表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
三洲華大学クトゥルフ神話探偵部  作者: 向陽日向
第三章 地上の太陽と原初の魔王
28/56

ファイアーinファイアー

 丸瀬丸雄は燃え盛る炎を前に、あまりの熱波にシャツを脱ぎ捨てたい衝動に駆られた。


 場所はR県N市。彼らが通う三洲華大学があるN県よりも温暖な気候で、十月下旬の平均気温は二十度前後。普段なら暑いが、今の彼なら涼しいとすら感じるかもしれない。

 周囲一帯を炎に囲まれ、今やこの地の気温はさらに急上昇する一方なのだから。


「ニジュウ、あまり連呼しないでくれよ。本当に暑くなってきたじゃないか」

 身を寄せ合う前内光生は必死の形相で周囲を見渡すが、迫りくる業火の群れに突破口を見つけられないでいる。


「氷の次は炎だなんて……もう!」

 同じく肩が触れ合っている月山ひかるは玉のような汗を額に浮かべていた。流した涙のせいでアイシャドウが滲んでしまっている。


「次は雷かしら?」

「安心して。雷を使う邪神はいなかった……と思う」

「クトゥルフ探偵が答えを濁すなんて珍しいじゃん?」

「あくまで原典の話だよ。懐が広い神話体系だから物好きなクリエイターが創作していないとも限らないからね」

 雷かどうかは定かではないが、新たな存在が到来するかもしれない。


「まさか【ンガイの森】で焼死することになるなんてな」


 丸瀬らを取り囲む炎の群れは最後の仕上げとばかり、猛るように勢いを増す。

 迫りくる炎は一切の躊躇をみせず、()()()()()()()()()()()()()()勢いそのままに、ハスターに仇なす丸瀬らを食らわんとしている。あと十分もすれば生身の丸瀬らもニャルラトテップ同様、クトゥグァの炎に飲み込まれるだろう。


「なあニジュウ、こんなときの秘策とかあるんじゃないか?」

「あったらとっくに出しているぜ」


 丸瀬は最後の希望を自身の手提げ袋の中に求めた。

 R県N市へ一泊二日の実習に行くにあたり、神話世界の解説本などを荷物に加えていたのだ。なんといっても神話マニアにとっての聖地の一つ、ニャルラトテップの住処【ンガイの森】があるのだから。


 まさか本当に彼が存在し、しかも早々焼死してしまうとは思いもしなかったが。

 荷物の中に、一連の事件で入手した物品も含まれていた。


「――おい、ニジュウ、それ」


 その中の一つを見た前内が目を見開く。

 その真意を悟った丸瀬とひかるは同時に「マジ?」と呟いた。

 前内はさも当然のように頷く。


「でないと、今ここで僕らは消し炭だ」

 決意に満ちた表情のクトゥルフ探偵の背後で、燃え盛る炎が一際大きく揺らめいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ