幕が上がるまで
試験投稿につき、諸々荒いです。
ご了承ください。
眩しい。
海の底にいた時ここまで眩しかったことはあっただろうか…
喉が焼けるように熱い。
先程まで尾ひれがあったそこはむず痒いような妙な感覚がある。
体は重いし、所々が痛いけど
かつてない喜びが駆け巡る。
これで貴方に会いに行ける…
我々の暮らす国は人魚の王が統治するそれはそれは素敵な国で、
全ての海の生き物たちが仲良く暮らしており、毎日が平和そのものです。
歴代の人魚の王は皆素晴らしい賢王で、ある王は人間との戦争を終わらせ、ある王は海の底に城や城下を築き、
そして現王は多くの海の種族を見守っていてくださり、飢えや多種族からの捕食から守ってくださっております。
そんな神様のような王にはご子息様が6名いらっしゃいます。
どの王子様もご両親に似て美しく、聡明でおられます。
ですが、その中でも末の王子様は見目麗しく、またそのお声は聞いたもの皆虜にする魅惑のお声で……
「何この文章!」
それを言うが早いか手に持っていた城下に公布するという木の板でできたそれを尾ひれで叩き割る。
「ちょっ!何するんですかノヴァ王子!これ一枚作るだけでも大変なのに割るなんてひどい!」
執事のクラウスが涙目で訴えてくるが微塵も憐れみは感じない。
「もっと他に書くことあるでしょ!
つい先日は三男のマリーン兄様が荒ぶった大ダコをお一人で鎮めたし、
長男のセイレン兄様は海の魔法使いに誘拐された当時3歳の僕を、
さらに当時8歳だった兄様が救い出してくださったという
最早伝説のような実話だってあると言うのに、それを差し置いて僕の話って…」
全く、大事な国をアピールする機会をなんだと思っているのか…
「確かに他の王子様方や陛下の偉業の数々には目を見張るものが多々ありますが、
いささか人間離れしすぎなんですよ。
それに、王子のお声が魅力的っていうのも本当です。実際従者の中では王子のお声を魔法具に記録し売買している者もおりますよ。」
「なにそれっ!!」
「ともかく、この文字板が広まれば国中…いえ、海中から王子のお声を聞こうと沢山の者がこの国に訪れることでしょう
そうすればこの国はますます活気付くはずです。王子は国が栄える事はお嫌でございますか…?」
僕が嫌なんて言えるわけないのにわざとらしく聞いてくる。
「あー!もう!いいよ、なんとでも書けばいいでしょ!嘘つきって言われても知ら無いから!!」
「ありがたき幸せにございます!」
なんだか腹が立って仕方がない。どこか気分転換に行こう。