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宇宙の始まり

作者: 雉白書屋

 宇宙の始まりとはなんぞや。

 ビッグバン。膨張の末の大爆発。それは膨らみすぎた風船が破裂し、中に入っていた紙吹雪が散らばったようなものか。

 だが、無からなにがどう爆発したというのだ。私にはわからない。が、頭の良い人間が考えた事だ。それで合っているのだろう。


 だが、私なりに思うことがある。宇宙、まったくの無の状態。真っ暗闇。そこでまず生まれたのは形無きもの。そう、思念だ。

 ではそれはどういった思念か。何もない場所で何を思うか。

 そう、何もない。そこには『ここにはなにもない』といったハッキリとした文面ではないものの、そういった類の思念が漂っていた。

 それらはやがて途方もない時間をかけ増え続け、そしてやがてこういった思いに変わった。


『退屈だ』


『退屈』『退屈』『退屈だ』『退屈』

『退屈だ』『退屈』『退屈』『退屈』

『退屈』『退屈』『退屈』『退屈』

『退屈』『退屈』『退屈』『退屈』

『退屈』『退屈』『退屈』『退屈』



 やがて、また途方もない時間をかけ、それらは寄り集まり、ついに形を、物質となった。

 それはほんの小さな小さな砂粒。何かを生み出したいという思いから産まれた一粒種。

 そしてそれらはまた同じく数億、数兆と時間をかけ寄り集まり……とそれが宇宙。それが銀河。星々の誕生だ。


 つまり、この星、地球は生きていて石や砂にも言葉には表せないほど質素であるが確かに意識というものが存在するのだ。

 そして思念。我々の死後、魂と呼ばれるものは確かに天に昇るが、その行き先は天国でも地獄でもない。

 

 宇宙だ。


 ビックバン。死ぬ間際に火花のようなエネルギーを発し、命を散らした我々の思念は空へ昇り、宇宙へと。そして、始まりと同じように寄り集まるのだ。



 しかし、その思念はどのようなものか。

 

『退屈』


 違う。


 良い死に方をする人間とそうでない人間どちらの方が多いか。

 良い人生だったと笑い、死ねる人間がどれほどいるか。

 後悔。怨み。死の恐怖。

 纏めるならば


『死にたくない』

 

 それはつまり、ここにいたい。現世に。国に、家に、この星に。

 それらの思いは空へ昇る。

 そして結びつき、形を成し……。



 ……なぜ、私は今、こんなことを考えているのか。

 迫りくる隕石を前に、宇宙の始まりといい壮大な事を考えるのはやはり死の恐怖。現実逃避からだろうか。


『死にたくない』


 我々人類が散った後、その思念はどこへ行き、なにと混ざり合うのだろうか。

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