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三洲華大学クトゥルフ神話探偵部  作者: 向陽日向
第三章 地上の太陽と原初の魔王
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既に旅人

 時刻は十五時二十分。歴史文化会館での実習を終え、月山さんと合流して早速【ンガイの森】までやってきた。


 平日の昼間にもかかわらず多くの観光客の姿があり、実習生の姿もちらほらある。

 広さは東京ドーム二個分ほどで、面積の大半は木々が占めている。


 受付を済ませ、早速森へ足を踏み入れる。気分は神話世界に迷い込んだ旅人だ。

 鬱蒼と茂る木々の間から差し込む日差しが斑点模様となって地面に降り注いでいる。風に揺れる葉っぱの音が邪神のため息のように聞こえた。これでパネル説明があったら最高なのにな、と思っていたとき唐突に前内講義が始まった。


「神話世界ではクトゥグァに焼き尽くされた幻の森なんだよね、ここ」

「クトゥグァ?」

 少し涼しくなってきたのもあって、ジャケットを羽織った月山さんが首を傾げる。

 クトゥグァとはうお座の一等星に住む炎の神で、旧支配者(グレートオールドワン)の一員だ。


「しかもあのハスターと同盟関係なんだよね」

「ちょっと! もうその名は勘弁!」

 イタクァの次はクトゥグァ――笑えない冗談だ。ニャルラトテップにとってクトゥグァは天敵なので、牙を剝かれたらひとたまりもないだろう。


 神話世界を解説したパネルはないが、花や大木の解説はそこかしこにあるので、退屈せずに歩を進めることが出来る。時折聞こえる鳥の鳴き声も癒し効果抜群だ。

 しばらく前内の解説を聞き流しながら進んでいたせいで、いつの間にか周囲が静まり返っていることに気が付かなかった。


 先程まで聞こえていた家族連れの声も羨ましいカップルのやり取りも消えていた。まるで閉園時間を過ぎて取り残されてしまったかのようだ。

「さっきから静かね。もしかして迷子とか?」

 慌てつつある月山さんに冷静な声で答える前内。


「迷うようなコースじゃなかったはずだけど」

 コースの所々に設置されていた全体図の案内も消えている。

 鬱蒼と茂る木々のざわめきが一層強くなり、不気味な余韻が立ち込めている。


「……あっはは。見なよ二人とも。ご対面の準備は出来ているかな?」

 青ざめた表情の前内が薄ら笑いを浮かべる。それはまるで狂気に取りつかれた探索者そのものだった。

 前内の視線を追うと、背の高い木々に囲まれるようにして古びた小屋が佇んでいた。

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