第一章四 氷の騎士 テレサ
突然の金髪美少女の登場に北斗はただ唖然とするしかなかった。
化け物の視線がその女性の方にうつる、どうやら標的を変えたらしい。
「大丈夫ですか?」
――突然声をかけられハッと我にかえる、さっきからハプニングだらけで頭が追い付かない。
「え、えぇと、、」
「すぐに終わらせるのでそこでじっとしていてください。」
「は、はい」
金髪の美少女の騎士?はその青い瞳で冷たい眼差しを、グリズリーに向けながらこちらに話しかけてきた。
北斗は突如現れた美少女騎士を改めて見る、見た感じ年は自分と同じぐらいに見え、しかもこれほどまでに恐ろしい化け物を見ても怯んだりもしていない。
果たして彼女は何者なのだろうか、、考えてみても答えは出るわけもなく、素直に彼女の言葉に従い、改めて突如現れた金髪美少女騎士とグリズリーというなの化け物を見つめる、少しの間静寂が身を包み北斗もごくりと生唾を飲む。その少しの間続いた沈黙を先に破ったのはグリズリーのほうだった。
「グルァァァァァ!!」
グリズリーがその激しい雄叫びと共に彼女に迫り、鋭くそして巨大な爪で彼女を引き裂こうとした、、その刹那。
彼女の姿は一瞬で消え、グリズリーもその姿を見失い辺りを見回す。
気づいたときには彼女は空中にできたいくつかの氷の足場の上に立っていた。
「こ、これって」
――魔法、、目の前で起きているこの光景をみれば、誰しもがこの単語を思い浮かべるだろう、北斗は彼女の発する氷の魔法をみて己の立てた異世界転生という仮説が正しかったことを確信した。
優々とグリズリーを見下ろす彼女、表情を一切変えずグリズリーを見つめるその顔に余裕が現れて見える。
グリズリーもその態度に感化されたのか先ほどよりも激しい雄叫びを上げる、もしかすると本気モードに突入したのかもしれない。
グリズリーがまたも一気に切り裂こうとその剛腕を振りまくるが、彼女はその攻撃を氷の足場を使い巧みに交わしていく。
「そろそろ終わりにしましょう」
――金髪美少女が静かにそう告げる。
グリズリーもシビラを切らしたのかその鋭い歯で噛みちぎろうと一気に間合いを詰めその大きな口を開く。
当の彼女はそれすらもすらりと交わして見せた。
「付魔・氷」
瞬間、彼女の剣の剣身、、柄から剣先までを、氷の冷気が覆い尽くす。
「剣技:氷魔剣!!」
彼女の勇ましい声と同時に放たれた青く光るその斬撃は、一瞬にして化け物の首と胴体を真っ二つに切り裂いた。
首と胴体を切り離され胴体だけになったグリズリーの体は音もなく崩れ落ち、ピクリとも動かない、、あっという間の出来事たった。
「す、、すげーーー!」
目の前で起きた出来事に、先ほどの恐怖心はどこへいったのかというように無邪気に興奮してしまう、彼女はそのままこちらを振り替えり軽く笑顔を浮かべた。北斗の心はガッチリと彼女につかまれてしまった。
「君の瞳に、、乾杯」
「、、はい?」
--おっと口が滑った。。
「な、なんでもないです。忘れてください、、」
「、、?そう?それより怪我はない?」
「かすり傷ぐらいで全然!それよりさっきのってもしかして魔法ですか?」
「そうよ?別にそんなに珍しくもないでしょ??」
彼女は当たり前かのように魔法という存在を話すが、当の北斗にとっては漫画などでしか見たことのない二次元の世界、、その世界に自分がいまいるのだと彼女の言葉でより実感しその好奇心が大きく擽られていくのを北斗は自分でも感じていた。
「あー、、お、俺の国では魔法っていう概念があまり広まっていなくて、、実際に見たのは初めてだったからつい、、」
「へえ、今どきそんな国があるのね、なんて国なの?」
「え、ええとジャパンっていうんだけど、、」
「じゃぱん??初めて聞く名前の国ね?」
日本を知らない、、やはりここは元いた場所とは違う別世界、そして彼女はこの世界の住人、、やはりここは異世界で自分はこの異世界に転生されやってきたのだとこれまでの状況を整理することができた。転生させられた理由であるが、、
「し、島国でさ!ここから離れたところにあるんだよーあはは」
「そうなのね、まあとりあえず無事でよかったわ、もう日も暮れるしここから少し歩いたところに私のすむ屋敷があるから良かったらそこで休んでいかない?」
「えっ!いいんですか!?」
「ええ、むしろ無装備の人をこんな森に置いていく事の方が問題よ」
彼女の、提案は素直にありがたかった。なにしろこの世界についていきなり化け物に襲われただでさえ魔法という現実離れした存在を見せつけられた北斗は心身ともに疲弊しきっていた。快く彼女の提案を飲むことにした。
「あっ自己紹介が遅れたわね、私の名前はテレサ君の名は?」
「俺は北斗。マツムラ ホクト!」
気づけば陽は徐々に落ちていき、
淡い赤黄色に染まっていた空も濃紫色にそまっていく、今にも沈みそうな太陽が金色色の光を放ちホクトとテレサ、二人の姿を儚げに照らしていた。




