決闘開始
ゴロルカと訓練場の広場に向かうバーツ。
到着するなり、訓練場に居る兵士達に、
「ゴロルカ・スーンだ! 今からここを使うから場所を開けろ!」
と、偉そうに怒鳴った。
言われた兵士達は不満げであるが、伯爵家の跡取りであるゴロルカに逆らうわけにもいかず、渋々場所を開ける。
「誰か木刀を2本持ってこい!」
と、偉そうに命令する。
兵士の1人が走って取りに行った。
戻ってきた兵士が持つ2本の木刀を、ゴロルカは吟味してから、綺麗なほうを1本を選び、もう1本をバーツの方に向かって投げた。
バーツはそれをキャッチし、じっくりと確認する。
見てくれは悪いが、特に問題は無さそうである。
「ルールは先程言ったとおり! 逃げ回られると時間の無駄なので、制限時間は15分! もし逃げ回ったらお前の負けとする!」
と、ゴロルカが宣言する。
「お前が逃げ回るとどうなる? それでも俺の負けか?」
バーツが聞くと、
「私が逃げる事などありえん!」
と、ゴロルカは少し怒りぎみで言った。
「そうなることを祈るさ。さっさと始めようぜ」
と、バーツが言うと、
「いくぞっ!」
と、ゴロルカ。
「こいっ!」
バーツの返事と同時に、ゴロルカが木刀を上段に構えたまま、走り込んできた。
上段から振り下ろされる木刀を、バーツは木刀で横に弾くと、そのままの勢いで弧を描いて、ゴロルカの頭部目掛けて振り下ろす。
ゴロルカは一歩後ろに下がって、バーツの木刀を回避する。
バーツの木刀が空を切り、地面に当たるかというところで、ピタリと止まる。
「逃げ足は速いな」
バーツがゴロルカを見ながらいうと、
「抜かせ平民がっ!」
と、ゴロルカが一歩前に踏み込んだ。
ゴロルカの狙いは、バーツの足下。
ゴロルカの木刀が、低い位置を猛スピードで移動し、バーツのスネを目掛けて迫ってきた。
バーツは木刀を杖のように地面に突き立てて、その攻撃を受け止める。
木刀同士がぶつかり、乾いた音がその場に響くと、バーツは、お返しとばかりにゴロルカの膝目掛けて、木刀を振り抜く。
ゴロルカはそれをジャンプして回避した。
「ジャンプは悪手だ!」
そう言ってバーツは踏み込んでいき、ゴロルカが着地する前に、木刀はゴロルカの腹にめり込んだ。
吹っ飛ぶゴロルカをそのまま追いかけていくバーツ。
地面に衝突して、跳ね上がったゴロルカをさらに木刀で殴る。
また飛ばされるゴロルカ。
それを数度繰り返して、ようやくバーツの攻撃が止まった。
「まだやる?」
バーツがゴロルカに問いかける。
「まだだ、まだ動ける……」
ゴロルカが言うと、
「その根性だけは認めるがな。根性だけでは生き残れないぞ?」
と、バーツは言ってから、ゴロルカの意識を刈り取るべく、木刀を振り上げたのだった。