魔装
思い立って新作。
ゆっくり更新していきます
地平線の先に土煙が見える。
『来たぞ! 魔族だ! 騎士達よ! 準備は良いか⁉︎ 魔族を殲滅するぞ! 総員、敵を視認後、各自の魔力状況に合わせて鎧を纏え!』
騎士団長の声がイヤホンに響く。
「隊長、我らは?」
俺は、所属する部隊の隊長に聞く。
「我らは二列目だから、一列目が魔装してからで良い。慌てるな」
「はっ!」
「いいか!バーツは初陣だ、皆、助けてやれよ!」
隊長が他の騎士に言う。
バーツとは私の事だ。
そして騎士とは、鎧を纏いし者の事を言う。
鎧、正式には、[魔装鎧]と言うが、魔力と化学の融合により開発された、最新兵器である。
魔族と人族との抗争は、有史以来繰り広げられており、人族は大陸の東に追いやられていた。
魔族に魔法攻撃は効果的では無く、銃などの質量兵器もさほど効果が無かった。
とある兵器開発者が、質量兵器に魔力を纏わせて攻撃したところ、その効果は顕著であった。
そして、魔装銃の生産が開始されると、追いやられるだけだった人族は、魔族を撃退できるようになる。
しかし、それにより上位の魔族が襲撃してくるようになってしまう。
今まで、下位の魔族しか来てなかった事を、人族はその時初めて知る事となった。
上位の魔族には魔装銃程度の銃創など、あっという間に塞いでしまう力が有り、人族は対抗する手段の開発に着手する事になった。
魔装銃の連射で、ちぎれた魔族の腕が回復しない事に着目し、魔力を纏った武器によって、切断すれば良いと結論に至り、魔力を纏った剣の開発に成功した。
しかしこれは、魔族と肉薄した戦闘をする事になる。
そこで、次は魔族の攻撃に耐えられる鎧の開発が命じられる。
失敗と成功を繰り返し、ようやく開発されたソレは、人族の魔力により身体を覆う魔力金属と、その金属を貯めて置く場所兼防具としての役割を持つ盾、そして攻撃する為の魔装剣がワンセットとなり、[魔装鎧]として完成した。
だが、[魔装鎧]は、使う人を選ぶ、特殊な装備となってしまう。
魔力保有量と魔力の波長。
この二つが、装備するのに重要な要件となった。
[魔装鎧]は装備出来れば、上位魔族を撃退できる装備なのだが、纏える者が少ないのが難点となり、魔力保有量は仕方ないとしても、波長をどうにかできないかと、更なる開発に着手。
ようやく完成したのが、今、俺の左腕に装着されている[量産型魔装鎧]である。
この[量産型魔装鎧]により、人族は一気に戦況を変えた。
東から中央付近まで人族の生息地を押し広げたのだ。
「一列目が魔装したぞ! 準備しろよ!」
隊長が叫ぶ。
俺は左腕に装着された[量産型魔装鎧]の盾の部分にセットされた剣に手をかける。
剣を抜けば展開される[量産型魔装鎧]
「各騎士、魔装展開! 抜け!!」
俺はスッと剣を抜く。
盾より滲み出る流動性の金属が、全身に広がる。
関節部には薄く、そうでない場所には厚く。
俺の[量産型魔装鎧]は銅色に青い縁取り。
銅色は[量産型魔装鎧]の最低限の魔力保有量を現す。
すなわち、俺の魔力保有量は、魔装を展開出来るギリギリという訳だ。
[量産型魔装鎧]を装備している騎士でも、魔力の量や波長によって、銀色に輝く者もいる。
青色は、水魔法適性を示している。
水魔法はあまり戦闘向きでは無い。
回復向きでは有るので、怪我をしても自分で治せるのは良いのだが。
「一列目を突破してきた魔族が来たぞ!総員、突撃!」
隊長の声に、皆が走り出す。
もちろん俺も。