11.毎日パッション!!
ロリアと会った翌日、メリアはリリと話し「毎日パッション」へ行く日程を決めた。平日はとにかく忙しかった。休み時間はリリから借りたノートを写すことに専念。忙しかったおかげで、メリアを見かける度に嘲笑う声や、ヒソヒソと陰口を叩く他の生徒を気にしないで済んだ。帰ったら帰ったで、宿題に補習に予習。勉強の遅れを取り戻すのに精一杯だった。自分にかけられた魔法やロリアと約束したお茶会について考える余裕もなく時間は過ぎていった。
そうこうしているうちに、リリとの約束の日になった。授業が終わると急いで自室に戻り、服を選び始めた。これはこのあとリリに会うために着るものを選んでいるのではない。小遣い稼ぎに売るための服を選んでいるのだ。クローゼットを開けて、脇に寄せた派手な服たちを吟味する。「あれ?」と思い手を止める。
派手な服に混じって、落ち着いたデザインのワンピースやセットアップの服もある。普段は買わないものの、メリアの趣味に近いものであった。派手な方の服はいかにも女性らしさや可愛らしさを強調するようなデザインで、王子の気を引こうと躍起になっているのがありあり出ているのに対して、落ち着いたデザインの服は何だか異質な気がした。それはまるで、何かに抵抗しているようだった。
念の為メリアは感じた違和感を忘れぬように、ロリアとの会話をまとめたメモの下に、日付とともに書き出した。その後は選んだ4〜5着の服を持って、古着屋へ走った。服の状態は良かったため、半額とまではいかないものの、ある程度散財した分を取り戻すことができた。メリアはリリとの約束の店へ急いだ。
「メリア〜!お待たせ!!」
弾む笑顔でリリが声をかけてきた。「待たせちゃった?」と聞かれたが、メリアもちょうど着いたところだったので、「私も今着いたんだよ。」と伝えた。メリアはフルーツの飾りで作られたリースのかかった店の扉を開いた。リンリンと明るい鈴の音が響く。
「毎日〜パッショーン!!へようこそ〜ん☆まぁ〜、可愛いフェアリーちゃん達!!こちらのお席へどうぞぉ〜!おかけになってねぇ。あ、注文が決まる頃、伺うからねぇ!」
扉を開けて早々、元気の良すぎる店員に圧倒される。色黒のムキムキボディにパツパツのエプロンをして、金髪の髪を三つ編みにしている。三つ編みは可愛らしいヒマワリの髪ゴムで留められていた。顔の髭は剃られ小綺麗に化粧が施されている。何をどう突っ込んでいいかもわからず、勢いに押されたままメリアとリリは席に向かった。
「リリ、毎日パッションってこんな感じの店なんだね。デートにもよく使われるって聞いたから、もっと落ち着いているのかと思った。」
メリアがコソコソと話すとリリは答えた。
「今の、多分名物店長の『ジュマさん』だと思う!!普段は裏方でパフェを作ったりしてるんだけど、お客さんの反応を見るために接客に回ってくれることもあるんだって!」
リリは彼女?の存在をもともと知っていたようで、「ジュマさんがいると、サービスしてもらえることもあるんだって!」と目を輝かせた。
リリの注文は決まっていて、季節の果物がふんだんに使われた一番人気の「パッションパフェ」だ。一人で食べるには少し量が多い。2人で1つでも十分なくらいだが、メニューには「1人1品はご注文ください」との文字が。自分の為にあまり高価なものを選びたくなかったメリアはメニューとにらめっこしていた。
「スミレのフェアリーはお悩み中かしら?」
いつの間にか席のそばに立っていたジュマさんにメリアは驚く。思わずギョッとしてしまった。
「あらあら〜。驚かせちゃって御免遊ばせぇ。スミレのフェアリーはちょっとお疲れかしら?そんなアナタにはビタミンたっぷりのパッションドリンクをおすすめするわぁ。それでいいかしら?」
強めのウィンクに思わず頷くメリア。リリは元気よく「私はパッションパフェでお願いします!」と伝えていた。そんなリリには、「まぁ、可愛いわねぇ!フルーツ1個サービスしちゃうわね。」と言って笑った。
商品が運ばれてきた。パッションパフェにはメニューの絵にはない、舟形に切ったメロンが2つぶっ刺さっていた。恐らくメリアの分も考えてくれたのだろう。メリアの方には大きめのグラスに黄色のドリンク。柑橘系の果物を中心に使ったミックスジュースのようだ。
パフェをひと口食べたリリは「おーいしぃー!」と本当に嬉しそうな表情をしていた。メリアもドリンクをひと口飲んだ。弾ける酸味が爽やかで、後味はスッキリと甘く身体に染み渡る。メリアの目も思わず輝く。その様子を遠くの方でジュマさんが見ていて、ニコニコと笑っていた。
リリは「こんなには食べられないから」とサービスのメロンと合わせて、パフェを少し分けてくれた。メリアもメリアで好きなだけどうぞと、ドリンクをリリに飲ませた。「こっちもおいしぃ~!」とリリは喜んでいた。
毎日パッションで過ごした時間は、今週のゴタゴタを吹き飛ばすくらい楽しい時間だった。会計すると、メリアのドリンクは最も安い値段で特別に作られていたことが判明した。値段を確認しようとメニューをチェックしてもないわけだ。流石に申し訳無かったので、週末のお茶会に向けた焼き菓子とお茶も、ジュマさんのオススメから買うことにした。これでもう十分と思ったとき、ある商品に目が留まる。
……ロックチョコチップクッキーだ。
大きめのチョコが岩のように見えるゴリゴリしたクッキーだ。男女問わず生徒からも人気のクッキーで、ときどき学園内の売店にも置かれるほどの人気商品だ。ただ、他の売り場で見かけるより内容量は多く値段もおさえめだ。おや、と思って見ていると、
「そのクッキーはうちで考案したものなのよ!フルーツもいいけど、私やっぱりチョコも大好きなの!ゴリゴリチョコの入ったマッチョなクッキーよ。私らしいでしょ。」
ジュマさんはニッコリとそう教えてくれた。何か惹かれるものがあり、メリアはロックチョコチップクッキーも購入することにした。
何か思い出しそうなところで、リリが溌剌と声をかけてきた。
「メリア!!今日は本当にありがとう!ごちそうさま!私、ここでこんなに元気になれるなんて思わなかった。休みの前日の授業ってダルいけど、全然へっちゃらって感じ!また来ようね!」
もちろん、その時は自分で払うよ!とリリは笑った。
「うん!私も今日はすごく元気をもらったよ!また行こうね。」
メリアは先ほど考えていたことを忘れて、笑顔で答えた。メリアはリリは晴れやかな気分で学生寮へと帰ったのだった。




