2 情報と仲間から始めよう
というわけで早速選挙活動……の前に、まずはペンキをクラスへと持っていく。
そして、クラスだと高い部類に入る身長を生かして働きながら選挙について考える。
皆さんお気づきだろうが、もちろん俺は小中高で生徒会に入ることはおろか、部長、委員長、班長になったこともない。
もちろん、人前に出るのも好きではないし、指揮を取ったことなど一度もない。
完全なる素人。
この状態で、今まで生徒会だったり、部長だったり委員長だったりする人と渡り合わなければならないのだ。
どうすっかねー。
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時が流れ、文化祭当日
早朝から体育館に集められ、全員が注意やらルールを聞かされる。
だが、そこで全体の司会進行を担当しているのは生徒会の面々だ。
実に楽しそうに淀みなくハッキリとした口調で全体を盛り上げる。
(これが俺の未来の姿か……)
うーん。実に感慨深いねぇ。
その後、諸々のイベントが終わり、遂に単独行動の時間が来た。
俺は前もって決めていた陰キャ仲間の『崎口 裕』と『斎藤 陸』と共に様々なクラスのイベントに参加する。
二人とも去年同じクラスだったが、今年は全員バラバラだ。
「ん? これ面白そうだから入らない?」
「なんだこれは?」
「クイズ大会」
「ほーう。就職組の俺にこんな高度な問題をぶつけるなんて、イカれてるぜ」
とかなんとか言ってる自称運動神経が良い男。長身である斎藤 陸。
同学年で同じ名前なのがこいつである。頭はすこぶる悪い。だが、それを利用した自虐ネタがクソ程おもろい。(聞いてるこっちは悲しくなるけど……)
「裕はいけるんじゃない? 理系だし」
「あー、そういうこと言うの良くないよ。愚か」
眼鏡をかけ事実しか言わない効率厨。頭の出来だけを見れば多分学年一の彼は眼鏡をかけ直しながら事実を言ってくる。
だが、大人になればこうして言いたいことを言ってくる友人は得難いものだ。
「よし入ろう」
「僕の話聞いてた?」
「聞いてないけど?」
なんか露骨にため息つかれた。
「ねえ、村山君」
さて、結果からいうとボロボロに負けたクイズ大会から別のクラスに移動している中、突然俺に声がかかってきた。
思わず振り返る。
そこには……………………えーと…………ん?
なんか、見覚えがあるし、なんならクラスにいたはずの女性がいた。
誰だっだろうか?
クラスの女子の名前はあまり覚えてないのだが、この女子の顔には見覚えがあった。
親しくない女子は全員同じ顔に見える俺が見覚えあるということは、そこそこ重要ポジの人間のはず。
俺は、数少ない人物名鑑を探り回る。
(……ああ、思い出した)
「えっと、なんの用でしょうか? 生徒会書記の杉原 美枝さん?」
「!? えっ、あーうん。今生徒会でスタンプラリーのイベントやってるんだけど、村山君も参加しない? これ紙」
おかしいな。徹底して、完璧な文法と言葉使いだったはずなのに引かれてしまうとは。
「あー、それはどうも……ありがとうございます」
(うっわ、メンドクサ)
流石に顔には出さないが、俺は少し紙を貰うのをためらう。
そういえば、早朝の集会で生徒会がなんかイベントやってるとか言っていたような気がする。
なんか、豪華景品が貰えるとも。
しかし、今こうしてスタンプラリーの紙をそこまで親しくない異性に配っているということは、つまり、まあ、そういうことだろう。
「いや、別に貰うのは嫌じゃないよ? 嫌じゃないんだけど、もしかしてこれ誰も参加してないの?」
「いや、まあ、そういう訳じゃないんだけど――中々景品が減らなくてね。こうして参加を呼び掛けてる」
なるほどなるほど。つまり俺は在庫処分のお手伝いをしろといわれているのか。
「残念だけど、今忙し――」
うぉい待て、村山 陸!
目の前にいるのは、生徒会書記、杉原 美枝だぞ!?
進学クラスである2年1組の中でも成績上位で、クラスの委員長も務める、陽キャ側の人間。
しかも、彼氏持ちでクラスの人望も高い。
ここで断ればクラスで悪い噂が広まるどころか、最悪居場所がなくなる可能性すらある。
ここは、誘いに乗って逆に利用する方がいい。
ちょうど生徒会長になりたい気分だったし、生徒会書記の人に恩を売るのは悪くない。
「――くないです! いえ、全然。むしろ、喜んでやらせて頂きます。生徒会書記の頼みですので!」
深々と頭を下げ、丁寧に紙を三枚貰う。この際だ、裕と陸にも協力させよう。
「あ、ありがとう」
ちょっと引きながら、彼女は紙を手渡してくる。
さあ、とっととラリってくるとするか(スタンプを)。
「あ、それと村山君」
「はっ! なんでございましょうか!」
俺は瞬時に膝をつく。いざとなれば靴でもなんでも舐める覚悟がありますよ?(激キモ発言)
「私、書記じゃなくて会計なんだけど……」
「すぅーー…………」
やべ。