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過去の思い出

既に倒産して今は無いゲーム製作会社さんで、その当時クソゲーハンター界を賑わせた存在のそのシリーズ…久々に思い出してソフトを起動したら……スチル回収率98%という表示がセーブデータに輝いていました。すっかり忘れてた……未回収スチルが分からなくて攻略詰んでしまっていたんだ。コンプリートしたらご褒美スチルでも見れるのでしょうか?恨み辛みを思い出してイライラしてきたので、ソッとソフトを本棚に戻しました。

クソゲーハンターの皆様宜しくお願いします

「仕方ないな…」


ザッティルーテ殿下が何か術式を唱えて、ナビアント様に放った。


術がナビアント様の体を覆っているのが見える。あれは…


「捕縛魔法!」


「一般人は使用禁止だぞ!」


ナビアント様は捕縛されているのに騒がす、ほぼ無抵抗だった。そして恐ろしいことにヘラヘラと笑っていた。


「これは“聖なる祈り”か?」


ビュイルワンテ殿下がザッティルーテ殿下に聞いている。ザッティルーテ殿下は頷きながら、私を見たので私は頷き返した。


「カフェのオーナーと似た様な症状かもしれない、魔術師団の治療術師を呼ぼう」


それからは魔術師団の団員や軍の方々までが公爵家まで来て、大騒ぎになった。私とミランダは中庭のガゼボに避難していた。


「特殊な魅了魔法なんですってね?」


ミランダは様子のおかしいナビアント様の姿を思い出したのか身震いをしていた。


「そうね、魅了魔法と従属魔法の強力なものだと聞いたわ…私が見た方は、その術者に妄信していてその術者の言う事しか聞き入れなくなっていたわね」


過去のビュイルワンテ殿下やザッティルーテ殿下を思い出しながら説明した。ミレンダは説明を聞きながら何度も体を擦っている。


「でも、その術を使って何が楽しいのかしらね?」


「え?」


ミレンダの言葉に、聞き返すとミレンダは優雅にお茶を飲みながら小首を傾げている。


「だって魔術で従っているだけでしょう?術の効果が切れたらそれまでじゃない。それにあんな薄気味の悪い笑顔しか浮かべられなくなるなら…そんな術で好きな男性を振り向かせたって虚しいだけだわ」


ミレンダは…その術者が女性だと断言しているみたいだ。もしかしたらビュイルワンテ殿下に何か聞いているのかもしれないけど…そうね、確かにそうだね。


「そんなまやかしの恋情じゃ…虚しいだけよね」


ミレンダと、うんうんと頷き合っていると中庭を横切って数人の軍人がこちらに向かって来るのが見えた。何か用事かな?と思って見ていると、建物の中からビュイルワンテ殿下とザッティルーテ殿下の二人が出て来るのも見えた。


ザッティルーテ殿下は別方向から歩いて来る数人の軍人を見て、急に走り出した。ビュイルワンテ殿下も後を追っている。


すると軍人の中から小柄な軍人が飛び出して来た。あっ軍服を着ているが間違いない!?


「ユメカ!?」


私は咄嗟にミレンダの体を抱き抱えて庇った。しかしそうじゃなかった…私はうっかりしていたのだ。


「リセーーーーーット!!」


ユメカの体が発光し、しまった!と思った時は眩しさに包まれていた。


そうだ……ユメカはナイフを振り回したり、外傷を負わせるのが目的じゃないんだった。


私は一目散に走って逃げてユメカから距離を取らねばならなかったんだ…人間って咄嗟の判断が出来ないものなんだね…


私はゆっくりと目を開けた。


やってくれた……私は目の前でほくそ笑むユメカと私を真っ直ぐに見詰めているビュイルワンテ殿下を見た。


私の着ているドレスは銀と薄紫色のドレスだ…そう、ゲームの愛と星のマジワートの断罪イベントの当日と同じ衣装だ。


ユメカめ…ユメカはにんまりと笑ってビュイルワンテ殿下の横に立っている。


ここは卒業式のパーティーの()()瞬間だ。絶望的だ…この場面に戻されたらゲームのシナリオ通りに進んでいるから…ビュイルワンテ殿下はまた私を断罪するはず…


その時、私の前に黒っぽい服装の誰かが立ち塞がった。ザッティルーテ殿下だっ!!


「兄上っ憶えてるか!?」


「!」


まさか…!?


私の体はザッティルーテ殿下に抱き抱えられて…慌ててビュイルワンテ殿下を見ると、側にいたユメカの腕を取って捩じ上げていた。


「このっ…王族を謀りおって!」


ユメカは驚愕の表情を浮かべていた。勿論、私も驚いてビュイルワンテ殿下を見詰めていた。


「お…憶えているの?」


ビュイルワンテ殿下は私の方を向くと、ニヤリと笑い


「ミリィ!」


と、ミレンダの愛称を呼んだ。まさかミレンダもっ!?


私達を唖然とした表情で見ているトトメーラ学園生の人垣の中から、萌黄色のドレスを着たミレンダが泣きながら飛び出して来た。


「ビィー…フィリィィ…」


ミレンダは私に駆け寄って抱き付いて来た。そこはビュイルワンテ殿下に抱き付いてあげて欲しかったけど、まあしゃーない。


しかしどういうことだ?私も唖然としているけれど、ユメカも口をあんぐりと開けてビュイルワンテ殿下を見ている。


ユメカもこの事態を想定していなかったようだ。


「お前の魔術はもう効かない!諦めるんだな!」


ザッティルーテ殿下の叫び声に、ユメカは悲鳴を上げて私の方を見た。ユメカの体が発光し始めた!?


「マズイ!」


「兄上っ!ユメカの口を塞いでっ…!」


ザッティルーテ殿下がユメカに向かって飛び込んでいった。


「リセ…ッ!?」


ユメカの発光と叫び声と…そして眩しさに、私も何か叫んでいた記憶がある。


そしてパッと目を開けたら見知らぬ場所だった……ここどこだ?


周りを見回した。新しいパターンだ…外だ、森?いや公園かな?ベンチが見える。取り敢えず座ろうかな?


ベンチに向かってトテトテと歩き出して…気が付いた。


私の体すごい縮み具合だ…つまり、ものすごいちびっ子ボディになっていた。


「これは……むぅ、幼稚園児くらいかな?」


私の頭、重いのかな?バランスが取れないよ?ヨタつきながら何とかベンチに辿り着き、座ってから目の前の建物を見た。


う〜ん…なんの建物だろう?子供の時の記憶を探る…しかし日差しがきついな、夏かな?夏?


自分の着ているドレスを見た。ノースリーブのワンピースだ。


「フィリ〜暑いからもう戻りなさい〜」


この声……!


「おばあちゃま!」


7才の時に亡くなった祖母が、日傘をさして私に手を振っていた。その隣にはお嫁に行ったジョアンナお姉様がいる!?お姉様若いっ!


私はベンチから飛び降りると祖母に向って駆け出した。おばあちゃまが生きてる…


走り寄り祖母に抱きつくと、祖母の柔らかい手が私を抱き締めてくれた。


「あらあら?どうしたの?」


そうだった……この夏がおばあちゃまと過ごした最後の夏だった。おばあちゃまは今年の冬に…


「おばあちゃま、大好きよ」


「私もフィリが大好きよ」


おばあちゃまはジョアンナお姉様と顔を見合わせて目を丸くした後、また抱き締めてくれた。おばあちゃまに大好きが言えた…


ユメカの奴…めちゃくちゃ余計なリセット(こと)をしてくるくせに、こうやってたまに良い仕事を(リセット)してくる。


私はラデンリング公爵家の離れに建つ、祖母の屋敷の裏庭に“リセット”されていた。


私はその夏の間、ずっと祖母の側に付いて回り甘えまくった。


「フィリが急に子供になっちゃったな~」


フォルディスお兄様(まだプニプニ、可愛い)がそう言いながら私を弄ってくるけど、恥ずかしくないよ!祖母にもう会えないと思っていたから尚の事嬉しくて切なくて…でもやっぱり会えてよかったもん。この勢いで私が産まれる前に亡くなった祖父にも会いたいな~とか思ったりもしていた私の所に…一通の手紙が届けられた。


「ビュイルワンテ殿下とザッティルーテ殿下の連名!」


公爵家の執事が王家印の封書を持って来た時、運悪く?両親も祖母も姉(12才)兄(8才)も妹(5才)が居間に勢揃いしていた。


大興奮の家族に見守られながら、手紙を開けてみた。変なことを書いてたらどうしよう…


『一度王都に来られたし ミレンダも呼んでいる』


これだけ?いや、これだけでもう分かった。皆、憶えているんだね?


殿下方にご招待を受けたので王都に行きたいと言うと、家族はソワソワし出して結局、全員で王都に向かうことになった。こんなこと初めてじゃない?


私は王都のタウンハウスに着くと、ザッティルーテ殿下に連絡をした。


すると…次の日早速、プニプニとモニュモニュな(語彙力低下中)の可愛いザッティルーテ殿下がやった来たのだ。


「フィリデリア!?可愛いな…」


「殿下もお小さくて…」


お互いにお互いの可愛い容姿に驚きつつ……


「憶えてるな?」


「勿論で御座います」


殿下は飛びつくような勢いで抱き付いてこられた。チビーな二人の熱い抱擁である。周りにいた大人達は度肝を抜かれたのか…固まっていた。そりゃそうだろう、初対面のはずなのに7才児が濃厚なラブシーン?を繰り広げているのだ、驚きもするって。


「殿下…あの…公爵家のご令嬢と面識が?」


侍従のおじ様が恐る恐るという感じで、抱き合う私達に声をかけてきた。


ザッティルーテ殿下は侍従のおじ様を見上げると叫んだ。


「フィリデリアは私の運命の人だ!」


ちょいおい!!と、ツッコミたいのをグッと我慢をした。何回もリセットを共にしているのはユメカのリセット連打のせいですので、運命とやらでは…と、言い訳したいけどザッティルーテ殿下の力の籠った強い眼差しを見たら何も言えない。


運命か…そんなことを言ったらゲームの中に入っている私の存在は何なのだ?と自分に問い掛けたくなる。あまり使いたくないけれど神様や、そういう何かの力が働いてこのゲームの何かを動かそうとしているとしか思えない。


原作クラッシャー…本来は悪い意味で言われている言葉だけど、私は敢えて、クラッシャーの名乗りをあげてやる。


ユメカは移植版のシナリオを楽しむつもりだったかもしれないが、私的にはこれはアプリゲームの“愛と星のマジワート”のつもりだ。


アプリのシナリオではユメカを苛めたとして、フィリデリアが断罪されて…ユメカは卒業パーティーで攻略キャラとダンスを踊って幸せに…本来はそこでエンディングを迎えて終わっているお話だ。


そこから先は主人公はお呼びじゃない…主人公をやりたいなら“リセット”に頼っていないで自分の力で踏ん張ってみなさいよ。


というような事をユメカに面と向かって言いたいけどな~面と向かったらリセット使って来るしなあ~マトモに話し合いに持っていけないもんね。


…ていうか、ユメカって最終目標は何だろう?…移植版のアイマジもハーレムルートってあるのかな?クソゲーだと判断していたので、攻略の詳細には目も耳も塞いでいたから、全然分からないな。


でもハーレムルートって言っても、もうすでにザッティルーテ殿下達がルートから外れちゃってるから、なりようがないしね。


あっ!!!


今重要且つ、今までスコンと忘れていたことを思い出したよ!


アプリゲームの追加配信の攻略キャラって…今、存在しているの?


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― 新着の感想 ―
[良い点] 続きが気になるところで終わりましたね。見ます
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