第一章五 束の間の安息
突如現れた騎士、テレサに命を救われた北斗は改めてここが一体どこなのか、そしてこの世界の理、魔法の概念を分かりやすく説明してもらっていた。
まずここはトランテスタと呼ばれる国の村のひとつ、ココリコ村の外れにある森であり、そのココリコ村を納めているのがテレサが現在すむ屋敷の元主人ギルバート オリヴィエと呼ばれる男が納めていたオリヴィエ領の一部だということ。
そのギルバート オリヴィエはすでに故人であり、現在はテレサや屋敷の使用人たちが後を引き継ぐかたちで領地を管理しているらしい。
元々テレサはその管理している領地の村の外れのこの森で、魔獣が暴れているという報告をうけ討伐のためにここを訪れていたらしい。
そして先ほどの魔法について、この世界の魔法は空気中に存在するマナといういわゆる魔力の源を概して発動しており、この世界にすむ人々にはゲートとよばれる、そのマナを取り込み活用できる供給機関があるらしく、そのゲートを開口しマナを使いこなせたものだけが魔法を行使できるらしい。
魔法には大きく分けて6つの属性、火、水、風、土、光、闇が存在し、特に光と闇は珍しい属性らしく基本的には一人につきひとつの適正属性が存在するらしい。
大まかな説明をうけなんとなくこの世界のことが分かってきた。とりあえず言えることはテレサはマジてかわいい、説明をうけながらも大半は彼女の美貌に見惚れてしまっていた。
異世界に来ていきなりこんな美少女ヒロインとご対面とは、、まだ自分にとってのヒロインと決まったわけでもないのだが気が抜けると緩んでしまう頬を北斗は必死で押さえる。
「どうかした?」
「いやいやなんでも!さっきのテレサちゃん本当にかっこよかったなーて」
「誰かにちゃん付けされたのってすごい久しぶりかも、、全然たいしたことないわよ。」
先ほどの氷の魔法をくししグリズリーを翻弄する姿はまさに氷の騎士、お世辞抜きで本当に勇ましく、そして華麗だった。
「テレサちゃんっていますんでる屋敷の使用人なの?」
「ううん。私は屋敷に住まわせてもらいながら、そのオリヴィエ領を警護する私兵団に所属しているの、元々は王都直属の騎士団に所属していたのだけれど。」
「へーーなんで騎士団やめてその私兵団ってのにはいったの?」
その質問をした瞬間、一瞬テレサの顔が急に暗くなったのを感じ、テレサ自信もどこか言葉に詰まっていた。少しの間沈黙が続きホクトはどこか緊張しながらも彼女の言葉を黙って待つ。
「、、、そうね、命の恩人がいたから、、かな?」
そう言うと彼女はどこか儚げに空を見上げた。
「その人に救ってもらった命だから、その人のため、、その人が守りたいもののために私も一緒に戦いたかったの、、もう今は亡くなってしまったのだけれど。」
それってもしかして、、彼女の命の恩人が誰か察しつつも、その話をしているときのテレサは儚げで、そしてどこか苦しそうだった。テレサは一度拳に力をぎゅっといれ軽く息を吸う。
「ごめんない。。別に暗い話にするつもりはなかったのだけれど、でも誰かに救ってもらった命だからこそ、この命を意味のあったものにしたいの、だから私は今もこうやって戦い続けてる。」
テレサの一言一言が深くホクトの心に突き刺さった。命を無駄にせず意味のあるものにしたい、彼女は自分の意思をもってしっかり地に足をつけ今を生きている、、ホクトとはまさに正反対、だからこそ彼女は剰りにもホクトにとっては眩しかった。
「すごいね、、テレサちゃんは。」
「だからそうでもないって、、あっもうちょっと歩けば森を抜けられるわ。」
テレサとの何気ない会話で、ホクトは新しく生を授かったこの異世界で今度こそ夢や目標をもち意味のある人生を送ってみせると、そう強く誓ったのだった。
夕陽も沈みかけ夜もふけてきた。もう少し歩けば森の出口につく、、束の間の安息は突然にも終わりを迎えた。