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よくある断罪イベント

よくあるゲーム内への転生ものです。序盤は暗めですが、徐々に明るくなる予定です。アプリのゲームが〇ソゲーだということではありませんので、ご理解ご了承下さいませ。


クソゲーはそっと噛み締めて味が出るくらいがちょうどいい。旨味も出さない、苦みや嫌味しか感じないクソゲーは、もはやガッカリゲーと胸糞ゲーの仲間入りだ(←持論です、念のため)


はいはい、全部マルっとお見通しだよ。


私は予定通りに行われようとしている学園の卒業式の断罪イベントの前に、欠伸をかみ殺していた。


ああ、怠い…別に台本通りに台詞言わなくていいからさ?


「よくもの…」


『よくものこのこと、この会場に顔を出せたな!お前が愛しのユメカを足蹴にし苛め、苦しめてきたのは全部分かっておるのだからな!』


私の前に立つ金髪碧眼の第一王子殿下のビュイルワンテ殿下の台詞を、マルっと先に叫んで差し上げた。


当然、ユメカ(多分中身は日本人)は私の正体にやっと気がついたのだろう、サッと顔色を変えた。


だから何度もっ何度もっ何度も!内密でお話があります…と声をかけただろうがっそれを悉く無視したのはお前だ!挙句にそれを殿下に、何度もフィリデリアに呼び出されて嫌味を言われていますの…とか言って湾曲して伝えて、殿下の煽りに使ったんだろうがっ!


それに私の記憶力を舐めんなよ?暗記だけは大得意で、この恋愛ゲーム“愛と星のマジワート”の台詞を全暗記するほどの、アイマジガチ勢を侮るなよ!


まあ、それはそれ…だ。私は“愛と星のマジワート”のファンだからこそ、攻略対象の皆に愛を注いできたのだよ。それは勿論この私、悪役令嬢の“フィリデリア=ラデンリング”も、愛すべき攻略キャラの1人だ。


フィリデリアはキャラデザでも、それはそれは眉目秀麗なキャラクターだった。正直、凡庸で二度見三度見してしまうほどの、平凡な容姿の主人公に比べて際立って美しかった。


ただ公爵令嬢として性格が苛烈と設定されていたからだろうか、彼女の台詞にはいちいち棘があった。


そして物語の終盤、この卒業記念パーティーで主人公を苛めている罪を問われて、逆ハー状態になっているユメカと攻略キャラ達に断罪されて、国外追放にされてしまうのだ。


しかも全攻略キャラルートで全く同じイベントが起こり、もれなく国外追放になるのだ。


ちょっとさ、全ルート同じイベントってもっと企画を練り直せ!シナリオ練り直せっ…と当時も思ったわ。攻略キャラはカッコイイんだけど、シナリオの詰めの甘さが…気に入らない、ええ…はっきり言っちゃうと気に入らない。


しかもゲームをしている時でも思わずツッコんだことがあるんだけど、殿下の信じる証言は全部ユメカの証言のみで、物的証拠は何も無いのに、いきなり断罪で国外追放を命じるんだよ?


まあ所詮ゲームだしね。シナリオに整合性を求めても仕方ないのかもしれないけど?でも気に入らない。


私は意識を目の前のビュイルワンテ殿下に向けた。


自分が言おうとしていた台詞を私に丸々全部言われてしまったビュイルワンテ殿下は、顔を真っ赤にすると、私を指差した。


「階だ…」


『階段でユメカを突き飛ばして落とし、泥水の入ったバケツをユメカに投げつけ、ユメカの体操服を引き裂き、ユメカが大切に育てていた学園の花壇も踏み荒らした!まさかそれすらも知らぬ存ぜぬで通すつもりじゃないだろうな!』


「…っ!」


またも先んじて、殿下の台詞を全部言って差し上げた。流石に私が殿下の言いたいことを全部知っているのはおかしいと思い始めたようで、殿下はゲームのシナリオには無い、問いかけを私にしてきた。


「どうして…私の言おうとしていることを知っている?」


「全部暗記しているからですわ。次の台詞を言いましょうか?『今日、この場で私はフィリデリア=ラデンリング公爵令嬢との婚約破棄を宣言し、ユメカ=サザンス男爵令嬢との婚約を発表する!フィリデリア=ラデンリングを国外追放の刑に処す!』でしょう?常識で考えて下さいませ、ビュイルワンテ殿下が刑事罰をこの場で処せる訳ないでしょう?まずは軍部に罪状を提出して司法判断を待たないと罪には問えませんよ?それに男爵家子女との婚約は今の段階では不可能ですわよ?殿下が伯爵家以上の高位貴族にユメカ様を養女にしてくれ!と、お願いして回ったとしてもまずは私の実家のラデンリング公爵家はお断り。ホーツジル公爵家もうちの親戚なのでお断り。ヴューカイザ侯爵家も私の実姉が嫁いでいるのでお断り。どうです?すでに高位貴族の三侯はお断りだと思いますよ?残りの公爵家と侯爵家と辺境伯と伯爵家はどうされるかは、興味がありますけど…兎に角、国外追放ですよね?了解でーす!」


そう言い捨てると、私は卒業記念パーティー会場から出て行こうとした。その私の前に立ち塞がる大きな影…


眼鏡の伯爵家次男のシースリア=クトルと…第三王子殿下のザッティルーテ殿下だ。


あああ、やっぱりザッティルーテはカッコイイな~アイマジの最推しメンなんだよなぁ〜でもコレは私の好きなザッティルーテではない。


私の好きな二次元のザッティルーテは紺色の髪にコバルトブルー色の瞳のびっくりするほどの肉体美を持つキラキラアイドルなんだもの。


私を虫けら見たいな目で見るこんな怖い人では断じて、ない。


「大人し…」


『大人しく国外追放を受け入れろ!最後までユメカを怯えさせるとは、とんだ悪女だな!』


眼鏡のシースリアの台詞も先んじて言ってやった。本当は、私がビュイルワンテ殿下に


「わたくしがそんなことをしたなんて、証拠はありますの!」


と言って食って掛かるシナリオがまだあるのだけど、私はシナリオに沿わない台詞を言って帰ろうとしたので、恐らくゲームの強制力でこんな頓珍漢な所で意味不明な台詞を言わざるを得ないのだろう。


キャラクターって大変ね。


私は眼鏡の隣の最推しメンを見た。ああ~カッコイイ!…だけど分かっている。


「ユメ…」


『ユメカの笑顔は私が守る!お前のような悪女は一生この罪を背負って生きるがいい!』


「…っ!」


これもまた、ザッティルーテより先に台詞を言ってあげた。本当に辛いわね~整合性がぐちゃぐちゃね?まあ私がぶち壊しているんだけど。


「先読み…そうか、君は先見の術が使えるのだな」


眼鏡が呟いた言葉に、ああそうか~と思わず頷いた。この“愛と星のマジワート”の世界には魔法がある。未来を見る魔法も確かあったかな?


「じゃあお前は先見で…この婚約破棄も知っていたのか?」


ザッティルーテに聞かれて、魔法では無いけど知っていたことには違いないかな?と思い頷いた。


「ええ、存じておりました」


私がそう言うと眼鏡がにじり寄ってきた。


「じゃあ何故、婚約破棄を避けようと思わなかったのですか?!分かっていたのでしょう?」


「婚約破棄は殿下に興味がありませんでしたから別に問題ありませんでした。それに苛め?とやらも私がやったと言われることが分かっておりましたので、敢えて()()()()()()()()()()()。ユメカ様をイジメないことで未来が変わるかな…という期待もありましたし」


「そんな言い訳?!現にユメカはお前に苛められたとっ…それはどう説明するんだ!」


ウザいな…三次元で会うとこんなウザキャラなの?私の最推しのザッティルーテって


「あなた方、こんなに必死になってもユメカ様はビュイルワンテ殿下と婚約されましたのよ?悲しくはありませんの?」


私が2人に聞くと、イケメン2人は唇を噛み締めて私を睨んだ。おいっ睨む方向間違ってるし?


「ユメカが苦しい時に私では助けにならなかったのだから、仕方ない」


めっ眼鏡?その台詞は…!?


「俺が望むのはユメカの幸せだ。ユメカが幸せならそれでいい…」


ちょちょっ!?ザッティルーテのその台詞は!


一瞬、2人のゲームのスチルイベントを思い出していたが、後ろからビュイルワンテ殿下とユメカが近付いて来る声がしたので、意識を戻し、眼鏡と最推しに急いで告げた。


「この卒業パーティーでユメカ様から皆と一緒に踊りたいとダンスに誘われます。ダンスを踊っている最中にお二人の今の言葉をそのまま、ユメカ様にお伝え下さいませ。ユメカ様は物凄く喜ばれて「大好きよずっと側にいてね」と言いますから、では~」


私は、その場から駆け出した。もたもたしていたら、ビュイルワンテ殿下とユメカに捕まってしまう。


■■□□ ◆ ■■□□ ◆ ■■□□


会場内はざわついていたが、卒業パーティーは続けられた。


そしてフィリデリア=ラデンリング公爵令嬢の言っていた通り、ユメカがダンスを皆と順番に踊りたい、と言ってきた。皆とは、ビュイルワンテ兄上と俺…シースリアと子爵家のナビアント、そして近衛騎士のガシュテイルだ。


俺はシースリアと思わず目を合わせて頷き合ってしまった。先程、フィリデリア嬢が言っていた言葉通りに、そのままの言葉を伝えることにしたのだ。


先読みの魔法の威力はどんなものなのだろうか。


俺のダンスの順番が来た。嬉しそうに俺の手を取るユメカ。いきなりだがあの言葉を使ってみた。


「俺が望むのはユメカの幸せだ、ユメカが幸せならそれでいい…」


俺がそう言うとユメカは小さく、きゃっと叫んだ後


「私はザッティルーテが大好きよ、ずっと側にいてね」


と、それはそれは嬉しそうに微笑んだ。フィリデリア=ラデンリング公爵令嬢の言った通りだった。


ダンスが終わりユメカは兄上と連れ立ってテラスに行ってしまった。俺はシースリアに近付いて聞いてみた。


「あの言葉…伝えてみたか?」


シースリアは顔を強張らせたまま頷いた。


「ユメカに伝えたら、私はシースリアが大好きよ、ずっと側にいてね…と言われました」


俺は驚愕した。シースリアと一語一句違わず同じ言葉をかけられたからだ。もしかして今まで俺達はお互いに、ユメカとの関係を確認したことはなかったが…


「シースリアはユメカからフィリデリア=ラデンリング公爵令嬢から苛められていると聞いたのか?」


「はい、確か…フィリデリア=ラデンリングから苛められている、シースリアなら絶対助けてくれるよね、でしたか…」


シースリアの記憶が確かならば、俺も同じ言葉をかけられたと記憶している。急いでユメカの為に集まった残りの2人に声をかけて改めて聞いてみた。


「はい、ダンスの時は私は大好きよ、ずっと側にいてね、と言われました。え?苛められていると聞いた時ですか?私なら絶対助けてくれるよね、あなただけは絶対助けてくれるよね…とも言われました」


「同じだ…」


シースリアが呟いている。まさしく俺も同じ言葉をかけられている。ユメカが発する言葉は人を変えても()()()()()()()使()()()()()


怖気立った。シースリアとナビアント、ガシュテイルとユメカとのどんな会話をしていたのか聞いていくと皆、同じ返答をされていた。


貴方が頼り、貴方なら助けてくれる、ずっと好きでいてね、私の事これからも大切にしてくれるよね…


「先見魔法…ラデンリング公爵令嬢はこれら全てを先見で知っていた、そして卒業パーティーでの婚約破棄も知っていた」


「私だったら、抗いますよ?知ってしまったなら先の未来を変えようとしますが…」


俺は駆け出した。フィリデリア=ラデンリング令嬢に先見魔法で何が見えたのか…全部聞かせて欲しい。




作品に罪は無いがアプリゲーの新規イベントに乗り遅れるとスチルが集まらない、クエストの残り時間が後30分とか…気付かなった自分に多いに凹む。よくあることです。

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[良い点] ヒロインがまるで未来を知っているかのような同じセリフを吐いたら怖がるところはリアルだと思いました
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