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第9話 諦めきれない

「・・・はい」


お昼休み。

私は学食から戻ると、溝口君に缶コーヒーを差し出した。


「何、これ?」

「・・・お詫び」

「お詫び?」

「私、昨日、遊園地で月島さんを独占しちゃったから」


すると溝口君は笑いながら缶コーヒーを受け取った。


「ちょうどコーヒーが飲みたかったから、これはもらうよ。でも結果的には、ああしてくれてよかった」

「よかった?」


なら返してね、と言う前に、溝口君はわざと急いでプルトップを引いて、

コーヒーを飲み干した。


・・・早い。5秒もかかってない。


「昨日の帰り、俺、月島に告白したんだ」

「ええ!」


確かに、月島さんは溝口君が送っていってたけど!


「ええ!って、昨日の集まりはそれが目的だし。飯島だって頑張れって言っただろ?」

「言ったけど・・・」


うわあ・・・溝口君、本当に頑張ったんだ・・・


「そ、それで、どうだったの?」


ちょっと寂しげに微笑む溝口君を見れば結果なんて分かってるのに。

私ってなんてデリカシーがないんだろう。


「振られたよ」

「・・・そう・・・残念だったね」

「うん。でも最初から分かってたし」

「あ。男の人に興味なさそうって言ってもんね、溝口君」

「うん。自分が誰かを好きになったり付き合ったりしてるのなんて想像できないらしい」


溝口君は笑った。

私もつられて笑う。


なんか月島さんらしい答えだ。

あんなに綺麗な子なのに、きっと自分が綺麗だとは思ってないんだろう。

ちょっとその気になれば、凄くモテるだろうに。


「・・・諦めるの?」

「うーん。諦めたいけど、まだちょっと無理かな」

「そうだよね」


そんな簡単に諦められるんだったら、初めから好きになってないよね。


私もそうだ。

三浦君が西田さんのことをどんなに好きか知ってるのに、諦められないでいる。


「三浦もダメだったんだよな。遠藤も」

「遠藤君も?」

「いや、遠藤は告白すらしてないって。あいつ、そういうこと平気そうなのに、全然ダメらしい」


い、意外だ。

遠藤君なら冗談交じりにさらっと「好き」とか言いそうなのに。

相手が藍原さんだから緊張しちゃうのかな。

つまり、遠藤君も本気ってことなんだ。


「うまく言ったのは田中だけかあ」

「そうね・・・え?田中君?」

「聞いてない?平山と付き合うことになったらしいぞ」


聞いてない!




私は大急ぎで、席で友達とおしゃべりしている望ちゃんのところへ行った。


「の、望ちゃん!」

「雛子。なあに?」

「あ、あの、田中君と・・・」

「ああ。うん、付き合うことにした」


ニコッと笑う望ちゃん。

周りの友達も既に知っているらしく、「いいよねー」と口々に言った。


「でも・・・望ちゃんて三浦君のこと・・・」

「だって、三浦君て西田さんのこと好きなんでしょ?

他の女の子を好きな人なんて、いつまでも想ってても仕方ないし。彼氏ほしいしー」

「・・・」

「雛子も、いい加減三浦君のことは諦めた方がいいわよ?どうせいずれ西田さんと付き合うんだろうから」


そう、だけど。


私がそれ以上何も言えずにいると、望ちゃんたちは「メイク、直しに行ってくるねー」と、

トイレへたってしまった。



望ちゃんの言ってることはもっともだ。

私も溝口君も、いつまでも望みのない片思いをするより、他の人を見たほうがいいのかもしれない。


でも・・・



「ふふ。諦めきれない、って顔、してるね」

「高山さん・・・」


自分の席で、私達の会話を聞いていたらしい高山さんが話しかけてきた。


「そうようね。片思いでも、諦められないものは諦められないよね」


そうだ。

私もさっきそう思ったんだった。


「まあ、それは三浦も同じみたいだけど。西田さんて彼氏いるんでしょ?」

「うん」

「あの三浦が片思いねー。なんか笑っちゃう」

「え?」

「あいつ、昔から凄いモテたから。片思いなんかしたことないんじゃない?」


そっか。そうだよね。


いつものようにケラケラと明るく笑う高山さん。

でも、どこか何かが違う気がした。


「・・・もしかして、高山さんも好きな人がいるの?」

「えっ?」

「片思い?」


高山さんは急に真っ赤になり、視線を落とした。

いつもは男前な感じなのに、今はなんかしおらしい。


うわぁ。。。


「・・・お互い辛いね」

「そうだね」







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