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光を背負う少年は、世界を守れない  作者: ゆうなるな


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第50話:壊し方

 回数の問題じゃない。


 その結論に至るまで、時間はかからなかった。


 結城透は、訓練室の壁にもたれたまま、ゆっくりと息を吐く。


 何度やっても同じだった。


 合わせる。


 維持する。


 崩れる。


 その繰り返し。


 精度は上がっている。


 維持できる時間も、わずかに伸びている。


 だが。


 結果は変わらない。


 止めていない。


 終わっているだけだ。


 ——条件を満たしていない。


 透は、目を閉じる。


 これまでの感覚を、順番に思い返す。


 最初は、何もわからなかった。


 ただ出て、ただ終わるだけ。


 次に、“触れられない何か”に気づいた。


 それが原因だと、理解した。


 そして。


 今は——


 “合わせる”ことができる。


 完全ではない。


 だが、無関係でもない。


 その中間。


 そこまでは来ている。


 問題は、その先だ。


 透は、ゆっくりと手を開く。


 何もない。


 だが、すぐにわかる。


 意識を向ければ、出る。


 それはもう、疑う余地がない。


 だからこそ。


 “出す”ことに意味はない。


 問題は、その後。


 どう終わらせるか。


 ——止める。


 それが条件。


 だが。


 その言葉自体が、曖昧だった。


 止めるとは何か。


 消すことか。


 抑え込むことか。


 それとも——


 別の何かか。


 透は、ゆっくりと意識を沈める。


 あの“何か”へ。


 すぐに見つかる。


 もう迷わない。


 位置も、存在も、はっきりしている。


 触れられない。


 だが、見失わない。


 その状態で。


 透は、意識を重ねる。


 完全に一致させようとはしない。


 あくまで“近づける”。


 無理に合わせれば、崩れる。


 それはもう理解している。


 だから。


 限界の一歩手前で止める。


 その状態を維持する。


 空気が歪む。


 発動。


 同時に、“何か”も揺れる。


 連動している。


 ここまでは、いつも通り。


 透は、呼吸を止める。


 動かない。


 何もしない。


 維持する。


 数秒。


 それ以上。


 時間が伸びる。


 均衡が続く。


 崩れない。


 だが。


 その状態の中で、違和感が浮かぶ。


 ——止まっていない。


 当たり前だ。


 維持しているだけだ。


 このままでは、条件は満たせない。


 なら。


 どうする。


 止めるには。


 この状態から、何をすればいい。


 思考が、わずかに動く。


 その瞬間、揺らぎが生まれる。


 崩れる。


 その前に——


 透は、強く意識を“寄せた”。


 合わせるのではなく、押し込む。


 無理に、重ねる。


 接続されないものを、強引に一致させる。


 ——その瞬間。


 “何か”が、歪んだ。


 初めての反応。


 弾かれるのではない。


 潰れるような感覚。


 透の目が見開かれる。


 今のは——


 届いた。


 触れた。


 いや。


 壊した。


 空気の歪みが、一瞬で乱れる。


 均衡が崩れる。


 だが、今までとは違う。


 外に広がらない。


 内側で、歪む。


 軋むような感覚。


 存在そのものが、不安定になる。


 透は、息を詰める。


 これが——


 止める、なのか。


 違う。


 直感が否定する。


 これは制御じゃない。


 破壊だ。


 だが。


 結果だけ見れば。


 終わりに近づいている。


 歪みが、崩れる。


 形を保てなくなる。


 そして——


 消えた。


 今までよりも、早く。


 明確に。


 意図に近い形で。


 静寂が戻る。


 透は、その場で動かない。


 呼吸すら忘れている。


 今のは。


 成功か。


 条件だけ見れば。


 “自分の行動の後に終わった”。


 それは、これまでとは違う。


 だが。


 胸の奥に残る感覚が、それを否定する。


 ——これは、違う。


 危険だ。


 何をしたのか、自分でも正確にはわからない。


 ただ一つ、はっきりしていることがある。


 あの“何か”に、無理やり干渉した。


 そして。


 それは“壊れる側”に反応した。


 もし、あれが本質なら。


 もし、あれを壊し続ければ。


 どうなる。


 想像は、できない。


 だが。


 良い結果にはならないと、確信できる。


 透は、ゆっくりとその場に座り込んだ。


 手が、震えている。


 止まらない。


 恐怖か。


 それとも——


 別の何かか。


 わからない。


 ただ。


 選択肢が、一つ増えた。


 正しいかどうかは別として。


 “終わらせる方法”を、見つけてしまった。


 それが。


 救いなのか。


 それとも。


 終わりへの近道なのか。


 まだ、判断はできない。


 だが。


 時間は、待ってくれない。


 透は、ゆっくりと顔を上げた。


 残りの日数は、もう数えるほどしかない。


 選ばなければならない。


 止めるか。


 壊すか。


 そのどちらかを。

本作は毎週水曜・土曜の21時に、2話ずつ更新予定です。

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