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光を背負う少年は、世界を守れない  作者: ゆうなるな


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第25話:隠せない

本作は毎週水曜・土曜の21時に、2話ずつ更新予定です。

 夜の河川敷は、人がいなかった。


 風の音と、

 水の流れる音だけがある。


 師匠は、一人で立っていた。


 昨日も、今日も、

 透は来ていない。


(正しい判断だ)


 来ていないこと自体は、

 問題じゃない。


 問題は――

 来なくても、積み上がっていることだった。


 師匠は、足元の地面を見る。


 踏み固められた跡。

 昨日までと、同じ場所。


 だが、

 微妙に違う。


 土の沈み方が、

 均一すぎる。


(もう、無意識の域じゃない)


 昨日の透の動き。


 止まれた。

 踏みとどまれた。


 力を「出さずに」

 力を使っていた。


 それが、いちばん厄介だった。


「……」


 師匠は、空を仰ぐ。


 雲に隠れた月。

 光は弱い。


(あいつは、自分が変わってるって

 まだ分かってない)


 分かっていないから、

 壊れない。


 だが。


 分からないまま積み上げれば、

 いずれ必ず歪む。


 川の向こうで、

 小さな石が落ちる音がした。


 誰かが投げたわけじゃない。

 自然に崩れただけだ。


 師匠は、ポケットから煙草を取り出し、

 火はつけずに仕舞った。


(隠す時間は、もう終わりだな)


 教えないという選択肢は、

 最初からなかった。


 ただ、

 早すぎるのが一番まずい。


 だから、ここまで待った。


 だが今は違う。


 透は、

 自分で止まり始めている。


 それは、

 誰かに教えられて身につくものじゃない。


(……同じだ)


 師匠の脳裏に、

 昔の自分がよぎる。


 何も知らず、

 何も分からず。


 それでも、

 立ち続けていた頃。


「もう一段、先だな」


 誰に言うでもなく、呟いた。


 教える内容を、

 頭の中で組み立てる。


 言葉は、最小限でいい。


 余計な説明は、

 混乱させるだけだ。


 必要なのは――

 隠さないこと。


 力の名前も、

 仕組みも、

 全部じゃなくていい。


 ただ。


「お前は、もう普通じゃない」


 それだけを、

 きちんと伝える。


 師匠は、川に背を向けた。


 明日は、来るだろう。


 透は、

 まだ何も知らない顔で。


 だが。


 それを知らないままでは、

 進めないところまで来ている。


 師匠は歩き出す。


 決めた。


 次に会ったとき、隠すのはやめる。


 それが、

 守るための選択だと分かっていたから。

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