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三洲華大学クトゥルフ神話探偵部  作者: 向陽日向
第三章 地上の太陽と原初の魔王
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腹を括れってことかい

「三人組? さあ? 知らないわよ。ズッコケ? それともオトボケ? 私たちでちょうど三人ね? アマゴイ三人組なんてどうよぉ? アッハハハ」


「おい! 若い三人組を見なかったかって聞いているんだ! 答えろっ!」

「知らないわよ! 若い子三人組? いつもあんたらが連れ込んでいるじゃない。そんなに未練がましいならリストでも作ればいいわ。そんなにイイ子だったの? ひかる……ああ、えっと、光る原石的な?」


「そんなわけあるか! 教授の手を煩わす不届き者だ! コソコソ嗅ぎまわっている学生連中だよ。ここカルコサに潜伏している可能性が浮上したんだ」

「ふ、ふーん? 知らないわ。それ程の光る原石ならすぐに食べちゃうでしょうね」

「御託はいい! とにかく見なかったか!?」


「だぁ、かぁ、らぁ! 知るかボケエエぇ!」


 民七海の住処を抜け出した前内光生は朽ちた住居の陰から祈るような眼差しで民を見つめている。

 二人のハスター崇拝者に詰め寄られる民はなおも要領を得ないことを壊れたコピー機のように吐き出し続けている。結果的にそれが相手を呆れさせ、事実を覆い隠すのに一役買っているとはいえ危なっかしくて仕方ない。


 前内は危機感と安心感が同居する不思議な心地に包まれた。

 住処と大通りを繋ぐ直線の道を歩いているとき、誰かと言い争う民の声が聞こえた。何の疑いもなく通りに出ていたら一巻の終わりだっただろう。恐る恐る様子を窺ったことが結果として彼、さらに就寝中の丸瀬丸雄と月山ひかるの無事を保ったのだ。


 しかしそれは一時的なものに過ぎない。

 ついにカルコサに潜伏していることがバレたのだ。奴らが言った教授という者が全ての黒幕に違いない。まるで海外の有名探偵小説みたいだと、前内は他人事のように考える。それは一種の逃避行動だった。


 ――ここは彼女に頼るしかない。

 やり取りを続ける民に前内は無言のエールを送る。

 ここを突破されたら住処までは一本道――逃げるのも困難だ。前内だけならまだしも、就寝中の二人を起こさないで移動させるのは不可能に違いない。


 ――今頃はイアン=ホーかな。

 彼らを起こすわけにはいかない。

 起床は即ち【夢の国(ドリームランド)】からの逃亡――蜂蜜酒奪取の失敗を意味し、最悪この地に永久滞在することに繋がるからだ。


 二人は大変困惑しているだろう。目を見開いて悪態をつく丸瀬の表情が脳裏に浮かぶ。もしかしたら月山さんとのデートを楽しんでいるかもしれないけど。


 ――頼んだぜ、ニジュウ。

 前内に出来ることは何としてでも、二人を起こさないようにすることだけだ。

 蜂蜜酒奪取に集中してほしい――せめてそれだけでも伝えられれば……。


 ――なるほどね。

 前内は住処から持ってきた蛇のブレスレットを見つめる。

 オーバーリアクションを続ける民の真意が伝わってきた気がして、小さくほくそ笑む。


 ――イカれているよ、マジで。

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