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5 あー、それ愚かだよ

補足説明ですが、この学校では応援演説をする人や推薦者などは必要ありません。

当人がやりたいと思ったら当日舞台に上がって演説するだけになります。

上手く本文に書けなかったので、ここで説明させて頂きました。


 ここで、裕という男について解説しなければならないだろう。


 まず始めに言うがこの男は生粋の陰キャである。ゆえに、去年は俺と一緒で孤立していたため、自然と仲良くなれた。



 で、そんな彼だが、一言で言えばとても性格が悪い。



 まず、一緒にゲームをやれば、互いに『攻撃するなよ? いい? OK?』という事前確認をするも、すぐに裏切るド畜生である。だから俺は基本こいつとゲームはしない。


 そして、残念なことに一年の頃は同じクラスだったのだが、二年になっては別になってしまった。おかげで、修学旅行の班を作るのが大変だったわ。


 しかし、その性格が今の俺にとってはとても有用で、しかも重宝すべき能力である。


 折り返しのラインが来たのは、9時だった。そこで通話しようという旨があったのですぐに電話をかける。そして第一声がこれだ。




『あー、マジで愚か。反省したほうがいいよ、キモい』




 もしかすると、電話繋いで最初に聞く言葉が『もしもし』以外だったのは初めての経験かもしれない。


「えー……どこが?」


『まず、生徒手帳に書かれてる言葉を引用とかするのはやめたほうがいいよ。どうせ誰も興味ないし。そもそも、こうまでして奇をてらう必要ないから。まずは王道で文を作って、そこから変えていけばいいよ』


 とてもナチュラルに罵詈雑言が飛ぶが、確かにその通りなのかもしれない。


 俺には今まで全校の前で話した経験がない。そんな俺が初めての場でこんな特殊な演説が出きるのかという話だ。




 考えるまでもない。無理だ。




 なればこそ、まずは王道で書け、ということなのだろう。


「うーん。……まあ確かにちょっとウケを狙い過ぎたような文だし……変えるかー」


 そんなわけで、俺は新しくノートとペンを用意し書き直そうとする。


『あーいや。もう書き直したほうがいいところまとめて送ってあるから確認したほうがいいよ?』

「……え?」


 急いでラインを見返すと、数十分前に俺の原稿の改正版が修正理由と共に書かれていた。(裕は書くのが面倒なので全てタイピングで)


 生徒手帳の下りが完全にカットされていたり、ところどころの表現技法も変えられている。

 

「お、おおぉぉーー。ありがとうございます!! 裕さん!」

『あ、そういうのいいから、早く書き直して』


 多分、僕の直したやつだと、自分なりのプロセスと違ってくる表現も多くなると思うから、と付け足してくる。


 しかし、そこら辺で俺は気づく。


「ごめん裕。明日もう一回相談に乗ってくれない? 通話は同じ時間でさ」

『? 明日一番に出して最初に演説するんじゃないの?』


 そう。当初はその通りだった。だが、考えが変わった。


「今の原稿もいいんだけど、やっぱり、もっと考えてから書くのがいいと思うんよ」


『あーまあ。それは賢い選択だわ』


「ってことでさ、裕のアドバイスを元に書き直して送るから、またダメ出しとかお願いできん?」


『暇だからいいよ』


 暇て。







● ● ● ● ● ●



 



 10月3日水曜 早朝





 授業が始まる前に、俺はネタになりそうな表現方法や新たな公約を考えては紙に書くというのをやっていた。


 一応、裕には朝のうちに直した原稿を送っておいたので授業の合間に確認するだろう。そしたら家に帰ってすぐに相談することができる。


 そして今日。


 今も着々と構想を練っているわけなのだが、そろそろ俺も第二関門を突破する時が来たのかもしれないと強く感じていた。




 第一関門、情報収集。




 ということで、第二の関門は仲間集めである。



 え、昨日、裕と一緒に原稿なおしてただろって?



 それはそれ、これはこれです。


 というか、裕はなんとなく協力してくれそうな雰囲気だったのでそもそも仲間である。俺が言いたいのは新たに仲間を獲得することだ。


 そして、俺がこのために打っておいた布石が、今ようやく意味をなす。


(さて、クラスの最高位カーストに話しかけにいくか……)


 あれ? 変だな、さっきから動悸が。心なしか脈拍も高くなってるし。


 というか、俺が2年になって女の子に自分から話しかけに言ったことが果たして何回あっただろうか? ……多分、片手を使えば足りるな。





「あの、すいません。生徒会会計の杉原 美枝さん。今お時間いいでしょうか?」





 周りに人がいなくなったことを確認すると、俺は急いで話しかけにいく。ヤバい、目が怖い。


「あっ!」


 杉原さんが何かに気づく反応をする。


「えっと……、文化祭の時にスタンプラ―――」

「村山君、生徒会長になるの?」



 ふーむ……。ホワッツ? 



「えっと……そうですが何で――じゃなくて何故知っているんでしょう?」


「? クラスじゃけっこう有名だけど?」


 ああ、そういえば。俺は昨日、確かけっこう大きな声で生徒会長になるって宣言したような気がする。


 なるほど、それで有名に……。



(……ま、いっか)



 どうせいずれは皆にも知っておいてもらうことだし。


「そ、そうなんですよ。で、あの、僕文化祭の時にスタ――」

「じゃ、原稿見せて」




 クソ真面目な顔でなに言ってんだこの人。




 まだ俺がやった恩を説明していないはずなのだが、なぜだかウェルカムで協力してくれるような姿勢だ。


「えっと……。協力してくれる……ってことですか?」


「そのために話しにきたんじゃ?」


 なんだこの人。聖人か?


 ほぼ面識のないクラスの男子に自ら協力を申し出るとは。

 伊達にクラス委員長と生徒会会計をやっていたわけじゃないということか……。え、女神かなんかですか?


「すいません、実は原稿を家に置いてきてしまって……。明日、見てもらえますか?」


「別にいいよ」





 なんか、想像の百倍簡単に協力が取り付けられたな。だが、現生徒会の協力が得られたのはかなりデカイ。しかも杉原さんは学業優秀だ。(実は俺のほうが上だったりする)


 そして、もうひとつ。あと一人、俺の仲間になってくれる人に心当たりがある。早速誘いにいくか。


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