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恋の魔法で悪役令嬢になりさがったので、名誉挽回いたします!  作者: 白雲木


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25.魔獣討伐(2)


 ……今度は逃さない!



 メリアは周囲に放電するようにしながら、魔獣の位置を探った。



 ……微かな気配。小さい?



 小さな蛾のようなものが飛んでいるのが見えた。蛾からは微かな魔力の糸が伸びている。糸を辿ると、その先に老婆のように背を丸めた何かが立っていた。頭巾のような布を被り、顔と思しき位置から長い鼻が見えている。そして、その胸もとあたりに魔法陣が見えた。魔法陣があるのに魔力の気配がほとんど感じられない。恐らく、小さな蛾の魔獣を媒介して、自分の魔力を隠しているのだろう。



 メリアはさらに集中力を高めた。魔力を尖らせるイメージで凝縮する。魔獣はメリアが何をしようとしているかわかっていないようだ。メリアを眠らせようとどんどん蛾を飛ばしてくる。メリアは地に膝をつき、銃を下ろして俯いた。



 それを見た魔獣はそろりと一歩メリアに近づいた。

  

 

 バチッ!!



 その瞬間メリアは顔を上げると同事に銃を撃った。金の閃光は魔法陣をぶち抜くと、花開くように広がり魔法陣を破壊した。雷竜の祝福の衝撃は凄まじい。魔獣は吹き飛び、後方の岩に叩きつけられた。



 さーっと霧が晴れていく。先ほどまでの眠気も嘘のようだ。



 「凄まじい力だ。だが、まだ終わってないぞ。」



 エルタの声がしてハッとする。魔獣は残った魔力で再び幻惑しようとしていたところだった。エルタは軽やかにメリアを飛び越えると、魔獣に剣を突き刺した。「キィィヤアアアア!!」と女性の悲鳴のような断末魔を上げ魔獣は倒れた。魔獣が作りかけた魔方陣は溶けるように宙に消えた。頭巾の魔獣に使役されていた蛾の魔獣も、散り散りに飛び去って行った。



 「君か。雷竜の祝福を受けたのは。」



 エルタがメリアに声をかけた。緊張が解けたメリアは頷くのがやっとだった。



 「先ほども言ったが、凄まじい魔力だ。君のおかげで魔獣を倒すことができたといっても過言ではない。だがしかし、もう少し周りにを気遣えたらよかったな。」



 エルタの声は後半震えていた。小刻みに肩を揺らしている。笑っているのだ。



 嫌な予感がしたメリアは恐る恐る周囲を見た。ジオラスを含め、同じチームの隊員達が倒れていた。ピクピクと手足が痙攣している。感電したのだ。



 「あ……っ!」



 メリアは慌てて、自分の攻撃の残滓を回収した。予期せず自分の魔力で周囲の人を感電させた時の応急処置だ。そうすることで感電のダメージを軽減できる。



 「フハハッ。次の時は気をつけてやってくれ!だが、上出来だ!あのレベルの魔獣を一撃で追い込むとはな。」 



 「すみません。私には何が起きているのかわかりませんでした。」



 「そうだろうな。」



 エルタは笑うのをやめて状況を説明してくれた。先ほどの魔獣は森に入ってすぐ、メリア達のチームに目をつけたようだった。使われた魔法は2種類。1つは蛾の魔獣を操る魔法。蛾の魔獣自体は眠気を催す魔法を使うものだった。しかし、頭巾の魔獣に操られ、幻惑魔法を媒介されていた。2つ目がその幻惑魔法で、仲間を認知できなくなる霧の魔法だった。蛾の魔獣の眠気の魔法で眠らなかった相手に対して、自身の霧の魔法で混乱させたのだ。そうして、近くにいるのに仲間を認識できない状況に陥れた。他の隊員も探知魔法で魔獣本体や仲間の位置を探っているところだったが、メリアの電流の防護魔法のおかげで感電して動けなくなったのだ。



 「つまり、仲間を戦闘不能にして危機に晒したのも、救ったのも君ということだ。」



 エルタにビシッと指さされて、メリアは顔を真っ赤にして俯くしかなかった。



 「申し訳ありません……。」



 メリアは謝ったが、エルタは「いい、いい。」と手を振った。



 「反省すべきは、君より早く魔獣を探知できなかった隊員達だ。私からきつく言っておこう。比較的脅威の少ない時間だからと油断したんだろう。研修生の前で恥ずかしい限りだ。」



 エルタは残念そうに首を振った。



 「今回の討伐で魔獣のレベルが上がっていることを改めて認識できた。1度集合して共有しよう。」



 エルタは岩を魔法で宙に持ち上げ、木々のさらに上まで飛ばし爆散させた。土煙が宙に残った。これが集合の合図だった。



 他のチームが集合する前に、エルタと共に救護用の簡易テントを設置して、未だに動けない隊員とジオラスを移動させた。少し時間ができたので、何気なく質問する。



 「王の専属護衛になったのは、どういった経緯だったんですか?」



 「あぁ。」と言ってエルタはつまらなそうな顔をした。



 「面白くないぞ。」とエルタは前置きした上で話してくれた。 



 「私はもともと王妃と幼馴染でな。学園時代は、まぁ、それなりに意識もしたさ。だが、彼女は王妃になってしまった。今もそうかもしれないが、誰でも王妃になれるチャンスのある国だ。世の女性が憧れるのも無理はない。マリワも、いや、王妃様も例に漏れなかっただけだ。」



 エルタは少し寂しそうな顔で言った。



 「彼女の、パートナーになれないのであれば、せめて、専属の護衛になりたかったんだよ。彼女が私の護衛を受け入れるなんて到底思えなかったけどね。自分の強さに誇りを持っているからな。まぁ、そのせいかな。結局、王の専属護衛を務めることになったよ。」



 「だが、それも悪くはないぞ。やりがいはあるわな。この国の王を守れるわけだから。それに、そこそこ王妃様の顔も拝めるしな。」



 そこまで話してエルタは顔をしかめた。「面白くないだろう。おっさんの片想いの話なんて。」



 「とても、参考になりました!」



 メリアは自分で聞いておいて返答に困り、思わずそう答えた。



 「何がだよ!」



 エルタは笑って突っ込んだ。



 「悲しい話だよな。オレだけだったんだよ、両想いだと思ってたのは。」



 「ふーっ。」とため息をついて、「君、成人したら酒に付き合え!」と言った。だが、すぐに顔を押さえ「忘れてくれ。」と言った。



 「君の雰囲気が少し、学生時代の王妃様に似ていてな。馴れ馴れし過ぎたな。悪かった。」

 


 そんなエルタに、メリアは返答することができなかった。王妃様への未練を感じるエルタの表情がとても切なかった。



 メリアが何も言えないでいるうちに、続々と討伐チームが集まってきた。エルタは先ほどメリア達が遭遇した魔獣について情報共有し、改めて緊張感を持って任務にあたるように鼓舞した。……が、結局メリア達が最初に遭遇した魔獣が1番厄介なもので、他は畑を荒らすイノシシタイプの魔獣を2〜3頭駆除してこの日の研修は終わった。



 メリアは失敗こそあったものの、充分な成果を得られたと思った。だが、メリアの表情に安堵はなく、厳しい表情を崩さなかった。メリアにとってはこの3日後が本番だからだ。メリアは今日の感覚を忘れぬように、拳をギュッと握った。



 ジオラスは情けない思いで、帰路についたメリアの背中を見送った。本当であれば、メリアの失態をからかうところだが、真っ先に魔獣に眠らされては話にならない。結局最後まで話しかけることもできなかった。だが、固い表情のメリアに何となく違和感を覚えた。そして、自分の失態は気にせずに、思い詰めた表情のメリアを気遣えれば良かったと、後悔したのだった。

 

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