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第15話 魔力を羽虫ほどに抑えるという例えが理解できない

「取り敢えず、この指輪をつけてみろ」


 草が生えている地べたに、露天のように布を広げ、いくつかの装飾品をクロムは並べていた。その一つのただの金属の指輪を私に差し出している。


 これは魔力を抑える効力があるものらしい。


 金色の輪っかの内側に、クロムが書いていた謎の文字が刻まれている。おそらくこれが、魔力を抑える効力を発生させる呪文みたいなものなのだろう。

 魔力自体が私には全くわからないけど。


 渡された金色の指輪を、右手の人差し指にはめる。


「うげっ!」


 つけた瞬間に真っ黒になり指輪がボロボロっと崩れていった。


「やっぱり一番安物はだめか、これならどうだ。程々に効力があるものだ」


 今度は緑色の親指大の宝石がついた首飾りだ。首からかけてみる。

 緑の宝石にヒビが入って、宝石も鎖も散ってしまった。


「お前、魔力を抑えようという気はあるのか?」

「たぶん?」


 だから、魔力がわからないんだよ。


 次に孫悟空の頭の輪みたいなものを渡された。なんだか呪のアイテム化していない?

 ジト目でクロムを見ると、無言でつけろという圧力を受けた。

 仕方がないのでつける。


 もし、これで魔力っていうのが、抑えられたら、私は孫悟空の輪のオプションを付け続けないといけないの? それはなんかイヤだな。


 頭につけると、バキッという音と共に上から、黒いクズが落ちてきた。よし! 孫悟空化は免れた。


 と思ったら頭に衝撃が!


「お前、魔力を抑える気はあるのか?」

「クロムさん。肉球はぷにっとしていいのですが、爪が頭に刺さっているのだけど?」


 私の額にクロムの右手がバチンと置かれたかと思うと、頭にチクチクと爪が刺さってきた。

 昔、虎次にやられたやつだね。前足を置かれて、爪がぎゅうっと出てきて刺してくるやつ。


「地味に痛いのだけど?」

「こういう術がかけられた装飾品は、高いって知っているか? お前、一年ぐらい遊んで暮らせる金を、クズゴミにしているって認識ないだろう」

「え? 何? その大金!」


 一年ぐらい遊べるお金は流石に持ってないよ!


 私の周りに散らばっている黒いクズになってしまった物体を見る。これ……一年分遊べる大金が注ぎ込まれているの!


「申し訳ございません」


 頭を下げようにもクロムの肉球に阻まれて、頭に爪が刺さってこれ以上動かせない。

 でも肉球が微妙に気持ちいいっていうと、爪が余計に刺さりそうだから、黙っておく。


「その大金ってクロムが出したの?」


 私には返せる当てはないけど、なんとか努力をしよう。ドラゴンに頼んでもう少し鱗を分けてもらうとか。

 私を見下ろしているクロムは大きくため息を吐きだした。


「はぁ。俺は言ったよな? 貢物を売っていいかって、それはその金で買った」


 確かに言っていた。もしかして、お肉ってお金になるってこと?

 まぁ、肉臭いけど食べられないこともないからね。


「お肉がお金になる?」

「珍しい素材だ。例えばフローセア種の羽とかは貴族に好まれる」


 私はキューイと鳴きながら、ぷっくりとした小竜に飛びかかっている虎次を見る。あれは狩りの練習でもしているのかな? 遊んでいるのかな?

 あの青い羽ってお金になるのか。抜けた羽を集めておこう。


「それで、私はいつまでこの状態なの?」


 微妙に頭に爪が刺さって痛いのだけど……。


「もうちょっと待て、馬鹿なカリンにもわかりやすい方法をとってやる」


 もう、私が馬鹿だって定着しているよね。だから、異界の知識がないだけで、仕事はバリバリにできていたんだよ。教えられたら出来るようになる……はず。


 と思っていると、何かじわじわと気持ち悪い感じが身体を這っている感覚に襲われる。例えていうなら、ムカデが皮膚の上を這っている感じ……あの時は悲鳴と共に足を振り上げると、刺されて痛さに悶えた記憶も蘇ってきた。


「うぎゃ~! 気持ち悪い! ざわざわしている!」

「その気持ち悪いのを押し返すようにしてみろ」


 気持ち悪いのを押し返す? 押し返す……ん? 波みたいなものがある。

 身体の内側にある何かで押し返す!


「うぉ! タイミングを外せば腕が一本無くなっていたぞ!」


 いつの間にか、遠くで右手を振っているクロムがいた。そして周りを見てみると、何故か銀太も虎次も竜騎も私を遠巻きに見ている。それもかなり遠い。

 君たちさっきまで、そこで遊んでいなかったかな?


「今、カリンから溢れでているのが魔力だ。それを羽虫ほどの弱さに抑えろ」


 クロムに言われて両手を見ると、確かに身体の周りに光っているものがでている。これが魔力か。


 これを……羽虫ほどの弱さ……クロムの例えがわからないよ。


「これができなければ、人の街には行けないぞ」


 はっ! 人の街に行く! そのためにはこの光っている魔力を、ミジンコ並にすればいいってことだね。


 そうクロムに言われたら、断然やる気が出てきた! 頑張るぞ!


 って出したものを引っ込めるのはできたけど、これを小さく抑えるってどうすればいいのだろう?



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