リセッーーート
次のシリーズの為にクソゲーネタを寝かしておこうかと思います。
ブクマと評価ありがとうございます
クソゲーに対する恨み辛みばかりを吐き出している拙作に有難き幸せにございます
ユメカとカフェマジワートの前で遭遇してから色々と疑問が浮かび、その事を自分なりに検証し仮説をたててみた。
その①ユメカは何故デビュタント前まで過去に戻したのか?
その②ユメカは何故マジワートで働こうとしていたのか?
その③オーナーに激高していたが、気に入らないなら何故“リセット”を使わないのか?
特にその③のリセットがおかしいと思うんだよね。一番最初のリセットは、ユメカが叫んだらたまたま発動した?みたいな雰囲気だったし、ニ回目なんかはザッティルーテ殿下から逃げる様にすぐにリセットかけてたし…“リセット”自体は簡単に出来るんじゃないかと踏んでいるんだけど…もっと複雑な法則…発動条件とかあるのかな?
分からん……
もしかしたらデビュタントでユメカと話す機会があるかもだし、もうリセットしたってシナリオはザッティルーテ殿下が潰す気満々だから諦めな…と言ってやろうと思う。
だってね、サザンス男爵の身辺を諜報部に探らせた後に
「男爵はおかしい所は無いな…もっと叩けば出て来るかな?」
なんて怖い事言ってたんだもん、ユメカも早くザッティルーテ殿下(国家権力)にスライディング土下座しておいたほうがいいと思うんだよ
そうして色々な思惑の渦巻く中、とうとうやって来ました、ちびっ子からの脱却日!
待ちに待ったデビュタントの夜会だよ…長かった、この“愛と星のマジワート”の世界に入ってから通算二度目のデビュタントだね。
早朝からナリカに叩き起こされて、全身に香油や保湿クリームや薬草?を揉み込まれた。私は漬物じゃねーぞ。そうして全身を美肌コーティングした私はザッティルーテ殿下に贈って頂いたドレスに着替えて玄関ホールに降りて行った。
「フィリ」
ザッティルーテ殿下は既に我が家に到着していて私を待っていた。
ふわああ…ザッティルーテ殿下カッコイイ!うちの推し最高!!
私が見惚れたままザッティルーテ殿下に近付いて行くと、ザッティルーテ殿下は私の前に跪いて
「愛しの人…今日の貴女は世界一美しい」
と、私の手を取ると口付けを落とした、今日やっとデビュタント予定のまだまだ子供のザッティルーテ殿下。子供なのに大人感を出し過ぎじゃないかな。周りにいるメイドや侍従達が不審がらずに、妙に生温かい眼差しを向けてくれるのが、恥ずかしい。
「さあ参りましょうっ今すぐ参りましょう!」
恥ずかしさを誤魔化そうと大きな声を上げてザッティルーテ殿下を促した。
「今、恥ずかしいんだろう?」
「そうよっ皆の居る前であんなことする必要ある?」
ニヤニヤと笑うザッティルーテ殿下。
プライベートでは砕けた物言いをお互いにするようになった。この数年で私も殿下と親しくなったものよね~
王家の馬車に乗り込むとメイドのナリカとザッティルーテ殿下付きメイドのエマが一緒に馬車に乗り込んで来た。婚約者同士とはいえ、未婚の若者を車内でふたりきりには出来ないそうだ。
貴族って面倒くさいね
デビュタントが始まるまでは、王城の控えの間に待機するらしい。案内されて控えの間に入ると、既に第二王子殿下のソシャルーデ殿下とビュイルワンテ殿下と婚約者のミレンダが居て、入って来た私達に笑顔を向けた。
「フィリ~ドレス素敵じゃない~これドレープどうなってるの?」
「ミリィのシフォンドレスも素敵だね」
ミレンダが笑顔で私に近付いて来た。ビュイルワンテ殿下の婚約者のミレンダともこの通り、すっかり打ち解けて今じゃ大親友なのだ。
ゲームをプレイしている時は画面では見えない日常はどうなっているのか…なんて考えもしなかったけれど、意外とビュイルワンテ殿下とザッティルーテ殿下も仲が良くて、病弱で寝込みがちな一番上のお兄様でもあるソシャルーデ殿下をとても大事にされている。
「今日は調子がいいけど、ダンスは無理かな…いつも二人に任せっぱなしで悪いね…」
第二王子のソシャルーデ殿下は…女性顔負けの線の細さの、とてもとても美しい殿下なのだ。その美しい殿下の周りにビュイルワンテ殿下とザッティルーテ殿下が侍っている今の状況。ある意味、耽美で倒錯的だ…
「兄上、大丈夫ですよ。俺動くこと好きだし」
「そうですよ、兄上は無理せずに…」
ザッティルーテ殿下とビュイルワンテ殿下は上の兄を真綿で包むように大事にしている…うん。そこに私もミレンダも実は入っていけないのだ。否…遠くから見るようにしている…とも言う。
つまり…
ミレンダの顔を見ると、眩しいものを見るような目をして兄弟を見ている。多分、私と同じ推しを愛でるような心境だと思う。
あの三兄弟が絡んでいる姿(断じて如何わしいことではない)は私達、下々の者には尊き兄弟愛に見えますよね。これはゲームをしていただけでは分からなかった内側の世界だ。
この兄弟愛を目の当たりに出来ただけでも、アイマジガチ勢にはたまらんご褒美だよ。
「夜会の会場のご準備が整いました」
夜会の時間が来たようだ。侍従の方が声をかけてこられたので、耽美なお兄様は控えの間で待機…ということで私達は夜会会場に向かう事になった。
「ミレンダ嬢、フィリデリア嬢」
ソシャルーデ殿下が控えの間を出ようとした、私とミレンダを呼ばれたので振り向くと、ソシャルーデ殿下はそれはそれは美しい微笑みを浮かべていた。
「二人とも女神の化身のように綺麗だね。ドレスとても似合っているよ、楽しんで来て」
「殿下っ!」
「きゃああ!」
ミレンダと私は歓喜の悲鳴を上げて、思わずソシャルーデ殿下に駆け寄ってしまった。ソシャルーデ殿下はいきなり腕の中に飛び込んできた私達に笑顔を崩さずに
「アハハ…ビィーとザックの女神はとても元気だね」
そう言って私とミレンダの耳元で色っぽく囁かれた。それわざとでしょ?わざとですよね?私達がきゃあきゃあ言うのが分ってて言ってますよね?
私とミレンダはある意味、自分の婚約者に褒められた時よりテンション高く、推しの言葉尊い!という晴々とした顔をして夜会会場に入った。
夜会の会場入り口は人が多い…
入口で男女ペアで列を作って並んでいるのはデビュタントの方々のようだ。私達、王族関係者は一番最後になるだろう。しんがりに並んだ。
「兄上に大丈夫…とは言ったけど、正直怠いよな~フィリと踊った後、どこかに隠れたい」
ザッティルーテ殿下はすでに疲れた様な顔をしながら私に腕を差し出したので、その腕に手をかけてザッティルーテ殿下の体を引き寄せると、殿下の耳元に顔を寄せた。
「デビュタントの令嬢は王族方と踊れるのをずっと待ってらしたのよ?皆様、最初で最後くらいの気合いが入ってるんだから頑張って!」
ザッティルーテ殿下は口を尖らせている。
「そんなに言うならフィリデリアが代わりに踊ってくれ」
「無茶言わないでよ」
軽口を叩き合いながら順番を待っていた時に…誰かと目が合った………ユメカだ!
ユメカは私を見てニヤリと笑った、まさかっ!?
「まっ……」
「リセッーート!」
…
……
………
私は目を開ける前に、今までの“リセット”現象の類似点を考えていた。
リセットが起こった場所は…王城の中庭、トトメーラ学園の月組の教室、そして舞踏会会場…バラバラだ。時間に関しては、お昼過ぎ、朝の通学時間帯、そして夜会の時間…時間は違う。
ではリセットが起こった時にユメカの側に誰が居た?
閉じていた瞼を開けて周りを見た。
私かザッティルーテ殿下が?
間違いない…このゲームの中でのフィリデリアが基点となっている気がする。ザッティルーテ殿下は初めてのリセットの時に、私の体に触れていたから巻き込まれた?
そう…私がいないとユメカは“リセット”が出来ない…これにも説明がつく。通算3回目の今回は、子供の時の過去に戻って来たけれど、私とユメカは今まで接触する機会が無かったはずだ。
公爵令嬢と男爵令嬢としての生活圏が全然違うし、私自身が常にザッティルーテ殿下と行動を共にしていたから、ほぼ王城と公爵家の往復のみで…偶然にカフェマジワートで会ったのは、お忍びデートをしていて偶々だったし、ユメカが私達の存在に気が付いていなかったから“リセット”が起こらなかったのだと思う。
そしてデビュタントの夜会会場で私、もしくはザッティルーテ殿下と会う機会を待っていた?
これだな、うん。これしか考えられない。
私は自分の周りを見た。私は今、馬車の中だ…そして自分の服装を見て溜め息が漏れた。
「もう…なんの夜会なの?いつこれ?」
私は見たことのない水色のふんわりとパニエが広がった可愛いドレスを着ていたのだ。
ああ…もう現状を確認するには決め手に欠けるよ~何か目印になるもの…と、耳を触った時にイヤリングの存在に気が付いた。
そして首元にネックレスもつけていることに気が付いた。慌てて馬車の窓に映る自分の姿を見た。
「コバルトブルー色のイヤリングとネックレス…これ、好感度が最高値に達した時に攻略キャラから贈ってもらえる…」
イヤリングとネックレスの色は間違いなくコバルトブルーだった。
どういうことなの…茫然としている間に馬車はトトメーラ学園の前に着いた。
トトメーラ学園!?
そして停まった瞬間、馬車の扉が乱暴に開き誰かが乗り込んできた。その人は…
「フィリ……憶えているか?」
「…っ…おぼえていま…す」
18才のザッティルーテ殿下が微笑んでいた。私が手を伸ばすより先に、ザッティルーテ殿下に抱き寄せられてきつく抱き締められた。
「フィリ…フィリ…良かった…」
「…っく…はい、はい…」
ザッティルーテ殿下がまた一緒に居てくれて良かった…涙が溢れて止まらない。泣き出した私の頬に唇にザッティルーテ殿下の唇が触れる。
「大丈夫だ…俺が居る。それにこの過去は…どうやら最後に戻った過去の延長線上の時代のようなんだ」
ザッティルーテ殿下の言葉に理解が追い付かない。延長線上?
ザッティルーテ殿下にエスコートをされながら馬車から降りた。卒業式の会場に向かいながらザッティルーテ殿下が説明してくれた。
「俺達は最後に10才の時まで戻っていたのを憶えているか?」
「はい…最後は12才のデビュタントの夜会会場で…」
ザッティルーテ殿下は頷いた。
「そう…そしてつい先程、気が付くと王城に居た。俺は目を開けて、ビィ兄上がすぐ横に居たので、兄上に卒業パーティーに贈ったドレスはどんな色にされましたか?と聞いたんだ」
「色…?」
「そう…銀と薄紫色のドレスなら、ビィ兄上と俺達がユメカと共にフィリを罵っていたあの過去でフィリが着ていたドレスだ。それ以外の色なら俺の知っている卒業パーティーじゃない可能性があるからな」
すごっ…何がすごいって卒業パーティーで私が何色のドレスを着ていたのか憶えてるの?
「ビィ兄上は笑顔でこう言った。ミリィに私の色をつけて欲しくて、翡翠色のドレスにしたよ…と」
ミリィ!?ミレンダなの!ああ、ああ……思わず手で顔を覆った。
ザッティルーテ殿下は私の肩を何度も擦ってくれた。
「そう…そうだよ、卒業パーティーの段階でビィ兄上とミレンダ嬢は婚約している状態なんだ。だからユメカが兄上の側にいることは無い…フィリが誹りを受けることはないんだ」
「はい…はい…」
私はザッティルーテ殿下に支えられながら、卒業式の会場に入った。
全く先の読めない新たなイベントに立ち向かう為に…
誤字脱字多くてすみません、クソゲーは誤字感知能力も奪い去るのかっ!
(注:浦の被害妄想です、念のため)