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カのわめき

カのわめき


カ・・・です。衛生害虫などと言われる嫌われ者です。その上、キチンとした生物なのに「カ」一文字。漢字も虫編に文、これも羽音の「ブーン」からきているらしいが、だれが付けたのか知らないけれど愛も何も感じられない名前であると思う。虫の中には「セイタカアワダチソウノヒゲナガアブラムシ」と言う長い名前の虫がいるのに「カ」だけでは意味も何も分からない、どんな虫なのかも想像すらできない名前である。節足動物門昆虫網ハエ目カ亜目に分類される昆虫、学名は「Culicidae」と付いているのに、和名では「カ」別にどうでもいいようなことだけど、何となく納得がいかない。

 その上、「人類にとって最も有害な虫」とまで言われている。確かに伝染病の媒介者ではあるが、オレが悪いのか、悪いのは病原体であり、そんな病原体を保持したり感染する動物や人間がいるからダメなのであって、弱すぎるお前たちが問題で、オレ達はマラリアやデング熱にはかからない。それに吸血するのは一時期のメスだけで、ほとんどのカは花の蜜などを吸って生きている。さらに、吸引する血の量は僅かなものでせいぜい5mg程度、痒い痒いと言うがそれは吸引が途中で邪魔され血液を固まらせないための唾液が人の体内に残るためで最後までキチンと吸わせてくれれば唾液もキチンと吸い出すためそれほど痒さは残らないはずである。

 嫌われながらも生きています。中生代ジュラ紀あたりから生きています。地球上には2000~3000種類のカが生息しています。それほどの多くの種が1億年以上生息し続けていると言うことは多くの生態系の中で重要な役割を果たしていると言うことで、我々がいなくなると植物にしても他の昆虫や動物などにも何らかの影響が出るのではないかと思っています。それなのに人間は駆除だ防除だ殺虫だとあらゆる研究を続け自分たちに害を及ぼす薬剤まで作り出して我々を亡き者に症としている。

 こんなこと考えていたら生きるのがやになってきました。オレはオスだし人の血は吸わないのに飛んでるだけで殺虫剤をかけられそうになり、外に逃げればツバメに食べられそうになり、たかだか2~3週間の一生なのに、そんなに旨い蜜を吸ったこともないし、メスにも巡り合いません。自殺もできない、メスならだれか人間に取り付いて、うまくいけば血をたくさん吸って卵を産めるし、ダメでも見つかってつぶされれば即死ねる。つまらない人生イヤカ生だった。今考えるとボウフラと呼ばれる子供の頃が一番楽しかったかも知れません。母親が廃材置き場の下のほうに置かれた空き缶の水たまりに卵を産んでくれたおかげで、人も近づかないし天敵もいない、流れも無く餌のデトリタスも豊富にあり、兄弟楽しくフラフラ逆立ちしていました。良い思い出もあったんだ。強い風が吹いてきました、この風に飛ばされてどこか別の場所に行ってみようと思います。何か良いことがあるかもしれません。あと僅かですが生きてみることにします。



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