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1 イキり陰キャ――始動!!


 



「―――村山(むらやま)、お前部活やめろ」




 夏休み明けの9月。これから二学期が始まろうというタイミングで、俺は職員室で部活の顧問からそんな言葉を頂戴していた。



「……え? そんな……」


 

 思わず目を見開く。


 それに対し、顧問はため息を吐きつつ話を続ける。


「お前、夏休み中まったく部活にこなかっただろ? それに、部長の岩田まで部活にこなかったし、先ほど退部届けまで出してきた。もう2年になったし、部活も強制じゃない。……なあ、何でお前は夏休み中、部活にこなかったんだ?」


 目の前の顧問は鋭い目線と盛り上がった筋肉を見せつつ、俺に聞いてくる。


「すいません……。勉強が忙しくて……。それに、コロナにもかかったので、大会や練習にも行けませんでした……」


「そうか、お前進学クラスか……。いいか? 俺たちの学校はプールが壊れてる関係上、他の施設から練習場所を借りなきゃいけない。なのに、お前はまったく練習にこないから、その分相手方に失礼がかかってるんだ」


「そう……ですね。分かりました。悔しいですけど、今の僕には部活と勉強の両立は難しいです。退部させて頂きます」



 下を向きながら、俺は退部の意思を表明する。


 そのまま職員室を出て、教室(2年1組)へと向かう。



 そして、職員室が見えなくなったころ。





「キチャアアアッ!!!」





 思いっきり腕を振り上げ、ガッツポーズをする。


「うっしゃァァ! やったぜ、やっとやめられた。ざまあ見やがれこのクソ顧問が。筋肉メガネめ。いつも筋トレばっかさせやがって。これだから脳筋はよぉ!」


 やめたいやめたいと願い続けて一年半。ようやく、この悪夢から抜け出せる。



 え、まさか俺が部活を辞めさせられて頭がイカれちゃったと予想しました?


 安心してください。もともとイカれちゃってます(テヘ)



 フハハハ~。クッソ気持ちいいぜ。今夜は枕を高くして寝れるな~。



 そして、教室へと到着する。今は昼時で、中では皆が弁当を食べていた。


「あっ! 村陸帰ってきた」


「どうも。おいおいやったぜ! 部活辞めたぞ!」


「えっマジ?」


「マジマジ」


「えっ村陸、水泳部でしょ? どうやって辞めたん?」


「ん? いや、顧問から辞めろって言われた」

 

「キショォォォ」



 前の席で弁当を食べる友人が痙攣を起こしながら頭を振る。ちな、名前は山田 将(やまだ まさる)。キショォォォとか言ってるキショキショの実を食べたヤバい人だ。


 そうそう、俺の名前は村山 陸(むらやまりく)。同じ名前の人が同学年にいるから、短縮で村陸と呼ばれてる。


「村陸、俺と一緒じゃん。ようこそこちら側へ」


 隣の席から、すでに退部している陰キャ仲間の山さん(やまさん)がパンをかじりながら握手を求める。俺はその手を全力でとった。


「ああ、ついに来た。これで、授業が終わったら帰ってすぐにゲームできるわ。イエェェゲ!!」




 手をブンブン振り回しながら体で喜びを表す。



「で、陸はこのあと、どっかの部活に入る気はあるの?」



「いや、まったく。ゲームの方が大事でしょ?」


「いや、勉強しろよ」



 

 ハハハ、何も言い返せないねぇ。




 

● ● ● ● ● ●





 一週間後



「あれ? なんだろう。ちょっと疎外感が……」


 ふと、授業の合間に我に返る。


 そう、この一週間は充実していたはずだ。


 家に帰ればゲーム出来るし、キツイ肉体労働もない。


 でも、最近はなぜだか仲間外れのようなものが起きている。


 別に、友人に無視されている、というわけじゃなく、授業が終わった後に皆が部活に行くなか、自分だけ家路につくというのが、なぜだかとても寂しくなるのだ。




「ヤバい山さん。皆部活に行ってる中、自分たちだけ帰るの、すごい悲しくなるんだけど」


 ということで、同じ無所属仲間の山さんに声をかける。


「ああ、村陸も遂にそこまできたのか。でも大丈夫。慣れればいいんだよ」


 すでに辞めて半年が経つ山さんは何てことないように、話を切り上げる。


 そっかー。まあ、そうだよな。慣れれば良い話か。


 それに、目の前に一人だけ、無所属の仲間もいるし、一人だけってことはな――




「あっ、そうそう。俺、来週から華道部に入ることにしたんだ」




「!?」




● ● ● ● ● ●






「これが孤独……ね」


 どうやらこのクラスで部活に入ってない人間は俺だけのようだ。

 

 ちなみに、さっき華道部に誘われたが、そこの顧問が俺の嫌いな先生だったため、断っておいた。


 嫌いな肉体労働と教師から逃げるために部活を辞めたというのに、なんで自ら嫌いな教師に会わねばならないのか。


 だったら別の部活に入ればいいんじゃない?


 そう思われる方もいるでしょう。しかし、俺はそもそも部活自体が嫌いなのだ。


 先輩後輩の関係も、試合とかの青春も俺は全く興味がない。あと、知り合いが極端に少ないので、誰も知らない部活に入りたくない。



 え? 陰キャだからだろって? だからなんだってんだ!(開き直り)



 その時、ちょうどホームルームの時間がやってきた。



「――えー、今日から文化祭の準備が始まります。ちゃんと7時までに帰りましょう」


 そういえば、二学期といえば文化祭だったな。俺は全くクラスの行事に関心がないから適当に聞いてたけど。確かうちのクラスはお化け屋敷だったっけ?


「それに伴って、生徒会の人は運営等で空けることが多くなるので、そこら辺を把握しながら準備してください。うちのクラスは……美枝(みえ)だけだったっけ?」


「そうです」


「じゃあ、報告は以上だから。解散」



 先生が解散を宣言すると同時にクラス全員が机を動かし始める。そして、指揮をとるクラスの陽キャが紙を見ながらあちこちに指示を飛ばす。


 まあ、俺は陰キャなので、話しかけられることもないでしょう。大人しく、教室の端で時間が来るまで待ちますかね。



「あ、陸君。陸君は下に行って、ペンキ取ってきてくれない?」


「ん? わかったー」


 どうやらご指名のようで。というか、よく見れば陰キャ仲間の山さんもマサルも全然働いているようだ。






 …………いやちょっと待て。

   





 よく確認すれば、クラス全員がなにかしら仕事をしている。



 ほうほう。







 よし、身を粉にして働かせて頂きましょう。





 


 というわけで来たペンキ貰いゾーン。


 自前の(ペットボトルを切って作ったもの)器を持ってペンキを貰う。


 そういえば、このペンキを配布しているのは誰なのだろうか?


 よく見れば、さっきクラスで先生に呼ばれていた美……なんとからしき人も働いている。


 どうやら生徒会の人たちがやっているようだ。






 ふーむ……。










(暇だし生徒会長になるかー)








 面白い! 続きが読みたい! 


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