プロローグ
俺は“玖耀 祐夜”。
普通の高校3年生である。
今日は大学の受験日…全く自信がない。
制服に着替え、玄関にて靴を履いていると、後ろから弟の“祲夜”がやって来た。
俺が後ろを向くと、彼は「行ってらっしゃい!!」と言ってくれた。
俺は微笑んで、彼の頭を撫でる。
「兄ちゃん行っちまうが、1人で大丈夫か?」
「大丈夫!! 俺、もう12歳だよ?!」
「ハハハッ、そうだったな。
じゃあ、行ってくるよ」
俺は家の外に出た。
実は俺たちには両親がいない。
…と言うよりも、両親から俺たちを置いて出て行ってしまっただけだが。
それが起きたのは、俺が10歳、祲夜が4歳の時であった。
3年前まで、母方の叔父“鑑谷 攸斗”さんが俺たちを育ててくれた。
俺が高校に上がるときに、これ以上世話になるのは迷惑だと思い、俺が祲夜を引き取った。
今日の天気は晴々としていた。
近くの駅から2本、最寄りから徒歩10分のところに大学がある。
大学までの徒歩の道。
キョロキョロと周りを見渡している怪しい奴がいた。
黒いフードを深く被っている。
「…あの」
「ッッ?!!」
フードの奴は俺に突進して来た。何事か、と周りにいた通行人が俺たちを見る。
ツゥ…と口から血が垂れて来た。
奴は一目散に逃げていく。
俺が自分の体を見ると、脇腹のところに小型ナイフが刺さっていた。
嗚呼、これはヤバいなと思った瞬間、バタリと俺の体は倒れた。
周りから悲鳴が上がる。
数人の通行人が俺に応急手当てを施していた。
「オイ、君!! 意識をしっかり持て!!」
男性が声をかけてきていた。
俺はもう終わるのに…
最期に…
「し…祲夜を、頼み…ます……。」
…弟を置いて逝くなんて、俺は兄失格だよ。
ごめんな、祲夜。
悪いけど、俺は先に逝かせてもらうよ…
“玖耀 祐夜”、◯月□日。
小型ナイフによる出血多量で死亡…