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アラサー会社員、ホビーゲームに心血注ぐ(身内用)  作者: 瓶底眼鏡
第2章 人気者は楽じゃない
13/17

現在をあらがう翼

新章開始の幕間です。実質これからが本編です。

 今回の編集は、いつになく手間がかかってしまった。

 やむを得ないアクシデントから、この表現の仕方は何ではあるが、『余計なもの』が映り込んでしまっていたからだ。

 しかも、ただバッサリとその存在を切り落とすのでは、大きな違和感が残ってしまう程度には、しっかりと。


「……ふぅ、よーやく完成、っと。まぁ、エンコするまで安心はできないケド、一息一息」


 久々の難敵だったとはいえ、なんとか辻褄合わせに成功し、もはや習慣となった週一の定期投稿の時間が来る前に、満足……いや、妥協のいく仕上がりにまで持っていくことが出来た。


 充実感を味わいつつ、背伸びをして最近新調したデスクトップPCの画面から目を離し、大切な姉に買って貰ったブルーライトカット仕様の度無し眼鏡を丁寧に折りたたんで机の上に置いて、室内の小型冷蔵庫から、栄養ドリンクを一本取り出し、一口。


 不健康極まりないが、この少女は、『味が気に入っているから』という理由から、この過剰摂取をすれば逆に健康に害を及ぼしかねない液体を常飲している……顔を合わせれば何かとグチグチと煩い、同じ屋根の下に棲む他の住人たちには、バレないように。


「ぅあー、せっかく良い気分だったのに、ヤなこと思い出しちゃったーぁ、おねぇちゃぁーん」


 今この家には居ない、彼女が現実世界において唯一心を許している存在へ、意味もなく呼びかけつつ、ベッドの上にだらしなく寝転がる。


「あーしたーはがっこもやーすみーだしぃ。こーゆー時は、『コレ』でストレス発散に限るよねーっと」


 枕元の、やや高級感の漂うヘッドギア型のVRゲームギアを手に取り、ベッド脇に飾ってある、若い少女の部屋にあるのはいささか珍しい(とはいえ、この部屋自体が全体的に、大衆的には男性が好むとされるようなデザインのものが多く置かれているため、相対的に目立たなくはあるのだが)、重厚感溢れる鎧を身に纏ったような姿をした、白銀の大鳥に目をやる。


 兜の奥で輝く瞳に猛禽類特有の攻撃性を秘めながらも、その騎士の様な出で立ちは、まさしく『高貴』の二文字をこそ、冠するに相応しかろう。


 そんな、ただ在るだけで威圧感さえ感じさせる誇り高き騎士鷹(ナイトホーク)の姿に、少女は年相応らしからぬ、まるで母が子に向けるかの如き慈愛の伴った微笑みを向け、VRゲームギアを装着し、眼前に浮かぶ、電脳惑星Viの姿の写し出されたアイコンを選択する。


「それじゃ、今日もよろしくね。グローリアハント――」


 整った栗色の瞳を閉じ、そっと眼を閉じ、開けば、そこはもうすでに、白夜の雪原の中にひっそりと佇む、小ぢんまりとした車庫の中。


 ファルカイド前線基地より北北東へ100km、ほかに誰にも知るもののない秘密の隠れ家に、少女……吟田静香(ギンダシズカ)は、『†白夜の騎士姫†』と囃される熟練プレイヤー・ジークリンデとして、今、降り立った……


「……あっ。動画保存忘れてた、やばっ! グローリアハント、ちょっとだけ待っててっ、すぐ戻るから!!」


「……クルルゥ」


 ……直後、致命的なうっかりをやらかしかけていた事に気付き、慌ててログアウト。


 人前での大胆不敵な態度は何処へやら、私的な場面では妙なところで間の抜けた主人の姿に、溜息を吐くように、白き鷹は一声鳴き、首を竦めるのであった。

幕間ということで申し訳ないですがやや短めに。

リンデちゃんの出番も今後増やして行きたいです。

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