いざ貴女の世界へと
ペースの乗るうちに連投してるので、途中スピードが遅くなる場合もございます。
なるべく読みやすく、楽しめるものを作るよう頑張ります
「では、こちらなのでついてきてください。」
「……」
怖さを感じてしまった私は、体が一瞬の間固まってしまい、女性の声が聞こえなかった。
それを見て、女性はもう一度声をかけてきた。
「聞こえてましたか?ついてきてください。」
「えっ!あ、すみませ…」
とっさにそう言葉に出そうになった私を、
咳払いで消すように注意してきた。
ハッとして、気付く。
また自然に謝ってしまいそうになっていた。
その様子を見て、歩き始めた。
私はその後をついていく。
「で、…ここから通る事になる連絡通路は、唯一どの棟の人ともすれ違うことができる場所です。」
外から順に説明して行く形のようで、校門から校庭等を軽く説明し終え、連絡通路に差し掛かったところでそんな言葉を発した。
確かに、色々な見た目の人が疎らに通っているところを見かけられた。
「これからはどの棟と言っても、モブキャラ棟の方はあまり見かけることはないと思います。」
「何でですか?」
ふとその言葉を疑問に思い、質問を投げかける。すると、さも当たり前かのような声色で答えてくれる。
「モブキャラ棟には、クラスが決まっており
一番上は存在や姿が見えますが、下になるにつれて、他の棟の人間には見えなくて分からない存在になるんです。場合によっては教師でさえ見えない人もいます」
「透明人間みたいな感じですか?」
「透明人間というよりも、空気みたいな感じですね。」
サラッとひどいことを言い退け、その後に言葉を続ける。
「まあ、今の貴女はつい先ほど決まったばかりの人間ですから。見える可能性がありますね。ほら、あそこの女子生徒達はその類ですよ。」
そう言われて、その方向を見ると女の子2人が仲良く談笑しているところが見える。
その近くで、違う男子が本を読んでいるが全く彼女達には気づいてないようだった。
「男子生徒はサブキャラ棟の子です。なので気づかれていません。」
「なんだか、彼女たちが可哀想な感じですね。」
「…そんな事思ってるのはまだここを詳しく知らないからですよ。」
「え?」
「いえ。なんでもないですよ。次に行きましょう」
私がぼそりと呟くと、女性はこちらに聞こえやすいような声で言っていた。
だが、聞き返した途端歩き出してしまったので詳しくは聞けずに私はついて行く事になる。
その時だった。
「うわっ…!?」
強い風吹いてきて、一枚の紙が私のところまで飛んできた。
それを拾い上げると、それは学校だよりと書かれたプリントだった。
不思議に思っていると、徐々に走っている足音がこちらに近づいてくるのを感じた。
そして、その足音の正体 比較的小柄な女の子はわたしを見つめてこういった。
「ごめんなさい!強風でプリントが飛んでしまって…!お怪我ないですか?」
「大丈夫ですよ」
「あら。聖さん、きちんと今日みたいな日は抑えて運びなさい」
「ごめんなさいー!」
聖さんと呼ばれた女の子はそのあと、きちんと頭を下げて謝ってからどこかへ向かっていってしまった。
その姿をぼんやりと見送ってから、また後について行くと、今度は教室へつながる扉の前に着いた。
「今この場所から貴女のストーリーが始まる事になります。世界は、乙女ゲームの中の世界。その物語のメインヒロインとしての道をたどる事になります。」
扉に手をかけ、ほんの少し開けると、ぼんやりと歪んだ床が見えた。
「この物語の終着地点は、物語のヒロインとして走りきる事。この世界はバトルもあるために、BADやDEADエンドを迎えることもあるかもしれません。」
そしてそこまで聞いてた時、次の言葉になんとなく嫌な予感がした。
そして次の瞬間にそれが的中する事になった。
「その場合はこの学園から…いえ、どの世界からも今の貴女の存在が消える事になりますから、ご注意を。」
「はあ!?ちょっと、まって!」
「ではご武運を。」
「まってって!押さないで…うわぁー!!?」
それに対して文句を言おうとした一瞬の隙に、ドアを開けられて中に押し入れられてしまった。
そして、わたしは深い闇の穴の中に落ちて行くのであった。