第1話 光のはじまり
はじめまして。
この作品を読んでくださり、ありがとうございます。
この物語は、
「誰かを守ろうとすることは、本当に正しいのか?」
という問いから始まっています。
特別な才能を持った少年が、
すべてを救える英雄になる話ではありません。
守ろうとすればするほど、
何かを失っていく――そんな物語です。
明るい日常の中に、
少しだけ切なさが混じるようなお話になればと思っています。
ゆっくり進みますが、最後まで書き切る予定です。
どうぞ、主人公の歩みを見守っていただけたら嬉しいです。
「とおる、起きなさい」
母の声で目を覚ました。
結城透は、天井の染みをぼんやり見つめながら、息を吐く。
築年数の分からないアパート。
冬は寒く、夏は暑い。
布団をたたみ、静かに部屋を出た。
まだ寝ている弟と妹を起こさないように。
キッチンでは、母が小さなフライパンで卵を焼いている。
一人分。
いや、正確には半分だ。
「今日は早いね」
「うん。委員会あるから」
嘘ではない。
でも本当の理由は、家に長くいると、色々と考えてしまうからだった。
食卓に並んだのは、トースト一枚と卵。
父の席は空いている。
「父さんは?」
「もう仕事に行ったわ。
夜勤続きで、最近ほとんど寝てないの」
「そっか」
短く返す。
母は、食卓につかなかった。
「お母さんは?」
「あとで食べるから」
透は何も言わず、トーストを半分に割った。
母の皿に、そっと置く。
「……いいの?」
「朝、あんまり食べられないから」
また、嘘。
でも母は、それ以上何も言わなかった。
玄関で靴を履きながら、制服の袖を引っ張る。
少し短くなってきたが、まだ買い替えは無理だ。
透は、高校一年生だ。
テレビでは、朝のニュースが流れている。
『新エネルギー資源〈リネア〉の実用化が本格化し――』
難しい話だ。
でも、電気代が上がった理由くらいは分かる。
「また上がるってさ」
母が、ぽつりと言った。
「……そうなんだ」
それ以上、言葉は続かなかった。
玄関を出る前、透は一度だけ振り返る。
洗濯物の山。
古い冷蔵庫。
誰も座らない父の椅子。
(ちゃんと、稼げるようにならないとな)
誰に言うでもなく、心の中でそう思った。
学校へ向かう坂道。
リュックは軽い。
中身が少ないからだ。
友達はいる。
でも、放課後に遊びに行くことはほとんどない。
アルバイトは校則で禁止されている。
だから、できることは限られていた。
それでも、透は歩くのをやめなかった。
何の仕事に就くかは、まだ分からない。
ただ、家族が困らない未来がほしかった。
校舎が見えてくる。
新しい生活が、始まろうとしている。
このときの透は、まだ知らない。
数日後、
この家の空気が決定的に変わることも。
父の背中を、
もう二度と見ることができなくなることも。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
この作品では、
「正しさ」と「正しさ」がぶつかる瞬間を大切に描いています。
誰かが間違っているわけではなく、
それぞれが必死に選んだ結果――
その先に何が残るのかを、少しずつ描いていけたらと思っています。
感想や評価は、作品づくりの大きな励みになります。
一言でも大丈夫なので、感じたことを残してもらえたら嬉しいです。
次回も、よろしくお願いします。




