11 最後の手詰め
第六関門、広報活動は一言で言えば成功した。
翌日の火曜だけになってしまったのだが、カキベは俺と共に正門前で投票を促すよう活動してくれた。
もちろん、先生に止められてしまったのだが、それでも大多数の人に俺の名前が周知されたはすだ。
夜遅くまで原稿を読む練習をしていたためかなり眠いが、それでも確かな手応えがあった。
そして、教室に戻ってきた俺はそこで後ろの黒板に一枚の紙が掲示されているのが目に入った。
見れば、今回の後期生徒会選挙の立候補者の名簿だった。もちろん、俺の名前もある。
――というか
「えっ! 俺、一番に演説できんの!?」
あまりの衝撃に大声を出してしまう。
名簿は演説をする順番で印刷されていたのですぐに分かった。俺の名前が一番上にあるのだ。
(周りの人、どんだけ遅かったんだよ)
ここで、少しだけ演説の順番について説明する。
演説は書類と原稿を先に提出した順番で話せる、というのは既に話したが、実はそれ以外で順番が変わる要素がある。
それが、なんの役職を希望するか。
例えば、生徒会長を目指す人が3人、副会長が4人、書記が3人とかだった場合、書記の人が最速で出したとしても、書記の立候補者の中で一番に話せるだけで生徒会長候補者の人の方が先に話すことになる。
そこら辺を加味した結果、どうやら俺は生徒会長候補者の中で一番に書類と原稿を提出したことになる。
嬉しい誤算だ。
(というか、この紙があれば他のライバルも確認できるな)
というわけで、他の俺のライバルになりそうな人を探す。
「あれ? 生徒会長候補者――俺と篠田 千波さんの二人しかいなくね?」
思わず独り言を溢す。
まさか、俺と篠田さんだけとは――もしかして生徒会長って人気がない?
いやよく見てみれば、他の役職の名簿も乗っている。
(確か定員は副会長1名、書記2名、会計2名だったか)
どれど――
「全部定員ピッタリじゃん!?」
はっ、なにこれ? ふざけてるの?
思わず大声出しちまったわ。
いつもなら1人か2人は定員オーバーになるのに今回は誰もいない。ということは、生徒会長以外は信任投票、ということだ。堀田さんの名前もある。
いや、もしかして俺が出張ってこなければ平和的に生徒会が決まってた?
別に悪いことをしたわけではないが、なんだか申し訳ない気持ちになってくる。
「あれ? 会長なにしてるんすか?」
すると、俺の声を聞きつけ、陰キャ仲間の山さんが声をかけてきた。
あと、毎日のように俺が会長になるわ、と言っていたらなぜかクラスの人から会長と呼ばれるようになっていた。これで落選だったら死ねるな。
「いや、なんか生徒会長だけ争う感じになっててさ」
「あっ――ホントじゃん」
またまた、今度は他のクラスメイトまでワラワラと集まってきた。
「さすがにヤバイかもしれない(もともとヤバイ)」
「いや、逆に考えたらこれで生徒会長になれたら激熱展開だよ」
「激熱展開? 確かに」
そう思うと燃えてきたな。
「っていうか、選挙の見所がここしかないのもつまらないけど」
「そんなこと言わないでくれます? 俺は今から緊張してんだから。いや生徒会長には確定演出でなれるんたけどね?」
あれ、なんか皆、無理やり笑ってるな? 失礼な。
「っていうか、対抗馬、篠田さんじゃん」
「え? 陽真知ってるの?」
突然の情報に俺は近くの男子生徒、ハルマに問いかける。さっき激熱展開とか言ってた人だ。
「ああ、俺と同じ中学の人だわ」
「へー、どんな人だったの?」
「中学で生徒会長やってたよ」
「………………」
おや? 急に雲行きが怪しくなってきたな。
「それマジ?」
「マジだよ。で、高校だと生徒会の会計をやってる。あっ大丈夫ダイジョウブ。俺もちゃんと村山会長に投票するから」
だが、俺はその発言で大分危機感を持っていた。
俺は選挙は人気投票だと思っている。
例えば、自分の好きな人が選挙に出ていたら投票するだろうし、クラスメイトだったら高確率で投票してくれるだろう(堀田さんが立候補したときにビビったのはそのせい)。
極論を言ってしまえば橋本○奈や吉○亮みたいな人が出れば確実に生徒会長になれる。
だが、そんな人はこの学校にはいないし、そのレベルの美男美女がいるわけもない。
ということは、生徒の皆は演説で判断するしかないわけだ。
中には自分の実現して欲しい公約を掲げた人に投票する人もいるだろうが、大体の人は適当になる。
そこで立候補者の魔法の言葉『私は生徒会として○○をしました』みたいな言葉が活きてくる。
これを聞けばとりあえずこの人に投票しておこう、という考えにいたりやすくなるのだ。
もともと彼女が生徒会メンバーであることは把握していたのだが、まさか、中学で生徒会長をやっていたのは計算外だった。
彼女が演説中に『私は中学でも生徒会長をやっており~~』みたいなことを言われてしまえば、俺の旗色はすこぶる悪くなる。
「記憶を消し飛ばすしかない……か」
「なに言ってんの?」
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