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20話 神からの贈り物

もう直に迎えるユリウスになってから5度目の新年も後わずか。

前世じゃ新年は愚か誕生日すらも気にした事のない俺が、年を数えているって言うのは何とも感慨深いもんだな。

人々にとってそこそこ重要な節目になる時期だからか、ヴァレス帝国の上流階級は毎年デカいパーティーをしやがる。

それを帝国で1番偉いとされてる皇族が無関係で居られるはずなく、それはもう盛大な新年会を企画する。

なお、その主催者側であるヴァレスディア家の面々はその殆どが乗り気では無いのは、少し笑える話だ。

面倒臭がりの俺とルミナリアは言わずもがなだが、まさかのあのヴィンセントまでここ数日は憂鬱そうに過ごしてる。

ジルヴァなんかはその激務から家族に会えない日ができるせいで「新年会を法律で禁止にしようかな…」なんて、暗い顔で呟いてたくらいだ。

子供と言うことで去年までは顔を少し見せるだけで実質免除されてた俺ですら嫌なんだ。

こればかりは珍しくジルヴァを哀れに思った。

しかし、なんと今年からは他人事ではいられなくなった。

社交デビューをしなくちゃならない都合上、面倒なことに数時間は俺とクロードもパーティーにしっかり出席しなくちゃならないからだ。

ヴァレス帝国の王侯貴族は5歳になる年を境に社交デビュー、つまり多くの奴らに顔見せをして交流を始めなくちゃならないらしい。

なぜ5歳なのかは諸説あるらしいが一番の理由はギフトを授かる、と言うか判別の儀式を受けるのが5歳だからだ。

神々からの贈り物、『ギフト』。

神から人類に与えられる異能なんだが、それが大抵の奴らが5歳になるまでに発現する。

並外れた身体能力だったり、感覚であったり、果ては人間ではあり得ないような能力であったり。

千差万別だ。

そんな才能の権化ことギフトの種類が色々あることから分かると思うが、馬鹿げてるくらい幅の広い当たり外れがある。

前世だと取り敢えず戦闘に役立つギフトは当たり、他はハズレみたいな風潮があったっけな。

今は違うらしいが、それでも当たり外れの基準が違うだけで他に変わりな無いらしい。

因みに、大英雄クラン様(笑)は『神子』や『神の恩寵』と言った最高位のギフトを持ってたと言われてるらしい。

そんな大英雄様(笑)が大好きな帝国も例に漏れずギフトが大好きな訳だが、だからこそ自慢の可愛い子供のギフトが分かるようになる年始が社交デビューの場になるとモルゲンが言っていた。

そのせいで、去年までは比較的に暇だった俺とクロードも衣装やら挨拶の練習やらで忙しい日々を過ごしていた。

そんで、今日は1番肝心なギフトを判別するための儀式が予定されていた。


「はぁー、ユリユリ、ユリユリ!ぼく昨日わくわくし過ぎてねられなかったよ!」


「俺はぐっすり寝れたぞ」


今日も冴え渡る音の暴力。

いつも通りと言うか案の定と言うか、今回も例に漏れず俺とクロードはセットで行事に参加することになっている。

コイツ寝てれないって言った割には変わりなさすぎるだろ。


「どんなギフトを授けてもらえてるのかなぁ。楽しみだねユリユリ」


「あー、そうだな」


どんなギフトねぇ…

正直、俺がユリウスの体に入っているせいで何とも言えないが、感覚的には前世と同じギフトなんじゃ無いか?とは思ってる。

もしかしたらユリウスのギフトもついでに貰えてるかも知れないが、魔素の保有量以外にこれと言って変わった感じは無いので可能性は低いとだろう。

だからか、楽しみとか緊張とかは全くない。

決して中身がおっさんだから枯れてるとかでも無い。


「やぁ、2人とも!緊張は…どうやらしていないみたいだね」


「お父様!それにお母様とミカエラお母様まで!」


儀式の宮の控室にカンナとミカエラを伴ったジルヴァがやって来た。

ジルヴァとミカエラが同席する事は知っていたが、体が弱くて寝ている事が多いカンナまで姿を現したことにクロードは驚く。


「お母様、お身体は大丈夫なのですか?」


「えぇ。今日のためにたくさん眠ったから凄く元気よ。それに最近は調子の良い日が多いし、きっと神様がクロードとユリウスの大事な儀式に出なさいっておしゃっているのよ」


「なら神様にいっぱいお祈りしますね!」


クロードは早足で近づいてカンナに近づく。

病弱なカンナを驚かせないように嬉しさを隠すが、訳を聞いた後はハリボテの隠れ蓑を脱ぎ捨てて満面の笑顔を作る。

それを微笑ましげに見守るジルヴァとミカエラ。


「最初にカンナが行くと言い出した時には心配しましたけれど、やはり連れてきて正解ですね」


「うん。2人とも嬉しそうで本当によかったよ」


「ああ見えてクロードは普段から結構我慢してますからね。嬉しそうじゃなくて実際に嬉しいと思いますよ」


定期的に顔こそ合わせてはいるが、実の母と毎日会えないと言うのはいつも明るいクロードをしてもそれなりに寂しいらしい。

行事もカンナと一緒に出れた物など無いので、初めて母親同伴の行事なのだから嬉しくて仕方がないに決まってる。

そう思っての発言だったが、ミカエラが「またこの子は…」と言いたげな目を向けてくる。


「何故貴方がこちら側にいるのかしら」


「何故と言われましても」


「貴方はカンナが出席できたことが嬉しくないのかしら?」


「うれしいですよ?クロードがお母様に張り付いてくれるので楽です」


またの名を防護壁とも言う。

隣でずっと喋りかけらなくなったから非常に気楽なもんだ。


「全くこの子は」


「照れ隠しをするユリウスも可愛いなぁ」


ミカエラの呆れはまだ分かる。

ジルヴァ、お前は本当に医者に診てもらったほうがいいぞ。

頭を。


「ユリウスにもクロードにも寂しい思いをさせているからね。カンナも多少は無理をしているかも知れないけれど、そこは私達が出来る限りサポートしていこう」


「そうですね」


「いえ、俺は寂しいとか…」


「まぁ、何はともあれカンナも出席できて本当に良かった。あれを見たら杞憂なんて吹き飛んでしまったよ」


おい、話を遮るんじゃねぇ。

あと頭触るな。


「お母様の体調よりも、俺としてはお父様の仕事の方が心配ですけどね」


「大切な息子達の一大行事に比べたら大した事じゃないよ」


いつも思うんだが貴族風嫌味の言い回し全く効果ないんだが?

話途中に弾いた手をまた乗せようとして来たのでミカエラを盾にして逃れておくと、おふざけをし過ぎたようで彼女に肩を掴まれる。


「2人ともその辺にしておきなさい」


「はい」


「それもそうだね」


「ユリウス。ジルヴァの言うように私も含めて本日は親にとっても重要な日になるわ。お腹を痛めて産んだカンナは尚更ね」


「はあ」


「困ったら気のない返事をする癖はいい加減に直しなさい。それと、貴方もカンナと話して来なさい」


「承知しましたー」


前世じゃ親なんて居なければ親になった事も無いので、ミカエラの言うことはいまいちピンとこない。

そんな俺の内心を悟ったのか、生返事をする癖を咎め、これ以上巫山戯ると目が語っていた。

あ、これはマズイ。

まぁ、どこかのタイミングで話しかけには行くつもりだったし、クロードも少しは満足した頃合いだからさっさと行くか。


「お母様」


「あら、ユリウスは…いつも通りそうね」


楽しげに話してる声をかけてみれば、カンナはすぐに振り返って顔を見つめてくる。

残念ながらギフトの判別儀式は面倒とこそ思うが他に感想は無い。


「はい、お母様と同じで昨日はぐっすり眠れましたから」


「ふふ、それは良かったけれど、たまには緊張したりはしゃいでいるユリウスも見てみたかったわ」


「ぼくも見てみたいです」


「そうね」


カンナもクロードも俺の子供らしい所を見たかったんだろうが、おっさんにそれを求めるのは酷だぜ。

笑いに一段落をつけたカンナは俺達に合わせるように屈むと両腕を開く。

流石の俺でも何を意味しているかくらいは分かる。

クロードは直ぐに腕の中に入り、俺も少し複雑な思いがあったが今回はおとなしく収まることにした。


「私の時は結構緊張したのに、2人は落ち着いてて凄いわ。頑張って…は違うけれど、ユリウスとクロードらしいギフトが授けられていることを祈っているわ」


俺達2人を抱擁したカンナは願うように言う。

久々の抱擁にクロードは元気よく返事をし、ユリウスの喜びの感情とは別に俺は別のことを考えていた。

時間が来るまで親3人と談笑していた俺とクロード。

親は同伴は出来ても参加できる訳では無いので3人は壁際に備え付けられた椅子に座り、俺とクロードはだだっ広い儀式の間もとい神殿のど真ん中で待機することになった。

本来、ギフトを判別するのには国が管理する神殿や教会、昔だと啓示所なんて言われたりする場所があるんだが、そこで5歳の子供を対象に啓示を受け賜る。

とは言われているが、実際には殆どが特化した鑑定系のギフト持ちによって見られるのが実態だ。

これは昔の名残なのと耳障りが良いので啓示と言う言葉を使っているだけだな。

そんでこの鑑定なのだが、基本は神殿で多くの子どもが受ける。

しかし、そこは流石皇族ってことで城の中に神殿が存在しているお陰で俺たちの為だけに儀式を執り行われる。

これがロイヤルサービスと言うやつか。

当たり前ではあるのかもしれないが、元孤児の皆からすれば身の引ける思い…が無いわけでも無い。

行列待ちが無いのは楽で良い事だとおもいます。

儀式を執り行う神官の自己紹介を軽く流しながら特別待遇っぷりに呆れを滲ませていると、早速ギフトの判別に移ることになった。


「クロード、先に行っていいぞ」


「いいの?」


「楽しみだったんだろ。別に前だろうが後ろだろうが結果は変わらないからな」


本来なら兄である俺からの儀式になるんだろうが、隣でソワソワしているクロードに待たせ続けるのも酷だ。

それなら、あまり乗り気じゃない俺よりもクロードに先に行かせた方が良いに決まってる。


「ありがとう!」


クロードは俺に礼を言うと神官の前に出る。

ありがとうねぇ…

実を言うとミカエラに聞かれた最初の質問「カンナが来て嬉しく無いのか?」と言う質問だが、嘘は言っていないが本当の事も言っていない。

クロードの相手をする時間が減ったのは嬉しいが、それ以上にできれば来てほしく無かったと言う気持ちの方が強い。

ユリウスの事も考えればカンナが来たのは間違いなく嬉しいんだが、ここで問題になるのが俺の存在だ。

割と高い確率で俺のギフトで一悶着あるだろうからな。

パターンとしては4つ。

1つが普通に良い感じのギフトが貰えるパターン。

もう1つが前世の俺が持っていたギフトだけを貰ったパターン。

で、これが1番の問題なんだがユリウスが魂に関連するギフトを貰っちまったパターン。

最後がノーギフトのパターン。

ノーギフトはほぼあり得ないからあまり気にしないで良いが、あり得そうで最悪なパターンは魂関連のギフトと前世のギフトを持ってた場合だ。

魂関連の場合、ほぼほぼ俺とユリウスの2つの魂が一つの体に入っていることがバレる。

バレるのは別に構わないんだがカンナに関してだけは例外で、何があるか予想がつかないからもう少し体をどうにかしてもらわないと困る。

流産して今の状態になっちまった事を考えると良い結果にはならんわな。

前世のギフトのパターンは…まぁ、普通に驚かれるだろうな。

そんな訳で生まれて初めて…いや、前世含めても上から数えた方が良いレベルで俺の気分は憂鬱だ。

出来れば倒れないで欲しいと、そう願わずにはいられないな。

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