短編編
初めて書く感じの短編になります
家にある、小さなランタンの火が、部屋を明るくしてくれる唯一の照明だ。夜の空は漆黒に包まれ、明かりを確保しなければ何も見えない。私がこの地に来てもう何年になるだろう。
最初は、暗くて不安な夜を過ごしたが、今ではコレも当たり前となり、不安はなかった。
「今夜は少し暑いわね……」
私はテーブルに置いてるランタンを手に取り、窓を開けに行った。窓を開けた外からは、少し熱を帯びた暖かい風が入ってきた。
「まぁ、窓を開けないよりはマシね」
私はそう思い、窓を開けたままテーブルに戻ろうとした時、微かにだが声みたいなのが、聞こえてきた。
「……っく……ひっ……」
「あら? 今泣き声みたいなのが聞こえたような……」
私は窓から顔を出し、瞳を閉じて、全神経を使い耳をすませた。そしたら、確かに小さい子供の泣き声が聞こえてきた。
「ねえ! そこに誰かいるの? ランタンの明かりが見えたら、返事して!」
そう言って私は、片手に持ったランタンを、できるだけ見やすくするために高く上げ、左右へユラユラと動かした。
「……ひっ……っく……」
「ダメか……私の声も届いてないみたいだし……」
私は、どうするか思考をめぐらせた。ランタンを持って、探しに行くとしても、こんな小さな明かりじゃ、見つけれる可能性も低いし……
そんな時、ある方法を思いついた。思いついたと言うよりは、考えないようにしてたが、正しいんだけどね。
「でも……これをしちゃうと……」
そう……この方法を使うと私は、約束を破ってしまい、罰を受けなくてはならなかった。どうするか考えてたら、外から未だ泣いている声が、耳に届いた。
「こ……よ……ママ……こわ……」
「っ!?」
私は、後の事を考えてるよりも、早く泣いてる子の傍に言ってあげなきゃと思い、ランタンをテーブルに置いて、フッと息を吹きかけランタンの火を消した。
私は、小さく息を吐き、背中に力を込めた。徐々に背中から輝く白金の翼が生えてきた。
「はぁはぁ、久々だとすごく疲れるわね」
私は更に力を込めると、白金の翼が眩い光を放ち始めた。
私はそのまま家を出て、漆黒の夜空へ飛び立った。
夜空へ飛び立った私は、暫くすると不気味な感覚に襲われてた。真っ直ぐ飛んでるつもりだけど、頭の中では右に飛んでる感覚や、左に飛んでる感覚がするからだ。そもそも本当に真っ直ぐ飛んでいるのかそれすら、怪しく感じてしまう。そう……私は、方向感覚が分からなくなっていた。
「もっと光らせないとダメね……」
私は思いっきり翼に力を込め、さらに翼を光らせた。さっきより翼を光らせたことにより、外の様子が少し分かるようになった。私はその場で止まり、瞳を閉じて声を必死に探した。
「ママ……パパ……怖いよ……」
「っ!? いた、あそこね!」
私は、声のする方を必死に見つめると、僅かに動く何かが見え、それを確認した私は、全速力で向かった。
近づくにつれ、徐々にハッキリと見えてきて、降り立った場所には、膝を抱え小さく蹲って泣いている小さな男の子が居た。
「はぁはぁ、大丈夫だよ。お姉ちゃんが助けてあげるからね♪」
私は、極力警戒されないように、優しく微笑み少し明るめな声で話しかけた。
男の子は、突然周りが眩しくなった事で目がくらみ、瞳をギュッと閉じ声を頼りに、私の方を見上げてきた。
「本当? 僕おうちに帰れるの?」
「ええ♪ 私に任せて♪ でもどうして、夜に明かりも無く外に出たの?」
「おうちに帰ってたら、持っていたランタンの火が消えちゃって……」
そう言って明るさに少し慣れ始めた男の子は、薄目を開けながら、握りしめてたランタンを見せてきた。
「なるほどね。なら周りが少し見えるようになったら、1人でおうちまで帰れるかな?」
「うん……明るかったら帰れるよ? でも……」
そう言って俯きながらチラッとランタンを見てた。どうせ私はもう、罰を受けるのが決まってるし、良いかな。
「大丈夫だよ♪ ランタンが無くても明るくしてあげるから」
「そんなことできるの?」
「お姉さんに任せなさい♪ ちょっと離れるけど大丈夫かな?」
「うん!お姉ちゃん明るいから、離れてもわかるから!」
「偉いね♪ 少しだけだから待っててね」
そう言って私は、真っ直ぐ上に飛び上がった。全速力で上がっていくと、徐々に寒さと息苦しさが私を襲った。寒さで震える体を必死に耐え、息がしにくくて顔を歪ませながらも、私は必死に上り続けた。
もう限界と思える所まで上った私は、体に残ってる半分の力を翼に込め、思いっきり翼を光らせた。
力を込めすぎた翼は激しく痛みだし、まるでバラバラになってく様な痛みが私を襲った。それでも力を緩めることなく光らせ続けた。
私は残りの半分の力をほぼ使い、丸い球体を作り出した。
そして、その球体に光を放つ翼の羽を殆ど閉じ込め、その場に浮かばせた。
羽をほぼ失った翼では、その場に浮いてる事ができず、私は徐々に下がっていった。
それでも浮かばせてる球体は、眩しい光を放ちその場にとどまってた。
「私が何もしなくても、暫くは光り続けてくれると、いいんだけどな」
そんな事を口に出しながら、私は男の子の元へ戻って行った。
男の子の元へ戻った私は、もう立ってるのもキツイほどフラフラになっていた。それでも、男の子の前では必死に元気を装った。
「コレで1人で帰れるかな?」
「うん、お姉ちゃんありがとう!まるで女神様みたい!」
「ふふっ♪ありがとう。 それじゃ気をつけて帰ってね」
「わかった。本当にありがとう!バイバイお姉ちゃん」
そう言って男の子は家に向かって走って行った。
私はまるで岩になったみたいに、重くて動かない身体を必死に動かし、フラフラしながら家に帰った。
家に帰った私は、椅子に座り込んだ。力を使い過ぎただけじゃ無く、羽も殆ど失った私は、もう駄目だと悟っていた。
約束を破り、罰を受けずにこのまま眠りにつく事に、申し訳なさを感じながらも、私は静かにその時が来るのを待った。
「無事に男の子が、家に帰れてたらいいんだけどね」
最後の最後まで男の子の心配をしていた時、家の扉が開き外から小さな翼が生えた1人の天使が入ってきた。
「女神様、神様との約束を破ったので、罰を伝えに来ました」
「ふふっ♪このまま眠らせてはくれないみたいね♪」
私は力なく微笑みながらも言った。
「それでは、罰を言います。女神様を、先程自ら創った球体に幽閉させていただきます」
「え?」
私は、天使の言ってる意味が理解できなかった。だってその罰は、私が今心残りな事が、解決できる罰だったからだ。
「なにか不服でもありますか?」
「いえ、寧ろ喜んでお受けします」
私がそう言うと、天使は優しく私に微笑みを向けてきた。そして、更に私が驚く事を言ってきた。
「尚、疑う訳ではありませんが、女神様を監視させていただきます。もちろん、女神様と同じ状態で」
「同じ状態?」
私が質問しても、天使は答えることは無く、小さな純白の翼を光らせた。
「まっ、まさか!?」
「それでは私達は、先に配置場所に行きますので、残りわずかの時を過ごされてから来てください」
そう言った天使は、家を出て夜空に飛び上がって行った。私はそれをただ唖然としながら窓から見えた天使を見ていた。
天使が飛び立ったあと、幾千の光が一斉に飛び上がったのが見えた。
私は驚き動かない身体を必死に動かし、窓にしがみつく形でたどり着き、夜空を見上げ私は言葉を失った。
漆黒の夜空だったそこには、私が作った大きな光と、無数に散りばめられた小さな光があり、その光達が、真っ暗な世界を照らしていたからだ。
私はその場に座り込み、窓から見える光に感動し、涙を流しながら静かに瞳を閉じた。
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「ねぇママ!それで女神様と天使様はどうなったの?」
母の膝の上に座る小さな女の子は、母の顔を見上げるながら聞いてきた。
「人々はいきなり明るくなった事に驚いてたけど、あの時助けた男の子が、女神様の事を話したら皆、感謝を込めて名前をつけてあげたのよ」
母は、そう言いながら女の子の頬を優しく撫でていた。女の子は擽ったそうにしながらも、笑みを浮かべながら話てきた。
「それなら知ってる!お月様とお星様だよね!」
「その通りよ偉いわね♪ それじゃ、その後神様がつけた名前はわかるかな?」
母が質問をすると、女の子はうーんうーんと顎に手を当て、考えていたが、答えが出てこないみたいだった。
「わかんない! ママ教えて!」
「罰を与えた神様達は、人々から感謝されてる天使様と女神様に褒美を与えたの。天使様達には、人々が付けたお星様の他にそれぞれに名前を……例えるなら、ジュピターとかマーズとかね♪ そして女神様には……」
「もう!勿体ぶらないで教えて」
プクッと頬を膨らませ、少し拗ねた感じで言ってきた。
母はクスッと笑い、頭を撫でながら静かに教えてあげた。
「女神様は、月の女神セレーネーって名前を貰ったのよ」
「素敵な名前だね♪」
そう言って女の子は、母の膝から降り窓から見える夜空を見上げた。女の子が見上げた夜空は、今日も人々を優しく微笑むように光り輝いてた。
お楽しみいただけましたでしょうか?
次は詩的に纏めたヤツになります!
是非感想と評価よろしくお願いします!!
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なんてこともして貰えたら、今後のモチベーションにもなりとても喜びます!