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光を背負う少年は、世界を守れない  作者: ゆうなるな


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26/36

第26話:宣告

本作は毎週水曜・土曜の21時に、2話ずつ更新予定です。

 河川敷に着いたとき、

 師匠はもう来ていた。


「遅れました」


「いや」


 短い返事。


 それだけで、

 空気がいつもと違うと分かった。


 透は、立ち位置を探すように足を止める。


 風が冷たい。


 昼間より、

 ずっと静かだった。


「最近、ここ来てないな」


「……はい」


 責められている感じはない。


 なのに、

 背中が少しだけ強張る。


「言った通りだ。

 来なくていい」


「じゃあ――」


「でもな」


 師匠は、透の方を見た。


 目を逸らさない。


「それで止まるなら、話は終わってた」


 透は、何も言えなかった。


「止まってない」


 淡々とした声。


「積み上がってる。

 自分でも、分かってるだろ」


 胸の奥が、

 小さく鳴った。


「……正直、よく分かりません」


「分からないのが、一番危ない」


 師匠は、そう言い切った。


 間。


 川の流れる音だけが続く。


「お前な」


 師匠は、少しだけ視線を外す。


「もう、隠せないところまで来てる」


「隠すって……?」


「力だ」


 はっきりと言った。


 逃げ場がなくなる言い方。


「特別なことは、何もしてないつもりです」


「だからだ」


 即答だった。


「してないのに、できてる。

 それが問題だ」


 透は、拳を握る。


「俺、別に……

 何かになりたいわけじゃ」


「知ってる」


 師匠は、遮る。


「守りたいだけだろ」


 透の喉が詰まる。


 師匠は続ける。


「前にも、同じ顔を見た」


 ――前と、同じだった。


 あの言葉が、

 頭の中で重なる。


「自分を後回しにして、

 踏み出すやつの目だ」


「……それ、悪いことですか」


 しばらく、沈黙。


 師匠は、ゆっくり息を吐いた。


「悪くはない」


 でも、と続ける。


「放っとくと、必ず壊れる」


 透は、視線を落とす。


「だから、今日で終わりだ」


「……何がですか」


「何も知らないふり」


 師匠は、透の足元を見る。


「次からは、

 止まれた理由を教える」


「それって――」


「逃げ道はなくなる」


 師匠は、はっきり言った。


「それでも来るか?」


 透は、少しだけ考えた。


 家のこと。

 母の背中。

 妹と弟の声。


 考えるまでもなかった。


「来ます」


 短く、でも迷いなく。


 師匠は、頷いた。


「じゃあ、覚悟しろ」


 それだけ。


 名前も、

 仕組みも、

 まだ教えない。


 ただ。


 これまでと同じでは、

 もういられない。


 透は、川の向こうを見た。


 風が、

 少しだけ強くなる。


 隠せない。


 その言葉の重さが、

 今になって胸に落ちてきた。

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