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三洲華大学クトゥルフ神話探偵部  作者: 向陽日向
第三章 地上の太陽と原初の魔王
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ンガイの森

 フライトを終え、R県N市国際空港入口を出ると、異国の空気に包まれた気がした。


 十月下旬のN県は肌寒く上着が欠かせなかったが、こちらは真逆で、しばらく過ごすうちに荷物になりそうな暖かさだ。日差しもあるので体感としてはかなり暑い。いつものジーパンを穿いた前内は額に汗を浮かべ、早速腕まくりをした。


「【ンガイの森】はと……」

 すぐにスマホで向かうべき聖地の場所を確認する。

 フライト中もその話題で持ちきりだった。単位取得もタスクの一つなのだが、奴にとっては眼中にないらしい。奴は自慢げに『下調べは済んでいる。なんなら今すぐレポート書けるよ』との力強いセリフを言っていたので、いざとなったら最終手段として利用させてもらおう。


 思い切り背伸びした月山さんは白い半袖Tシャツにデニムのパンツという恰好だった。お気に入りらしいシアトルマリナーズの帽子が今日も頭に乗っている。淡いピンク色のスニーカーはイタクァ事件後に青地さんと一緒に買いに行った新品らしい。


「自由時間になったら連絡するね!」

 月山さんは手を振り、実習班の女子メンバーと合流する。

 実習は数人のグループで行うことになっている。場所は歴史文化会館という県内でも最大規模の博物館だ。歴史的に価値が高い工芸品や美術品が数多く展示されている。中には世界大戦の激しさを伝える物品などもあり、戦争の悲惨さを伝える数少ない博物館の一つとなっている。


「丸瀬に前内! そろそろホテルに行くってよ」

 同じ班のメンバーに声をかけられ、ボストンバッグを持ち上げた。衣類は最小限にしたが代わりに書物が多くなり、結果としてかなり重たくなった。

 ちなみに前内の荷物は俺よりも少ない。衣類しか入っていないのではないか。


「それもあるけど、スペースの大半は枕が占めてる」

 クトゥルフ探偵は人一倍就寝に対しては繊細であるらしい。


  *


 空港から宿泊するホテルまでは徒歩十分程度で着いた。本来のチェックイン時刻より早いが、特別に許可をもらったとのことで学校側の根回しの良さに感心する。


 ランクは中の中、普通のホテルだ。部屋も特別不便はないが、特別良質というわけでもない。ベッドの上に荷物を置いて一息入れる。部屋は前内と一緒だ。


「実習開始って何時だっけ?」

 前内が小さく欠伸をする。下調べは完璧なくせに、しおりはスルーらしい。

 実習開始が十三時三十分だ。グループごとに行動し、テーマを決めてのレポートづくりが課せられ、本土に戻ったらペーパー試験も待ち構えている。


 現在時刻は十二時四十分。それまでに昼食もとらないといけない。何気にタイトなスケジュールだった。

「自由時間は十五時からだ」


 この時間を利用して国際森林園、通称【ンガイの森】を散策する予定になっている。森へは歴史文化会館から徒歩十五分ほどで着くらしい。

「ニャルラ様に会えればいいね」


 にやつく前内の気持ちもわかる。

 世界中に【ンガイの森】と呼称される森はあるので、宝くじが当たるような確率だが期待がこもる。幸い、この国でそう呼称されるのはここだけなので、違ったら諦めもつきやすいだろう。神話世界ではアメリカのウィスコンシン州にあることが明記されているので、現実の同州にある森を有力視する考えが多数だ。


「サインもらえればいいな」

 午後はさらに気温が上がるとのことなので、上着は置いていくことにした。

 前内に倣って腕まくりをして、実習に必要なものなどを入れた手提げ袋を持って部屋を後にした。

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