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8話 ユリウスの子供付き合い

皇族っていうのは意外と忙しい。

前世じゃ王やそれに連なる奴らはふんぞり返って命令してるだけの暇人かと思ってたが、実際にその立場になってみるとそうでもないっでのが分かる。

なんなら、ちょっと裕福な一般市民の方が暇な時間は多いんじゃねぇか?

ひ弱で寝たきりの母のカンナと兄の第2皇子は療養で例外だが、皇帝のシルヴァと皇后のミカエラは朝から晩まで公務に勤しみ、その子達である俺や他の皇子や皇女はお勉強尽くしだ。

ヴィンセントに至っては多少とは言え公務まで付いてくる素敵仕様だ。

礼儀作法から始まって語学や算術などの教養に魔術、最近じゃ武術も加わった。

そんな感じであっという間に終わってしまった3歳な俺の人生だが、そこは腐ってもならぬ高貴な元3歳児から現4歳児。

しっかりと遊ぶ時間という休憩時間のようなものが設定されている。

ちなみに、これ以外にも昼寝の時間があるから、夜中に遊び歩いている俺からすればこれが本命の休憩時間だ。

その休憩時間は文字通り休憩な時もたまにあるが、大抵は歳の近い奴らと集まって遊ぶことがほとんどだ。

この時の遊び相手だが、基本は歳の近いクロードとミルヴァ、それから俺達双子の乳母の子供の計4人。

たまに知らないガキとも遊ぶ羽目になることもあるが、まぁ大体はこの4人内の誰かと遊ぶのが俺の休憩時間(仕事)の過ごし方になる。

さて、そんな俺の愉快な仲間たちを紹介してやろう。


「ユリウス!おれと勝負しろ!」


このやかましいのはフローラの実子のアレクセイ少年5歳児わんぱく型。

見ての通り、クロードとは別の方向に元気が有り余る動きた盛りのガキらしいクソガキだ。

フローラの金髪を茶色寄りにした感じで、これまた将来が有望そうなおガキ様な見た目だが、残念ながら中身は似なかったらしい。


「おい、聞けよ!」


「えー、今本読んでる」


「いーいーじゃん、勝負勝負!」


皇子に対してなんて態度を取るんだって言われるぞ。

最近フローラに注意されたばかりなのだが、そんなことは記憶の果てに捨てきたらしいアレクセイことアレク。

おい、肩をガクガク揺らすな。

読みにくいだろうが。

別にこのままでも問題なく読めるんだが、しかし放置をし続ければ拗ね始めそうな感じだ。

仕方ないので本を読むのは一旦やめて勝負に乗ってやるとしよう。


「はい」


「おお!おぉ?」


本を閉じたことで勝負をしてくれると理解したらしいアレクは、斜めっていた機嫌を元の位置に戻す。

しかし、俺が腕を前に差し出したのを見て理解出来ずに首を傾げた。


「やるんだろ。じゃんけん」


「ちがう!」


じゃんけんが嫌だとは面倒な奴だな。

ならどうするかと少し考えれば、丁度最近よくやる勝負事があるじゃないか。


「じゃんけんじゃないのか。じゃあ。シューベルト、ボードと駒貸してくれ」


ボードゲームやるために声をかけたのは、ミルテンシアの子供であるシューベルト少年五歳児おとなし型だ。

綺麗系な母親とは違って見た目も中身もしずかそうな子供で、鶯色の髪以外は父親によく似ている。

俺と同じように本を読んでいたんだが、俺とは違って面倒そうにすることなく「いいですよ」と直ぐに返事を返してくれる。

部屋の脇に置いてある道具を取って来てくれると、わざわざ手渡しまでしてくれた。


「次、僕もやっていいですか?」


「いいぞ。じゃあ、やるか」


「やらない!」


どうやらこれも気に入らないらしく、アレクは顔を赤らめて地団駄を踏む。

うーむ、困った。

ガキになったはいいが心までガキになった訳じゃ無いから、こういう時にどうすればいいのかがイマイチ分からん。


「剣だ、剣で勝負するんだ!」


あー、そっちね。

5歳になってようやく念願の剣術を教わり始めたから、前にも増してアレクの血の気が多くなって来てる気がするな。

元々勝負事の類が大好きだったが、剣術は好き過ぎるせいか最近はこればっかりだ。


「勝負だ!」


「えー」


「勝負だっ!」


地団駄を踏んでついに涙まで堪え始めたアレク。

これは面倒なことになった。

別に剣で勝負すること自体は良い。

てか、少し前まではこんな渋ることなんてしないで、寧ろ大人が胸を貸してやるかくらいの気持ちで引き受けてたくらいだ。

それなのに何故今は受けてやらないのか。

理由を答えるなら、負かすと泣かれる上に体力が無くなるまで永遠に勝負を仕掛けられるのが嫌だから。

実力差がありえないくらいに離れてるから、基本俺が適当に捌くだけの内容になる訳だが、こっちとしては全く楽しく無いどころか負け続けるアレクが泣き始めるせいでバツが悪い。

弱い者いじめは嫌いじゃないんだが、子供となると流石に何かクルものがある。

それに折角の自由時間を消費してるって言うのも気乗りしない原因なんだが。

けどなぁ、これ受けないとアレクセイが騒ぎ出すんだよなぁ。


「5本だけな」


「よっしゃ!!早く外に行こうぜ!」


「行くから腕掴むなよ」


「シューベルト、僕たちも行こう!」


「うん」


いつも通り強引に腕を引かれて連れさられる俺。

それを見ていたクロードとシューベルトも、いつもの如く物見遊山で跡についてくる。

俺達が利用してる遊び部屋、と言うか遊び小屋なんだが、庭園の一部に建てられるお陰で外に出れば直ぐに剣を振うことができるくらいのスペースがある。

大人の訓練スペースって考えたら少し手狭だが、子供がやる分には充分なもんだ。


「ほら、お前…じゃなかった。ユリウスの剣」


早く勝負をしたいアレクから木剣を無理やり渡される。

準備してるのはアレクの子守り役なんだろうが、いつも手際が良いもんだ。

そんなとこに気を使うなら俺に気を使って準備しないで欲しい。


「アレク、今日こそ一本取ってよ」


「アレク、頑張ってください」


外野はお気楽なもんで、いつの間にか用意されたシートの上に座って観戦するきマンマンだ。

クロード、そこ俺と変わってくれ。


「クロード、お前は俺を応援するとこだろ」


「いつもユリユリが勝つじゃん。たまにはユリユリが負けるところも見たいからアレクには勝って欲しい!」


笑顔でなんてコト言うんだよ。

兄を応援しない弟とは可愛げのない奴め。

てか、お前体動かす以外なら割と俺に勝ってるだろうが。

アレクほどじゃないが、クロードもクロードで負けず嫌いな奴だ。

既に計算高さが見え隠れしつつある弟に呆れていると、もう待ちきれない様子のアレクは「いくぞ!」と大声を上げながら切り掛かってくる。

卑怯なんて言うつもりは無いからなりふり構わず無言で攻撃を仕掛けてきてもいいんだが、それを子供に求めるのは酷か。

貴族の決闘は子供であっても立会人と口上を互いに述べてからでなければ、卑怯だとかルール違反だとか誹られるらしい。

だから、この場合アレクセイは礼儀的にはよろしくないんだが、俺はそんなこだわりは微塵も無いので先手は好きな時にやっていいと前もって伝えてある。

教師の奴らが見れば注意もんだろうが、これはあくまで子供の遊びなんだから細かいことを気にするのは野暮ってもんだ。

と言う訳で、俺はアレクの剣を受け止める…フリをして空いてる脇側に移動して足を引っ掛けてやる。

前回も同じように転がしてやったが、今回はどうするか。


「うぉ!?」


「あ、転ぶ…!」


「ううん…」


攻撃を避けられた上で足を引っ掛けられたアレクセイはまたも同じように体を崩す。

それを外野で見てるシューベルトは焼き増しの光景に身を硬くするが、冷静に見ていたクロードはその呟きを否定する。


「おりゃ!」


気合いを入れたアレクだが、声とは裏腹に体の力を抜きながら身を丸めて受け身を取ってみせる。

それだけに止まらず、くるりと一回転し終えたところで遠心力を利用して切り返しまでしてくる始末だ。


「おー」


前回とは違う成長を見せられて感心しながらも、俺は一歩下がって回避してやる。

どうやら必死で考えて来たカウンターだったようで、アレクセイは悔しそうに顔をむくれさるが、解答としてはそう悪いもんじゃない。

受け身の取り方はあまり大きく距離が離れないようにコンパクトにしたものであり、切り返しの方も中々さまになっていた。

悪いのはリーチの無い剣と腕の方だな。

成長していない未成熟な体じゃ、どうしたって攻撃の範囲はせまくなる。

デカくなる将来に期待ってトコだな。


「りゃ!」


必殺の一撃を避けられて不満だろうに、アレクはめげずに次の攻撃を仕掛ける。

それを俺は避ける、避ける、避ける。

どんどんアレクの顔が険しい物へ変化して行くが、内容はやはり先程と同じで悪く無い。

前に戦ったのは一週間ちょい経っていないくらいだと思うが、一つ一つの行動が確実に洗練されて来ている。

初めての時なんて全部が大振りの一撃だったことを考えれば、今は力任せにしないで次の行動に繋げられる動きをしているのだから大したもんだ。

子供の成長は早いもんだなぁ、と前世の妹弟弟子達や拾ったガキ達を思い出す。


「まじめにやれ!」


感傷に浸っているとアレクから乱雑な一撃が顔に見舞われる。

しゃがんで避けてからその顔を見れば、キッとこちらを睨みつけていた。

手抜きはいつものことなので文句は言われないが、集中してないことに気づくとは変なとこで目敏い奴だな。

普段空気なんて読まないで両親や従者から注意されまくってる男とは思えないぜ。

まぁ、手を抜くどころか別のことを考えていた俺に非があるのは間違いがないので、そろそろマジメにやるとしますか。


「悪い。じゃあ、取り敢えず一本」


「あだっ!?」


謝罪ついでに大振りの切り払いで空いた脇腹に一撃入れてやる。

それのどこが謝罪だって?

そりゃしっかり社会の厳しさをアドバイスしてやってるんだ。

少し感情を乱されたからって不用意に隙を晒してはいけませんって言う注意をな。

残りの四戦も大体同じようにあからさまな隙に一本入れるだけで今回の戦いは幕を閉じた。

因みに、この後にシューベルトと約束したボードゲームをやったんだが、3本中1本しか勝てずに負けた。

大人が子供に負けるだとッ!?

ぐふ…

最後まで読んでいただきありがとうございます。

面白いとおもったらブクマと評価のほどをよろしくお願いします。

モチベーションの維持になりますので何卒。

一作品目の『社会不適合者の英雄譚』の方もよろしければ読んで頂ければ幸いです。

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