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光を背負う少年は、世界を守れない  作者: ゆうなるな


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第7話 教えない人

翌日から、世界は何事もなかったように動いていた。


ニュースでは、

「エネルギー施設の小規模事故」

それだけが淡々と流れている。


負傷者なし。

原因は設備の老朽化。


――嘘だ。


でも、誰も疑っていない。

疑う理由が、ない。


学校に戻ると、

「大丈夫だった?」

「ニュース見たぞ」

そんな声が飛んできた。


「うん、かすり傷」


それで終わりだ。

それ以上、踏み込んでくるやつはいない。


俺も、それ以上話さなかった。



放課後。

帰り道の途中で、足が止まった。


あの歪みが、まだ残っている気がしたからだ。


目を凝らす。

何も見えない。


でも――

“わかる”。


空気が、少しだけ重い。


「……やっぱり」


背後から、低い声がした。


振り返る。


「……今日は窓じゃないんですね」


「堂々と来た」


男は電柱にもたれかかっていた。


「学校は?」


「行った」


「よし」


それだけ。


「で」


俺は我慢できずに聞いた。


「俺、何なんですか」


男は少し考えてから言った。


「失敗作だ」


即答だった。


「……は?」


「最初から完成してるやつはいない」


そう言って、男は歩き出す。


「ついて来い」


「どこに」


「教えない」



連れて行かれたのは、川沿いの人通りの少ない場所だった。


夕方。

風と水の音だけがある。


「ここでいい」


男は立ち止まる。


「何をするんですか」


「何もしない」


「……は?」


「感じろ」


それだけ言って、男は黙った。


風。

水。

遠くの車の音。


「……何も起きませんけど」


「起きてる」


男は川面を指した。


一瞬、水の流れがわずかに乱れる。


「見えたか」


「……今の?」


「今のだ」


男は言う。


「エネルギーは、出そうとして出るもんじゃない」

「溜まって、溢れて、勝手に出る」


「じゃあ、どうすれば――」


「溢れさせるな」


無茶を言う。


「そのために、まず自分を知れ」


男は俺を見る。


「君は、焦ってる」


「……当たり前だろ」


声が荒れる。


「家も、金も、父さんも――」


言葉が途切れた。


男は何も言わない。


「守りたいなら」


静かに言った。


「自分が壊れる感覚を覚えろ」


「壊れる?」


「限界を越える一歩手前だ」


「そこを、止められるようになれ」


「止められなきゃ?」


「暴走する」


昨日の光が脳裏をよぎる。


「……それで、父さんは」


男は目を逸らさなかった。


「そうだ」


拳を握る。


「ふざけんな……!」


その瞬間、胸の奥が熱くなった。


視界が揺れる。


「――っ!」


川の水が大きく跳ねた。


「止めろ」


男の声が鋭く響く。


「今すぐ!」


歯を食いしばる。


――壊れる。


その感覚が、はっきりわかった。


「……っ、はぁ……!」


必死に抑え込む。


水面は、ゆっくり元に戻った。


膝に手をついて、立っているのがやっとだった。


男は静かに言った。


「今のが、一歩目だ」


「明日も、同じことをする」

「限界がわかるまでだ」


夕焼けが、川を赤く染めていた。


体はボロボロだった。


でも――逃げない。


そう決めた。

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