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虚しさの捌け口

 鴨井橋を越えたところには、信号がある。

私は友達を待っていた。彼は簡単にいうと陽キャである。彼は黒髪にパーマをかけ、ワックスでテカらせ、どこから来るのかわからない誘惑用の匂いを纏っている。その白ティは黒いジーンズにしまいこんでいる。ここでは彼をAと呼ぼう。

 私とAが出会ったのは、大学の教養化学の授業であった。私は初回の授業をやむをえず流れで一緒に受けたヨッ友を探していたが、そいつはもう違うやつの仲間になっていた。身も蓋も無いやつだと思った。私は大した感情の起伏も表さずに、「全く困っていない」と言わんばかりの不自然極まりない挙動をかましていた。私は焦っていた。するとそこにやってきた一人の奴がいた。そいつがAであった。そいつはあまりにも会話慣れしすぎているのか、それとも私を惨めなやつだと思って人生勝者の余裕を見せつけたかったのか、ともかく私を実験に誘ってきた。私にはその提案を断る理由がなかった。

 それからというもの、私とAは毎回一緒に実験をして、実験をした。

 要は特に仲良くはならなかったということである。

 私が人と話すのに過度に緊張してしまっていたせいで、Aも気を遣って私に話しかけるのをためらっていた。なぜ彼が私に付き合ってくれているのかわからなかった。

 そうしているうちに春学期の終わりは近づき、授業もとうとう最後となってしまった。

「今日でAと会うの最後だ」と意識はしていたものの、だからと言って、何かあるわけでもなかった。

最後ぐらい奇跡かなんかでAと仲良くなれないかなあ、と、ありがちな幻想をあからさまに抱いていた。

と、そんな矢先、奇跡が起こった。

なぜかは全くわからないが、彼が私のことを、面白いやつだと認識してくれたようだった。

彼は事あるごとに、私の冷笑風情キャラをいじってきた。どうやら私は冷笑風情キャラらしかった。

 そんなこともあって、Aは時々私の家に来るようになった。私は他人を家に上がらせるなんて面倒極まりないことをしたくはなかったが、それを拒否できる分際ではなかった。私はついに陽キャを味方につけられた陰キャなのだから。

 と、いうわけで、私は今その友達を待っている。

夕日が鴨井川に映える。雲はふわっと分厚い。太った雲と薄い雲たちの合間合間から紫を交えて紅い夕陽が鴨井川に差す。

 遠目で見ても彼だと分かった。その体型は細く長く、ひょろっとした身体である。銀色のネックレス、銀色のブレスレットが彼の白ティイン黒ジーンズに主張なく溶け込んでいる。彼が近づいてくる。

 彼と私は、挨拶を省略してもいい距離感だとお互い勘違いしてる感の半端ない半端な空気に流され、彼は歩み続け、私はその彼の歩みに合流した。私たちはそのまま6月下旬の関東地方の湿潤な空気の中を歩いていった。

 、、、、あっ、、。

 今渡ろうとしていた信号は私たちが渡り始める7秒前くらいにはもう青になっていた。少なくない人の群れがこちら側に渡ってくる。まばらに人が信号を渡ってくる。空気は橙色と灰色だった。

 私は気づいた。私の前方右斜め35度くらいのところにいる青ニットの女大生の存在に。

 次に私は気づいた。近距離型のスタンドであってもしっかり射程圏内に入るくらいの距離にいるこの青ニットの女性が誰なのかに。あぁ、気づいてしまった、、、。気づかなければ良かったのだろうか、、、。

 この青ニットの女大生は、私と同じ寮にすみ、私と同じ大学に通い、私と同い年で、極めつけは同郷出身上京勢である、Yさんだった。それはあまりにも衝撃的だった、、、。

 

 彼女と私との間には何も起こっていない。まるで”何も”である。

 私が大学に入学したての頃は、とにかく外向型の振る舞いをしていた。なぜなら友達が欲しかったからだ。しかし、この世には自分と気が合う人と気が合わない人が存在して、相性には逆らえないし逆らう必要もないことを知ると、やたらめったらにフレンドを獲得しようとはしなくなった。私がYと話したのも、まだ私が無理やり外向型になっていた時期であった。

 Yは可愛かった。スレンダーな体型と164cmほどあると思われる身長を持っていた。ギャルではなく、黒髪ストレートヘアは肩甲骨の真ん中くらいまで下ろされていた。落ち着いた雰囲気を出し、寮の野蛮大学生の騒ぎとも一線を引いていた。バレーボールをやっているそうで、健康的な体つきであり、胸の膨らみと尻の曲線もすこぶる健康的だった。それは大きいという意味ではなく、その健康的な体つきにふさわしい健康的な肉付きであったという意味である。

 同郷出身であったこともあり、幾度か話す機会はあった。ただ、同大学で同郷の同い年という共通項をものにできなかったのは、私の後悔してやまない失態である。私たちはお互いの名前を共有しただけで、もうその微細な関係でさえ消失してしまったかのように思われる。彼女は白く細いニットと黒のジーンズをよく着ていた。彼女は健康的に細かった。

 それがどうだ。今私の前方右斜め64度くらいのところにいるYの容姿と言ったら、胸がいつも以上に大きかった。その青ニットにはいつも以上に落ち着きと大人らしさを感じ、今は心身が落ち着く夕方という時間帯だというのに、その胸の膨らみはいつもよりも豊満だった。その尻の関数はいつも以上に誘惑的で美しい曲線で表されていた。胸は妖艶に盛られていた。

 それに、今は夕方だ。大学の授業はもうとっくに終わっている。とすれば彼女はサークルの活動に行くのだろうか。ただ、彼女はバレーサークルに入っている。練習に青ニットを着ていくわけがないだろう、、、。だとすれば、、、、、、、、、、飲み会?いや、もしや、、、、。

 彼女が通り過ぎて、その後ろ姿をちらちらと見ては、その総合的に妖艶な後ろ姿に陶酔していた。

 

 私とYには人よりも多くの橋が渡っていたはずだ。もし、そのどれか一つでも渡っていたならば、そして渡りきっていたならば、彼女は青ニットを私のために着てくれたのだろうか。その妖艶な一面を私と共有してくれたのだろうか。

 橋はあったのだ。ただ渡れなかったのだ。

 そんな話をAに振り出すと、妙な空気感になってしまった。


 あぁ、もどかしい。

 


こんにちは、男子大学生ジママンと申します。私の文章を読んでくださりありがとうございます。拙い文章ですが、自分の正直な感情を記録することに主眼を置きつつ、同時に、読者様の情操を少しでも育めますよう努めてまいります。

私自身あまり読書に馴染みが無い人間ですので、語彙のレベルは低いですが、逆に読みやすい文だと思って読んで下さるとありがたいです。

どうぞ、よろしくお願いいたします。

連載は期待しないでください。継続が苦手なので。

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