遠い月
遠い月を眺めて赤い大地の上に僕は座る。
冷たい銀の風が僕の耳を砕く。痛い。つらい。だから手で覆う。手で覆えば痛くない。いや、痛いけれど痛くないように感じる。
けれど腕が疲れる。だから横になる。赤い大地に横たわる。冷たいひんやりとした大地は僕の残り少ない熱を奪っていく。奪われた熱は赤い大地に吸われて赤い大地の中で広がっていく。そしてすぐになくなる。なくなったように感じる。
横たわった僕の目には視界を包む白い夜空が器状に広がっている。逆さの器ではない、まるで視界の真ん中に行くほど距離が近くなっている。
青い魚の骨が入った茶わんをそのまま空に乗っけている感じ。でも白い。その白さは赤い大地対照的。無機的で普遍的。赤い大地も普遍的だけど。僕は普遍的じゃない。けれど遠くから僕を見れば赤い大地と同一視できるかもしれない。だって赤い皮膚だから。でもそれが嫌で白い服を着てる。さっきの冷たくて痛くて辛い銀の風がまた僕を襲う。せっかく使い込んでいた大好きな白い服がビリビリに敗れていく。隣であおむけに赤い大地と接続していた骸に破れた僕の白い服が飛ばされる。
する骸は生き返る。と思いきやそのまま急速に風化してついには完全に赤い大地に沈む。かわいそうだ。敗れて不完全な白い服は彼を殺した。彼がかわいそうだ。あれ、なんで彼なんだ。なんで彼だって思った。彼ってどうして。ああごめんなさい。誰かわからないけれど人を赤い大地に沈めてしまったよ。僕の心は心配とつらさで虫返り体は死んでいないのに心は蝕まれてゆく。
ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい。そんな僕の上を銀の風が通る。スーッと銀の風が通り過ぎた後、また一つ赤い骸が大地と接続していた。




