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25話 行方不明

ふわぁ、よく寝れ…ては無いが、仮眠としてはボチボチだな。

新年会を抜け出して庭のベンチに腰掛けたまでは良かったんだが、気疲れしてたせいでつい寝ちまった。

パーティーがまだ続いてるトコを見るに、あんま時間は経って居ないっぽい。

てか、そもそも庭じゃねぇな?

脱いだ服もまた着てるし、解いた髪も簡易的にだが結われてやがる。

てことはまたユリウスと入れ替わってたのか。

まぁ、ベンチに座ってる時に「ユリウス変わってくんねぇかなぁ」って思ってたが、まさか本当に変わってくれるとは。

どうせなら終わりまで出てくれねぇかと文句を言いたいが、滅多な事が無ければ出てきてくれないからなぁ。

間違いなく自分の意思で出て来ることはできるハズなんだが、何かしら俺の知らない条件でもあるのかね。


「こういう時にお互い意思疎通ができないのは不便だよなぁ。どうにかならないモンか」


何にせよ、俺のせいで表に出られていないのなら申し訳ない限りだな。

代わりと言っていいか分からないけど、身体は割と頑丈めに鍛えてあげてるから許してくれ。

勉学?諦めてくれ。

人には向き不向きがあるんだ。

出来るだけ頑張ってはいるが、これがユリウス本人にフィードバックされているかは謎だけどな。

室内に戻ってみれば相も変わらずどいつもこいつも優雅に談笑してる。

飽きないもんかと思いながらも、俺はアシュペリアが居るであろう席へと向かう。


「あれ、アイツ何処に行った?」


しかし、実際に席に戻ってみても彼女の姿は無い。

一先ず、適度に冷えた体を温めるため、給仕にお茶を一杯ねだる。

大人はもっぱらアルコールでも子供の体にそれを突っ込むのは、常識の無い俺でも良く無いと分かる。

酒は毒の一種だとも言うし、借り物の体で要らない冒険をするつもりは無い。

そもそも、昔からアルコールの類は好きでも嫌いでも無かったからどうでも良い話ではあるんだが。

手際よく出された茶を飲んでいると、給仕では無い大人が少し慌ただしく近づいて来た。

ここは子供のためのスペースであっても大人が立ち入り禁止と言うほど区切られている訳じゃない。

それでも迎え以外で大人が入り込むのは珍しい。

気配で見当をつけつつもあくまで気が付かないフリをしておく。


「ユリウス殿下、お寛ぎの所失礼致します」


「グラントン公か。慌てているように見えるがどうした?」


ランデウスの方からすぐに声をかけられた。


「アシュペリアを迎えに来たのですが、今はどちらに行ったか存じ上げませんか?」


「すまない。アシュペリアとは途中で別行動をすることになってしまった。何かあったのか?」


「いえ、少し見当たらないことが心配になりまして。顔を見せておきたい人物が居ましたもので」


ん?これは何か事件か?

他の貴族達と歓談に耽っていてもそこは大貴族様。

離れて居てもある程度アシュペリアの状況は把握できていて当たり前だ。

何せ貴族には大体1人につき従者が1人付いている事が殆どで、ランデウスは勿論のことアシュペリアにも控えに1人メイドがくっ付いていた。

因みに、一見1人で居るように見える俺にもモルゲンがついて居たりする。

従者は不用意に気配を出さないのが好ましいとは言え、本当に認識できなくなるレベルで潜むヤツはコイツくらいなんじゃ無いかと最初は思ったね。

しかし、周りを見てみれば意外とポピュラーなことに驚きだ。

人数の関係で1人につき従者1人の規則はあくまで表向きの話。

察知してる俺からすれば秘密裏と言っていいのかは分からないが、それなりの数潜んでいる護衛が居るわ居るわ。

少なくとも俺にはモルゲンを除いて三人は付いてる…のだが、庭に出た時に撒いてきた。

見られながらだと仮眠取れないし…

全力じゃなかったとは言え、振り切れなかったモルゲンは流石に手慣れてる。

話が少し逸れたが、俺同様に大貴族様の令嬢であるアシュペリアにも表向き以外に2人潜んでいる護衛が居た筈だ。

それなのにランデウスが直接こっちに探しに来たと言うことは、アシュペリアの方に不測の事態が起こってるって訳で…

あれ?これもしかしなくても俺が割と悪いのでは?


「慌ただしくて申し訳ないのですが、約束があるので失礼させていただきます。もし、娘を見かけたら給仕にお伝えいただければ助かります」


「ああ、気に留めておこう」


「それではまた」


表情や仕草はあくまでもいつも通りに振る舞っているランデウス。

しかし、聞きたいことを聞き終えたら足早にその場から立ち去ってるトコを見るに、それなりに焦ってるんだろうな。


「うーん、こーれはマズイな」


エスコートするように頼まれてたのにアシュペリアほっぽって寝てた挙句に行方不明だぞ。

普通怒っても良いとトコをあのくらいで済ませるのはランデウスが大らかなのか、それともそんな気が起きるよりも動揺の方が強いのか。

多分後者だろうが、殆ど悟らせない冷静さを保ってる時点で相当人が出来てる。

仕方ない、責任もって俺も探すかね。


「モルゲン」


「いかが致しましたか?」


「アシュペリアがどこに居るか知らない?」


「私が知る限りでは庭園にて殿下とご歓談をされていたのが最後にございます。時間としましては30分ほど前かと」


庭園でアシュペリアと歓談…?

どうやったらユリウスはあの高飛車お嬢様と出会って数分で仲良くなってんだよ。

フレンドリーが過ぎるだろ。

ともかく、俺に一番くっ付いる手近な情報源に尋ねてみても収穫は、寝てる最中の出来事以外は無い。

ユリウスとアシュペリアの様子は気になるから後で聞こう。

それはそれとして、ランデウスの様子からして従者も護衛とも連絡が取れない、または逸れたか。

あの焦り様だから俺みたいに脱走が常習犯の線も薄い。

と言うか、そもそも礼儀作法に煩いアイツがそんなことをするのが想像つかない。

となると誘拐一択か。

ご大層なギフトも持っているらしいし、ほぼ確定だろ。

権威を示す必要がある皇族はともかくとして、権力や見栄を大切にする貴族でも『ギフト』を公表、または公言しないのはこういう事が起こるからだ。

皇族でもクロードが1番目立つ『獅子王の心臓』以外が伏せられたり、ヴィンセントやルミナリアみたいにランクを落として似たギフトに改竄していることもある。

因みに、俺の場合はしょうも無さすぎて嘘も付けないので改竄は難しい。

何故なら、ランクを落として発表は出来ても盛るのは絶対にボロが出るから。

皇族は強制発表させられるのどうにかなれば、要らない苦労を背負わなくて良かったんだけどなぁ…

俺の悲しい諸事情は終わりとして、強力な『ギフト』持ちはある程度の自衛が出来るようになる成人と同時に正式な公表をするのが一般的だったりする。

まぁ、単純に大した事の無い『ギフト』を隠したいだけって場合もあるだろうが、アシュペリアに限ればその線は薄い。


「結構経ってるなぁ」


「しかし、厳重な警備が敷かれているので、外に出るのは困難を極めるかと」


俺の何気ない呟きに、わざわざ言わずともモルゲンも断言こそしないが、アシュペリアが誘拐された前提で補足を入れて来る。

これは親切心からじゃなくて引き留めてるんだろうな。


「俺は少し体調が悪くなったから先に帰って寝る、って誰かに伝えといてくれ」


だからと言って考えを変える気は全くねぇけどな。

それはモルゲンも同じだった。


「なりません。本当に体調が優れないようでしたら今すぐ医官を手配いします。そうでは無いのでしたら陛下や皇后様のため、なによりも御身のためにもここは冷静なご判断を。主役の御1人が欠けてしまっては会の魅力が半減してしまいます」


「そんなことは無いだろ。他の貴族が俺を見る目なんて精々が小汚い小動物くらいか?会場の注目はクロードにしか向いてないよ」


「ご自身を卑下するのはお控えください。誰が聞き耳を立てているとも限りません」


「卑下じゃなく事実だし、仮に聞かれた所で問題ない」


「大問題にございます。殿下の影響力に…」


「くどい」


「…!?」


周囲には漏れないように殺気をモルゲンだけにぶつけてやる。

モルゲンであっても俺の全力の威嚇は効果があったみたいで、わずかに体をすくませる。

押し問答になる事は分かっていたし、事実そうなったのならこれ以上の会話は無意味だ。

普段ならこれだけ自重するべき理由を並べられれば引き下がるんだが、今回は殆ど俺の責任が大きいからな。

ランデウスからの頼まれごとを引き受けておきながら、つい楽しくて煽ってしまった上でのクールダウンのための放置からの誘拐。


「なに、皇族の責務の前に常識の責任を取るだけだ」


皇族としての誇りも大人の自覚も持ち合わせるほど出来た人間じゃないが、意味もなく自らガキを不幸にさせるのは性分じゃないんでね。


「と言う訳で後は頼んだ」


一言残した後に手に分かりやすいように手に魔素を集めて拍手を1つ。

音がなると同時に手以外の魔素と気配を断ち、音が鳴り止む瞬間に残っている手も同じように断ちつつ、全力の高速移動をすればあら不思議。

職業柄気配を消すのも探るのも得意なモルゲンであっても、目の前にいた筈の俺の姿を見失ってしまう。

秘技、『ねこだましの術』。

この手の小技に関しては前世の全盛期と言う条件付きにはなるが、探知が可能なワールド以上のギフト持ち以外に見破られた事が無い。

本家の『ねこだましの術』に工夫を加えた、俺の自慢出来る特技の1つだ。

去り際に見えたモルゲンの唖然とした表情を引き出せたのは僥倖だな。

人が入り乱れてるせいで一直線には行けなくても、小柄な子供の体を活かせば庭園に通じる出口まで行くのはそう難しく無い。

数秒にも満たない時間で気配を消しながら駆け抜ければ、あっという間に庭園に出る事ができる。

そのままアシュペリアの目撃証言があったベンチまで一気に走り抜けた。

幸い、ユリウスは俺が寝てた場所から別のベンチに移動しては無かったぽい。

人影こそ無いが、周りに誰か潜んでいるのは俺と同じ現場検証のためだな。

堂々と出張る事ができないのが少し手間だが、あんまチンタラしてると俺が先に捕まっちまうから手早く済ませるとしますか。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

面白いとおもったらブクマと評価のほどをよろしくお願いします。

モチベーションの維持になりますので何卒。

一作品目の『社会不適合者の英雄譚』の方もよろしければ読んで頂ければ幸いです。

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