死の真実
伊波彩花は教師だ。年齢は25歳。そして美人だ。だれもが羨む美貌だ。きっと生徒からの人望も厚いのだろう。彼女に恋心を抱く生徒も少なくないだろう。だがそれは普通の学校であればの話だが。
彼女はある進学校に勤めている。教師数は彼女を含めて6人。この学校には生徒が存在しているが、教師達は1度も彼らの姿を見たことがない。学校に出勤し、自分の仕事をこなし、帰宅。その繰り返し。
この学校のシステムは異様だ。効率化を目指した結果だ。教師たちは個室で授業をする。その映像が、別教室の生徒達にオンラインで投影される。そこに人と人の繋がりは存在しない。おまけにこの学校の生徒は天才揃いだ。教師の教えることは瞬時に理解する。もちろん質問などは存在しない。画面越しに教師を生徒は視認できる。しかし、教師は生徒を視認できない。これがもう一つの異様な点だ。
だが、そんな教師たちには唯一、人と繋がる場が存在する。そこは職員室だ。そこで教師達はお互いに交流を深めることができる。伊波もそこでの繋がりを大切にしていた。一度拷問で命を落としている彼女にとってその空間は救いだった。