボールを蹴った。
 同級生と笑い合った。
 たったいまアキが死神と闘っているとも知らずに。
 海江田亜紀は小柄な女の子だった。
 四月のなかばぼくらの教室に転校して来た。
 死んだのは一週間後だ。
 七日もいっしょにいなかった同級生だった。
 アキの死でぼくの小学生は終わった気がする。
 ぼくはひと足先におとなになったみたい。
 アキはぼくの小学生時代を手に旅立ったのかもしれない。
 ぼくは結婚して外国に行ったおばさんから聞いた話を思い出した。
「ねえユーヤ。三丁目の幽霊屋敷でね。夏至の夜に人形が歌うのよ。歌う人形はね探し物をしてるの。なくしたものを見つけてやれば願いをひとつかなえてくれる。そうわたしにささやいたわ。わたしは小学生のとき肝試しでしのびこんだの。そのとき人形に会ったのよ」
 幽霊屋敷は三丁目にまだある。
 いまでも肝試しの名所だ。
 ぼくが想像する歌う人形はおかしな科学者が作ったロボットだ。
 科学者が死んでロボットひとりが屋敷を守っているにちがいない。
 歌を歌うというから子守の用途で作られたものかも?
 ロボットのなくしたなにかを見つけてやれば超科学力で願いをかなえてくれるのだろう。
 死んだアキを生き返らせることも可能かもしれない。
 ぼくは歌う人形を捜しに三丁目の幽霊屋敷にしのびこんだ。

 



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