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三洲華大学クトゥルフ神話探偵部  作者: 向陽日向
第三章 地上の太陽と原初の魔王
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冷気を切り裂くは

「あれ……」

 前内光生はカルコサの民七海の住処で目を覚ました。

 先程まで防寒着姿でレン高原を歩いていた筈だが、いつの間にかカルコサに帰還し普段着に戻っている。彼の隣では丸瀬丸雄と月山ひかるが深い眠りについていた。


「起きちゃったのか……くそっ、こんな時に」

 すぐに寝入りたいところだが完全に目が覚めてしまった。合流は不可能だと判断した前内は二人を起こさぬよう気を配り、そっと立ち上がる。

 そこで、住処の主の姿がないことに気付く。


「また散歩でも――」

 そこで前内は腹の辺りに違和感を覚えた。眠る前に食べたハリ湖の得体が知れない魚の味を思い出し、慌てて逆流した胃液を飲みこんだ。

 腹を抱えて蹲ったとき、食卓の横にブレスレットが落ちているのに気付いた。


「これって、確か民さんの……」

 それは蛇を模ったブレスレットだった。


  *


夢の国(ドリームランド)】北方の山脈を越えたクトゥグァはレン高原へ向かっている。

 派手に強奪したので直に追手がやってくるだろう。大切な蜂蜜酒を取り返すべく例の三人が姿を現すのは、容易に予想できる。


 周囲は極寒の空気に包まれているが、一万度以上の炎を従えたクトゥグァにとっては些事に等しい。

 蜂蜜酒をエサに三人をおびき寄せ、今度こそ骨の髄まで燃やし尽くす――クトゥグァは自らの失態への怒りから、さらに火力を増大するのだった。


 憤怒の炎を燃やすクトゥグァの眼下に、頂きに建つ修道院イアン=ホーが見える。

 この場所に憎きニャルラトテップに祈りを捧げる不届き者の大神官が住んでいることを思い出したクトゥグァは、燃え盛る炎の中でニヤリと笑みを浮かべた。


「全ては――我が同盟であり、【名状しがたきもの】ハスターのために」


 クトゥグァはゆっくりと下降を開始した。

 間もなくして修道院から大きな火柱が上がり、天に広がる分厚い灰色の雲を貫いた。

 その光景を目撃した一人の少年がいた。


「…………アァ」

 立ち昇る火柱を唖然として見つめる少年の頭には、二本の小さな角があった。

 やがてレン高原に獣のような雄叫びが響き、少年はすぐにその場を後にした。

 縄張りを乱された少年の()が、黙っているわけがないからだ。

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