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第22話 西田さん

はあ。


あれからまだ3時間しかたってないのに、何度目のため息だろう。


三浦君は、いつもの「三浦君」だ。

溝口君とも遠藤君とも、それ以外の友達とも普通に楽しそうにおしゃべりしている。


ため息をついているのは私だけ。


やっぱり三浦君にとって私はお荷物だったんだ。

きっと今はすっきりした気持ちなんだろう。


「雛子、どうしたの?」

「・・・奈々・・・実は・・・三浦君と別れたの」

「おめでとう」

「・・・今、本気で言ったでしょ?」

「当たり前よ。こんなオメデタイことはないわ」

「・・・」


私はもう一度ため息をついた。

さっきまでのため息とはちょっと訳が違うけど。


「振られた、じゃなくて、別れたってことは、雛子から言ったの?」

「うん。やっぱりこんな変な関係はやめた方がいいと思って」

「そのくせ、未練ありまくりな顔してる」

「・・・そんなことないよ。だって、最近ちょっと、三浦君に対する気持ちも変わってきたし」

「変わってきた?」

「うん。・・・前ほど好きじゃないかも」


奈々は目を丸くした。


「おめでとう」

「・・・」

「でも、残念ながら、まだ雛子は三浦のことを好きだと思うけど」

「え?」

「だって、雛子が三浦を見る時の目。前より『惚れてます!』って感じだよ?

あんな見せ掛けのカップルなのに、凄く幸せそうだし」

「そんなこと、ないよ・・・。前みたいにドキドキしないもん」


奈々が笑って言葉を続けたけど、私の耳には届かなかった。

私の目がある人に釘付けになったからだ。


「それは、お互い素を見せ合って遠慮しなくていい仲になっただけじゃ・・・」

「奈々、ごめん。ちょっと、私・・・」


そう言いながら私は腰を上げ、教室の扉に急いで向かった。






「私が、和歌と溝口君に仲良くなってもらいたくて、一緒に映画見ようって誘ったの。

嫌な思いしたよね?ごめんなさい」


西田さんが泣きそうになりながら、私に頭を下げた。

どうやら、自分と三浦君が噂になっているのを知り、私に申し訳なく思ったようだ。


「そうだったんだ・・・」

「三浦君とは、その・・・本当に何もないから」

「うん。分かってる」


西田さんの説明によると、実際に映画館にいたのは西田さんと三浦君だけではなく、

月島さんと溝口君も一緒だった、とのこと。

しかもそれは西田さんの計画だったらしい。


この西田さんの様子を見れば、西田さんと三浦君の間に何もなかったのは本当だと思う。


でも、あの三浦君が単に「溝口と月島が付き合うことになればいいな」なんて考えで、

わざわざ女の子と映画館に行くなんて考えられない。

遠藤君に対する態度を見ていればわかる。

それでも映画館に行ったのは、その「女の子」が西田さんだからだろう。


やっぱり三浦君はまだ西田さんを好きなんだ。


だけど、西田さんには・・・


「西田さんて彼氏いるんだよね?」

「うん」

「・・・でも、もうすぐ別れるって三浦君から聞いたんだけど・・・」

「うん」

「・・・そんなので付き合ってて、辛くないの?三浦君のこと振っちゃってよかったの?」


嫉妬とか嫌味とかそんな気持ちはない。

純粋に、不思議だったから聞いてみた。


西田さんはニッコリと微笑んだ。


「辛くないと言えば嘘になるけど、彼以外の人は今は考えらないの」

「そう・・・」

「飯島さんも同じでしょ?三浦君以外考えられないでしょ?

だから三浦君が私のこと気にしてた時も、諦められなかったんでしょ?」


三浦君以外?

私は思わずポカンとした。


三浦君以外の男の子を好きになる。

そんなこと考えてもみなかった。

前、溝口君に「一緒に新たな恋を探そうよ」とは言ったけど、

具体的に三浦君以外の誰かを好きになるなんて考えてたわけじゃない。


今、三浦君に対する自分の気持ちはよく分からなくなってきてるけど・・・


私、これから三浦君以外の誰かを好きになることってあるのかな。




でも、少なくとも一つ確実なことがある。

今は西田さんと彼氏の間には、三浦君が割り込む余地はほんの1ミリもないということ。


それは、この西田さんの強く輝く笑顔が証明している。








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