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見えない刺青  作者: ゆずさくら


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 カレンから借りた制服を着て学園に登校すると、真っ先に保健室に向かった。

 扉を開けると、中で佐倉が机に向かって何か書き物をしていた。

「おはようございます」

 佐倉が振り返ると、晶紀の手に握られたくまのぬいぐるみを見た。

「おはよう。なんだ、リボンをつけてくれたのか」

「ちょっとこれ(・・)に殺されそうになった。これが佐倉の言っていた『不吉なこと』なの?」

 晶紀が机の上にぬいぐるみを置くと、佐倉はすぐぬいぐるみを手に取って、リボンを外す。

「なんじゃと……」

 リボンの裏にかかれている呪文を読み、佐倉はぬいぐるみを胸にギュッと抱きしめる。

「あれだけ儂の霊力を注ぎ込んでおったのに…… いつごろ空っぽになったのじゃ」

 佐倉はぬいぐるみに何が起こったか理解しているようだった。

「結構早かったよ。時間は覚えていないけど、夜が明ける前だった」

「計算より早い。今日儂の手に戻ってこない場合に、その『霊力切れ』が起こる計算じゃったのに。お前の怪我の具合が相当酷かったのか、そもそもこのぬいぐるみの霊力蓄積性能が、お前に取っては不足しておるのか……」

 ぬいぐるみを掲げ、眺めるようにしてそう言ってから、ぬいぐるみにリボンをかけた。

「このぬいぐるみの霊力が尽き、公文屋の操る悪霊に利用された、という訳じゃな」

 晶紀はうなずく。

「おそらくね。三倉が助けてくれなかったら、死んでたかも」

 鞄から鈴の音が聞こえた。

「……わかった。これについては、何か別のものを考えておこう」

 机の上にぬいぐるみを置くと、椅子を回して晶紀を振り返った。

 つま先から頭の天辺まで、じっくりと観察するように見られた後、佐倉は言う。

「身体の方は…… よさそうじゃな」

「うん」

 晶紀はそう言った後、机に置いてある革製のベルトに気が付いた。

 これ、どこかで見たことがあるような……

「ああ、これか。ちょうどお前に渡そうと思っていたのじゃ」

「なに、これ?」

 いや、記憶がある…… どこかで、見た気が……

「これは神楽鈴のホルスターじゃ」

 佐倉は机の上のベルトを手に取ると立ち上がって、晶紀の背後に回り込んだ。スカートの上にぐるりと巻き付けると、晶紀の鞄を開け、神楽鈴を取り出す。

 晶紀は神楽鈴を手渡された。

「こう……」

 晶紀は佐倉の挙動をまねて、左腰にあるその皮で形作られた筒状の部分に神楽鈴を差し入れた。

「あっ!」

「そんなに喜んでもらえるとは思わなかった」

 晶紀は喜んだわけではない、と思っていた。逆になんでこんなダサい革製にしたのか、と考えていた。驚いたのは、そんな理由ではなかった。

「ち、違うんだ。これ、この皮のケース? これ、昨日夢で見たんだ」

「ケースではない。『ホルスター』じゃ。まあ、実はこのホルスターは何日も前に完成していいて、晶紀が学校で着けたままで居られるよう、学校側に申請しておいたものじゃ。じゃから、儂の霊力をため込んだぬいぐるみからこのホルスターの記憶が伝わったんじゃろう。珍しいことではあるが」

「そうか、だから知らないものを夢に見ることが出来たんだ」

 晶紀は腰を振ってみたり、歩くように、あるいは走るように足を動かしてみたりして、神楽鈴が落ちないか確認する。

「抜いてみろ」

 晶紀はホルスターのホックをはずし、神楽鈴を抜いて構えた。

「なんだか、ぎこちないのぉ。ま、これは慣れじゃな」

 佐倉はあごに指をあて、首をひねってそう言うと、

「これを使って、これからは学校内に限らず、神楽鈴を携帯するようにするんじゃぞ」

 と言った。

「はい」

 返事をすると、ホルスターに神楽鈴を戻した。

「じゃあ、行ってきます」

 晶紀はそう言うと、佐倉に手を振って保健室を後にした。




 教室に近づくと、何か中が騒がしかった。

 扉を開けると、クラスメイトが騒ぎながら、何かを取り囲んでいるようだった。

「やだ、気持ち悪い!」

「殺虫剤、用務のおじさんから殺虫剤もらってきて」

「虫殺したらだめだよ、窓から捨てようよ」

「そんなこと言うんだったら、じゃあ、あんたがこの虫拾ってよ」

 晶紀は知世を見つけ呼びかけた。

「晶紀さん。実はミナミさんの机に虫がいっぱい」

 知世が少し下がると、晶紀にも騒ぎの実態が見えた。

 石原美波が体中を這い上ってくる『うじ虫』を必死に払って落としている。

 晶紀はそれが『うじ虫』と思えたが、小さなものばかりではなく、大きなものや白以外のものもいた。それらは毛虫や芋虫と呼ぶべきようなもので『うじ虫』ではない。しかし、それらの無数の蠢く幼虫たちを一つ一つ判別するものは居なかった。

「気持ち……」

 晶紀はその先を言いかけて手で口を押えた。石原を虐めようとするものの狙いは、周りから『気持ち悪い』と言われることも含まれているに違いなかった。

「身体に殺虫剤掛けれないから、掃除機で吸い取ろう!」

(わたくし)用務のおじさんに連絡とれますわ」

 知世が素早くスマフォで連絡すると、用務のおじさんから『すぐいくから』と返事が返ってきた。

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