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ふともも  作者: さとあき
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ふともも

 冬はふとももが冷えるよね。


 太ももなのにふとももが冷える。


 脂肪がつきやすくって太いのに鳥肌が立っている。


 まあるいひざ小僧の上にあるふともも。


 ふとももが冷えると気がついた高校三年の最後の日、


 清涼感のある朝の光が溢れる通学路で。


 友達にふとももが冷えるねと笑って言うと、友達は泣きながら学校を指差した。


 友達の視線の先には、其処に建ってる事が当たり前になっている、


 学び舎のある風景があった。


 大きく卒業おめでとうって書かれた垂れ幕が掛けられている。


 ふともも丸出しで学んだ三年間。


 わたしは感慨深く腰に手を置いて、ふとももが冷えるなあと心の中で深くつぶやいた……。


 わたしは隣で泣いている友達にそっと寄り添うと、泣かないでと耳元で囁き、


 友達のスカートから覗く白いふとももに手を伸ばして優しく上下に撫ぜた。


 友達はひゃっと驚いて、飛び上がった瞬間、ぷっとちいさく放屁した。


 わたしは鞄で殴りかかってくる素振りを見せた友達に、怒るまえにわたしのふとももを触ってみてと告げた。


 早朝の放屁後の静寂のなか、赤面した友達は恥ずかしそうにそっとわたしのふとももに触れてきて、


 わたしはふとももに触れてきた友達の指先の温かさを感じながら、高校の三年間ほんとうに楽しかったねと言った。


 友達は魔法が解けたみたいな驚いた顔をして、もう一度泣いていた。


 そのあと、わたしはその場から駆け出した。


 擦れる紺色のスカートの冷たさをふとももに感じて、


 後輩たちのいる校門まで、愛しい日々を置いていくように、光り輝く白い息を昇らせながら。

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